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番外編1 フレデリックの末路

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※ホラーチック注意。ヤンデレ系が苦手な方はご注意下さい。



 美しく完璧だった王子から平民へと落とされたあの運命の日からすでに数年。俺は毎夜まくらを涙で濡らして過ごしていた……。



『僕は、結婚します』



 そう言って俺の前から立ち去っていったジークハルトの後ろ姿が俺の脳裏にこびりついて忘れられないでいたのだ。

 あれから俺は王宮を追い出され、街の端っこに建てられた小さな家へと押し込められてしまった。それは、まるで犬小屋のようなボロ屋だった。ついでとばかりに猫の額ほどの小さな畑を与えられ、ここでひとりで生きていけと渡されたのはわずかばかりの金でしかなかった。

 こんなのでどうやって暮らせと言うのか?!ふざけるな!と俺をここへ連れてきた兵士に喚いたが「平民にとしてはかなり贅沢な暮らしができるだけの設備と金額だ」と冷たく言い捨てられたのだ。

 なにが贅沢な暮らしだ!俺は悔しさでいっぱいだった。

 雨風がしのげるだけの屋根と壁の小屋に貧相なベッドが備えられているだけの寝室。小さなテーブルとイスはどう見てもディナーのフルコースなど並べられるはずもない。さらにはトマトとキャベツが実っているだけの小さな畑。そしてこれまで普段から俺が着ていたような衣服と宝石を買ったらすぐ無くなってしまうくらいしかないわずかな金のどこが贅沢なのだ。きっと俺がなにも知らないと思って騙されたのだろうなと思うと、じわりと涙がでた。みじめでならない。

 はぁ……ジークハルトはどうしているのだろうか。あのときは結婚すると言われて動揺してしまったが、この静かな小屋でひとりで考えていたらやっと冷静にジークハルトの言葉を理解できたのだ。

 きっと、ジークハルトは母上に脅されていたのだろう。と。

 だからこそ、あの場では俺を見捨てるような発言をしたのだ。そうしなければ俺を酷い目に合わすなどと言われたに違いない。たぶん、どこかで母上が見張っていたのだろう。

 だから事が落ち着けばきっとジークハルトは俺を迎えに来てくれるはずだ。平民にはなってしまったが、ある意味それは俺とジークハルトの間にある障害が無くなったということなのだと気づいたのだ。

 だから……俺はここでジークハルトを待つよ。いつか白いタキシードに身を飾ったジークハルトが薔薇の花束を持って俺の前に現れるまで……。

だから、だから、だから……。早く、俺を迎えに来て……ジークハルト………………………………。









 しばらくして、養子になった新しい王子が国王になったと噂が流れた。なんでも新たな法律を作り、同性同士の結婚が可能になったとか。

 俺は久々に心を踊らせた。ジークハルトはきっとこれを待っていたのだとわかったからだ。

 だから……俺はジークハルトがいつ迎えに来てくれてもいいように、一歩も家から出ずひたすら扉の前に佇んでいたんだーーーー。

















それからxx年後。



「……あれっ。ねぇ、あの廃墟みたいな家って誰か住んでいたっけ?」

「さぁ?あんな街の端っこにある家なんて興味もないし知らないな。うーん、確かだいぶ昔に誰か住んでたってじぃちゃんが言ってたような気はするけど……」

「屋根が今にも崩れ落ちそうだし、せっかくの庭も荒れ放題だね。もったいないね」

「まぁいいじゃん。そんなことより、早くお祭りに行こう!」












 俺はずっとここで、いつまでも待っている。


 俺の愛しい人をーーーー。


(フレデリックEND)
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