私が最推しする年下王子はどうやら呪われているらしい~未来のラスボス化は阻止させて頂きます~

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 そんなこんなで、あれからそろそろ3年の月日が経とうとしています。3年……長いような短いような……とにかく色々ありました。

 まず、これまでパーティーなどには無関心だったクロード様を王家主催のパーティーに引っ張り出すことに成功しましたね。周りからは「悪魔王子とキズモノ令嬢」などと色々言われましたがこそこそ陰口を叩く奴らなんか無視に限ります。パーティーといえばダンス!ダンスと言えば婚約者同士のパートナー!合法でクロード様と密着出来るのですから欠席する理由がありませんよね!?

「俺が出席すると場の空気が悪くなるから」

 パーティーの為にダンスの練習を申し込むと、そんな事を言って拒否するクロード様に「クロード様が存在するその場の空気は私が全部吸い込みますから!」と無理矢理練習に付き合わせて参加させたのも今ではいい思い出です。合法で手を握れて密着出来て匂いまで嗅げるなんて……パーティー最高!ついでに王女の結婚パーティーにも堂々と出席してダンスで注目の的になってやりました。私とクロード様の幸せそうな姿を見せつけてやりましたとも!なぜか悔しそうにしている王女の姿を見て、いつも眉を顰めているクロード様がその時ばかりは笑顔を見せてくれたので眼福物でしたよ。

 そうそう、モヤについてもアレコレしようと頑張っでみたんです。ですが、クロード様がやたら警戒してるのかプライベートでは近付かせてくれないので結局はわからないままなのです。やはりリラックスしている時のほうがいいはずだと結論を出して、機会を狙っては詳しく調べようとしたら逃げるんですからどうしようもありません。ちょっとお風呂を覗こうとしたり夜這いをかけようとしただけなのに、なんであんなに警戒されているのかしら?今のところは(なぜか)落ち着いているようでほとんどモヤが出て来ないのも調べるのが後回しになっている理由でもありますが。

 さらにクロード様はすでに16歳で思春期真っ盛りのお年頃。お父様のせいでお触りなしの超絶プラトニックな婚約者生活はまさに(私が)修行でしたわね。絶対になにかラブハプニングが起こると期待していましたのに、クロード様ったら本当に指一本触れてこないなんて忍耐強すぎです。それとも実は私に興味ないんですか?!

 ついでに言えばヒロインはすでに生まれてしまっています。2歳になった彼女はそのカリスマパワーて周りを取り込んでいる最中です。恐るべし幼児ですわね。

 あ、そうそう。結局あの男は婿入りしました。あれほど私にお金を払えと訴えてきたマクシミリアン侯爵夫人でしたが、結局は娘可愛さに王命を出してきた陛下の言葉に膝を折ったようてす。というか、それくらいで簡単に王命を出す現国王陛下にドン引きです。得意気に笑ってる王女とその尻の下に若かれてるあいつの姿が目に浮かびますが。え?あの男の実家がどうなってるか?……長女を含め三人の娘たちにも縁切りされましたし、可愛い長男は王家に奪われ……大変そうですわね?(笑)

 まぁ、それはいいとして。

 つまり、私は今日で20歳になってしまうといういことです。せっかく推しと婚約者になれたのに何も無いまま20歳の誕生日の朝を迎えてしまうなんてなんだかショック……。クロード様の16歳の誕生日に使用人たちを巻き込み生誕祭を開催して自分にリボンを巻き付けて「プレゼントはわ・た・し♡」を実行してみたのにめちゃくちゃスルーされた記憶のせいで未だに心がささくれてるというのに。

「あぁ……私だけ年増になっていくわ」

 しばらくは婚約者として通い妻状態だった私ですが、なんだかんだとクロード様を騙し……丸め込め……いえ、説得してクロード様の住む搭に私専用の部屋を作ってもらったのです。もちろん、クロード様が私に夜這いをかけやすいようにです!しかもクロード様とひとつ屋根の下で同じ空気を吸えるなんて幸せ過ぎます。色々と理由をつけては侍女と一緒に泊まり込み、ほとんど同棲状態にまで持ち込みました。ここまで御膳立てしてもクロード様は無関心なんですけどね。

 それにしても、前世ならまだしもこの世界では二十代の独身女なんてただの行き遅れです。特に思春期真っ盛りのクロード様から見たらただの年増ですよ。せめてピチピチの10代の内に既成事実を作っておきたかったのに……!

 落ち込む私に専属侍女のタチアナとユーラリアがお茶を出してくれました。最初の頃はつい「タチアナ様、ユーラリア様」と呼んでいたのですが「リゼル様はわたしたちの主人なのですよ」と言われて今では呼び捨て出来るようになりました。慣れるまでが大変でしたが。

「ありがとう、タチアナ」

「20歳になられたからって落ち込まないで下さい。リゼル様は変わらずお美しいですよ」

「そうですよ!大人の女性の魅力が加わってさらにお美しくなられましたもの!」

「でも、ユーラリア……クロード様が歳下好きだったら私は惨敗よ?」

 というか、ラスボスはあんなに歳の離れたヒロインに惹かれるのだから将来はロリコン確定ですから!だからこそクロード様がその性癖に目覚める前に既成事実を作ろうと躍起になっていたのですもの。

「クロード様がお年頃になれば思春期爆発で眼の前にぶら下がっていつでもカモンな私を襲ってくださるかと期待していたのに……。やっぱりクロード様は幼児趣「誰が幼児趣味だ」あら、クロード様!」

 私がつい愚痴を言っていると3年前とは比べ物にならないくらい背の伸びたクロード様が複雑そうな顔で私の部屋に入ってきました。

「夜這いなら、夜中に来て下さらないと!」

「俺の部屋ならちゃんと施錠しているから、もう忍び込むなよ」

「わかりました。鍵開けの技術を学んでおきますわね!」

「そんなもの、学ばなくていい!」

 すっかり大人びたクロード様が頭を抱えて大きなため息をつくと、タチアナたちが苦笑いをしながら壁際に下がりました。

「そうではなくて……。えっと、あの……リ、リゼル嬢!あなたは今日で、その……」

 なにやら言いにくそうに視線を泳がせるクロード様。え、可愛い!萌える!大人びてきて格好良くなったのに可愛さも備えているとか最強に素敵じゃないですか!クロード様は私を悶え殺す気かしら?!

 しかし、モジモジと言いにくそうにするクロード様に何かが引っかかります。しかもいつもならほとんど寄り付かない私専用の部屋に朝からやってくるなんてよくよく考えれば奇跡ですもの。

 ーーーーもしかして、まだ2歳とはいえすでにヒロインの魅力にハマってしまったから20歳になった年増の私とは婚約破棄したいとか……?そう考えたら一気に血の気が引いてしまいました。

 いくら王命とはいえ、この3年間クロード様を引っ張り回しそれまでの生活ルーティンをめちゃくちゃにして(自覚はある)さらにモヤの謎解明も進まない私にクロード様が愛想をつかせたのでは……?!

「きょ、きょう「クロード様!私にチャンスをください!」は?」

 実はモヤについては一応文献や伝説を調べたりはしていたのですが、イマイチ確信の持てるものが見つからなかったせいもあり(というか、それを理由にクロード様に近づけるかもと下心もあり)、さらに最近はあまり出てないし自分にしか見えないからと高を括って後回しにしてたことは謝りますから、どうか見捨てないでください!

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