35 / 69
第3章 アールスト国の章
〈34〉全てお見通し(隣国の王子視点)
しおりを挟む
おかしい。おかしいぞ……!なにがどうなっているんだ?!
さっきの聖女の素っ気ない素振り。父の態度。どれも俺の予想と違っていた。
「しかし……」
実はさっきの聖女の素っ気なく冷たい態度が気になって仕方ない。あんなに慈愛に満ちた優雅な微笑みを浮かべているのに言葉の端々に感じる冷たい拒否の意思。それに、俺を見つめる時だけ突き刺さるような感情を感じた。
そう、あれは俺だけに向けられた特別な感情だとわかる。
それを思い出すだけで、なんだか……背筋がゾクゾクとしてなんとも不思議な快感が体の芯を突き抜けた。
こんな不思議な感情は生まれて初めてだ。
あの時のロティーナの顔と態度を脳裏に思い浮かべれば、なにやら体温が上がり息が荒くなった。
一瞬、昔の婚約者……レベッカの姿を思い出すが、あいつは俺のお気に入りを虐めた上に尻軽だったからな。まぁ今となってはアミィを虐めていたことなどどうでもいいが、俺という婚約者がいながら他の男にすり寄ったというのが俺の存在を軽く見られているようでそれだけが未だにどうしても許せなかった。今頃は俺に逆らった事を悔いながら惨めな生活をしているだろう。
俺は特別なのだ。生まれながらにしてアールスト国の第1王子という地位を手にした。なにもかもが俺の思う通りになり、どんな願いもすぐに叶えられる。それが俺なのだ。特に幼い頃から忙しい父や母に代わって俺を育ててくれた宰相が一際俺を可愛がってくれていた。宰相のアドバイスさえ聞いていれば俺は間違えることはない。
だから、いくら父上の命令とは言え婚約者を自分で選べなかったのは不満だった。宰相にも訴えたがさすがに婚約者問題だけは口を出せないと言われた。
国の為の政略結婚とはいえ、あんな女になど何の価値もない。だいたい婚約者だというのに唇すらも俺に許さなかったんだ。あの女はなんとも傲慢で生意気な女だったのだ!
アミィはちょっとワガママを聞いてやればなんでもやらせてくれたのだけは良かったが、書き置きだけで姿を消すような身勝手な女だと判明したしもうそんなに興味もない。
やはり、俺には聖女が相応しいな。
今までの女には無いあの素っ気ない反応。俺の芯を射抜くあの眼差し。
そして心の奥に見え隠れする俺にだけわかる俺への熱い想い。
なによりも、聖女だけが与えてくれるこの未知の快感!
あぁ、またあの冷たい眼差しで見つめられたい!
ロティーナはたぶんツンデレなのだろう。そしてかなりの恥ずかしがり屋だ。だがどんなに隠そうとも俺にかかれば女心など手に取るようにわかってしまう。ならば、そんなロティーナの心を解放して素直にさせてやるのも男の手腕というものだろう。
よし、これでロティーナの事は解決だな。俺たちは相思相愛で決まりだ。
だが問題は父上だ。何を考えているのかさっぱりわからなくなってしまった。てっきりロティーナを俺の婚約者にしようとしているのだと思っていたのに、さっきの父上の態度にはまったくそんな気配を感じ取れなかった。しかも、母上が臥せっているなんて初耳だったし……。
「ま、まさか……!」
なんてことだ。俺は大変な事に気付いてしまった。
きっと父上はロティーナを狙っているんだ!愛人……いや、側室か?もしこのまま母上が不幸に見舞われたとなれば聖女と再婚しようなどと企んでいるということでは?!
まさか父上が若い女にうつつを抜かすなど、母上に対するなんたる裏切りか!しかし父上は国益を1番に考える金の亡者な節がある。俺が第1王子なのに立太子されないのも父上が「まだそのときではない」と渋っているからだが、俺はその理由を王太子には金がかかるからだろうと推測しているくらいだ。
だって、他に俺が立太子されない理由が思い付かない。
つまり、あの父上は国益の為に自分の娘程の年齢の女に手を出そうとしているとんだエロジジイということだ!
待っていろ、ロティーナ。俺がお前を守ってやろう。
今夜のパーティーでお前は俺の物だと父上に見せしめ、既成事実をもって正式な婚約者にしてやるからな!
そして父上が失態を犯したのだとわかれば、俺が次の国王に決まりだ。
聖女を妻に娶り、俺がこの国と異国を手にするのだ!ふははははは!!
さっきの聖女の素っ気ない素振り。父の態度。どれも俺の予想と違っていた。
「しかし……」
実はさっきの聖女の素っ気なく冷たい態度が気になって仕方ない。あんなに慈愛に満ちた優雅な微笑みを浮かべているのに言葉の端々に感じる冷たい拒否の意思。それに、俺を見つめる時だけ突き刺さるような感情を感じた。
そう、あれは俺だけに向けられた特別な感情だとわかる。
それを思い出すだけで、なんだか……背筋がゾクゾクとしてなんとも不思議な快感が体の芯を突き抜けた。
こんな不思議な感情は生まれて初めてだ。
あの時のロティーナの顔と態度を脳裏に思い浮かべれば、なにやら体温が上がり息が荒くなった。
一瞬、昔の婚約者……レベッカの姿を思い出すが、あいつは俺のお気に入りを虐めた上に尻軽だったからな。まぁ今となってはアミィを虐めていたことなどどうでもいいが、俺という婚約者がいながら他の男にすり寄ったというのが俺の存在を軽く見られているようでそれだけが未だにどうしても許せなかった。今頃は俺に逆らった事を悔いながら惨めな生活をしているだろう。
俺は特別なのだ。生まれながらにしてアールスト国の第1王子という地位を手にした。なにもかもが俺の思う通りになり、どんな願いもすぐに叶えられる。それが俺なのだ。特に幼い頃から忙しい父や母に代わって俺を育ててくれた宰相が一際俺を可愛がってくれていた。宰相のアドバイスさえ聞いていれば俺は間違えることはない。
だから、いくら父上の命令とは言え婚約者を自分で選べなかったのは不満だった。宰相にも訴えたがさすがに婚約者問題だけは口を出せないと言われた。
国の為の政略結婚とはいえ、あんな女になど何の価値もない。だいたい婚約者だというのに唇すらも俺に許さなかったんだ。あの女はなんとも傲慢で生意気な女だったのだ!
アミィはちょっとワガママを聞いてやればなんでもやらせてくれたのだけは良かったが、書き置きだけで姿を消すような身勝手な女だと判明したしもうそんなに興味もない。
やはり、俺には聖女が相応しいな。
今までの女には無いあの素っ気ない反応。俺の芯を射抜くあの眼差し。
そして心の奥に見え隠れする俺にだけわかる俺への熱い想い。
なによりも、聖女だけが与えてくれるこの未知の快感!
あぁ、またあの冷たい眼差しで見つめられたい!
ロティーナはたぶんツンデレなのだろう。そしてかなりの恥ずかしがり屋だ。だがどんなに隠そうとも俺にかかれば女心など手に取るようにわかってしまう。ならば、そんなロティーナの心を解放して素直にさせてやるのも男の手腕というものだろう。
よし、これでロティーナの事は解決だな。俺たちは相思相愛で決まりだ。
だが問題は父上だ。何を考えているのかさっぱりわからなくなってしまった。てっきりロティーナを俺の婚約者にしようとしているのだと思っていたのに、さっきの父上の態度にはまったくそんな気配を感じ取れなかった。しかも、母上が臥せっているなんて初耳だったし……。
「ま、まさか……!」
なんてことだ。俺は大変な事に気付いてしまった。
きっと父上はロティーナを狙っているんだ!愛人……いや、側室か?もしこのまま母上が不幸に見舞われたとなれば聖女と再婚しようなどと企んでいるということでは?!
まさか父上が若い女にうつつを抜かすなど、母上に対するなんたる裏切りか!しかし父上は国益を1番に考える金の亡者な節がある。俺が第1王子なのに立太子されないのも父上が「まだそのときではない」と渋っているからだが、俺はその理由を王太子には金がかかるからだろうと推測しているくらいだ。
だって、他に俺が立太子されない理由が思い付かない。
つまり、あの父上は国益の為に自分の娘程の年齢の女に手を出そうとしているとんだエロジジイということだ!
待っていろ、ロティーナ。俺がお前を守ってやろう。
今夜のパーティーでお前は俺の物だと父上に見せしめ、既成事実をもって正式な婚約者にしてやるからな!
そして父上が失態を犯したのだとわかれば、俺が次の国王に決まりだ。
聖女を妻に娶り、俺がこの国と異国を手にするのだ!ふははははは!!
6
お気に入りに追加
765
あなたにおすすめの小説
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」
まほりろ
恋愛
学園の食堂で第一王子に冤罪をかけられ、婚約破棄と国外追放を命じられた。
食堂にはクラスメイトも生徒会の仲間も先生もいた。
だが面倒なことに関わりたくないのか、皆見てみぬふりをしている。
誰か……誰か一人でもいい、私の味方になってくれたら……。
そんなとき颯爽?と私の前に現れたのは、ボサボサ頭に瓶底眼鏡のひょろひょろの男爵だった。
彼が私を守ってくれるの?
※ヒーローは最初弱くてかっこ悪いですが、回を重ねるごとに強くかっこよくなっていきます。
※ざまぁ有り、死ネタ有り
※他サイトにも投稿予定。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。
との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」
今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。
ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。
「リリアーナ、だからごめんってば」
「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます
tartan321
恋愛
最後の結末は??????
本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる