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第2章 悪女アミィの章

〈27〉勝利の確信(アミィ視点)

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「これで大丈夫だ。後は任せて。今夜迎えに来るからオレを信じて待っていてくれ」

「ちゃんとその女を始末した証拠を持ってきてよ」

「わかってるよ。今から始末してくるから」

    ジルは優しい手つきであたしの頬を撫でてきた。大丈夫、この男はあたしに夢中だわ。この男だけがあたしを愛してくれる。

    これであたしは聖女になれるんだと思ったら笑みがこぼれた。だって聖女になれば今度こそ全てが思いのままだわ。

    聖女として王族より強い権力を持つ。後から公爵家があたしに金をせびりにこないように完全に縁も切った。だいたい公爵家のジジイとババアも気に入らなかったのよね。だってあたしは元公爵令嬢が虐めた可哀想な令嬢で、それを償いたいって言うから公爵令嬢になってやった・・・・・・のよ?それなのにあたしに平伏もせずなんだか卑屈な目で見てくるし、あたしが養女になった途端に体調を崩したなんて当てつけのように寝込むし、鬱陶しいったらありゃしないわ。散々あたしに嫌がらせしといて、あたしが聖女として活躍した後に「あの時、養女にしてやったんだから」なんて言いがかりつけられたら嫌だもの。あんなレベッカの親なんか、廃れて死んじゃえばいいんだわ。

    いまだに意識を失ったまま倒れている桃毛女をジルがそっと抱き上げた。ふん、優しくされて勘違いしたんだろうけどあたしに勝とうなんて身の程知らずなのよ。

「うふふ、いい気味だわ。底辺の女のくせに、あたしに聖女だってことを見せびらかしたりするからこんな目に合うのよ」

    みっともない桃毛をひと房掴んで引っ張ってやったがピクリとも動かない。どうせなら泣きわめいて絶望する顔が見たかったが、まぁいいか。

「それじゃあ、またあとで」

    不吉な灰眼であることを除けばジルはいい男だ。首に腕を巻き付け軽快なリップ音と共に頬に口付けしてやれば嬉しそうに微笑んできた。

「ええ、待ってるわ」

    とにかくこの男を捕まえておけばあたしの幸せは確定される。他の男が急に冷たい態度になったのはジルと結ばれるためなのかもしれないと思った。隣国の王子との婚約も聖女になって地位と権力を手に入れてからゆっくり考えればいいわ。

    なんといっても“異国の聖女”だもの。隣国だって今まで以上の宝石を持って「どうか女王になってください」と頭を下げてくるかもしれない。

    ゾクゾクとした快感が体中に走る。やったわ!あたし、最強ね……!

    ジルが名残惜しそうに目を細めて屋敷を出た後、あたしは打ち合わせ通り公爵家に置き手紙を書いた。

『あたしは聖女様と出会い心を入れ換えました。
    これまでの自分の所業を省みて決めた事です。公爵家と完全に縁を切ってこの国から消えます。どうか探さないで下さい』

    うん、こんなものね。ジルに言われた通りに書いたけど本当に大丈夫かしら?だいたいあたしの所業ってなにかしたっけ?とも思うけど、あの賢い男がこう書けば大丈夫だと言うのだから信じよう。彼は絶対にあたしを裏切らないだろうから。
    それにしても『探さないで下さい』なんて書いても、みんな血眼になってあたしを探そうとするでしょうけどね。公爵家も男たちもあたしがいなくなってから後悔しても遅いのよ!

「くすくすくす……」

    さぁ、あたしの新たな人生の始まりよ。きっとその道は黄金で出来ているわ!


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