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なんてことでしょう、婚約破棄されてしまいました。
私は伯爵家の娘でリゼル・ヴィッツと申します。もう少しで17歳になる予定ですわ。弟に伯爵家をお任せして18歳の誕生日に侯爵家にお嫁入りする契約だったのですが……。
12歳の時に婚約してからもうすぐ5年。それなりに信頼を築いてきたつもりでしたが、壊れるのはほんの一瞬ですのね。
なんでもお忍びで街にいらしていた王女様と禁断の恋に落ちたのだとか……。彼は王女様の事を町娘だと思っていたらしく「どんなに隠しても気品と美しさは隠しきれなかった」とベタ褒めです。まぁ、王女様ですしねぇ。あんなに髪も肌も艶々してお忍びのくせに上等な絹の服を着た町娘なんてなかなかいないと思います。
王女様も王女様で「彼は身分なんか関係なく愛してくれる」なんて惚気てましたけど、王女までだとは思わなくても絶対にお金持ちだとは見抜いていたと思いますよ。彼って金の亡者ですから。何度かお忍びでデートしてた時も下町の屋台で割り勘でおやつを買ったとか、花園を散歩したとか……王女様には新鮮だったのでしょうね。私とのデートでは1銭も出さなかったので割り勘なら出した方なのかしら?
まぁそんなわけで、王女様のお願いに負けた国王が私に彼と別れてくれと言ってきたわけです。一人娘の王女様を甘やかしているとは聞いていましたけどこれは相当ですわね。これでも一応政略結婚なのですけれど。
しかもなぜか王女様の中では私が悪者になっていました。彼と結ばれた後も頻繁に逢えなかったり堂々とデート出来なかったのは私のせいだとかなんとか……。いえいえ、私のほうが正式な婚約者なのですから私とのお茶会を優先するのは当たり前では?頻度なんてせいぜい月1くらいですよ?というか、お忍びとはいえ私の親が私有する領地で私の婚約者と堂々とデートしようとしていただなんて正気ですか?と、ツッコミどころは多々ありましたが。
そんなツッコミどころ満載な疑問も、国王が頭を下げてまで私に別れるように言った時点で納得するしかありませんでした。
貴族の女性。特に王族の女は「清らかさ」が求められます。結婚前に純潔を失ってしまったなんてとんでもない失態です。それを隠して早く王女を結婚させたいのでしょう。もしも妊娠などしていたらそれこそ大変なことになりますから。ちなみにすでに妊娠してらっしゃいますよ。……おっとこれは極秘機密でした。
でも、それなら私と彼の婚約を白紙に戻せば良いですのにわざわざ「婚約破棄」にするなんてどうしてだろうと思ったらこれも王女様のワガママでした。
悪者の私には「キズモノ令嬢」がお似合いだと訳のわからない理論を言ってきたそうです。
婚約を「白紙」に戻せばその婚約が無かった事になるので私の名誉は無傷ですが、「破棄」されたとなればどちらに非があったとしても女にとっては致命傷ですもの。1度婚約破棄された令嬢はマトモな結婚は出来ないだろうとまで言われていますからね。
なんでも私をキズモノにしなければ彼と結婚しない。とかなんとか騒いだとか……。彼と結婚したいんですか、したくないんですか。どちらです?結婚しないと困るのは王女様だと思うのですが……。まぁ、私としてはどちらでもいいですが。
なんだか面倒臭くなってきました。どのみち彼には未練も何も無いですし、喜んで婚約破棄致しますよ。キズモノ上等です。だいたい婚約者がいるのに金持ちそうな町娘とそんな関係になるような男なんざこちらからお断りですわ。お父様と弟には怒られちゃうかしら……まぁいいか。
こうなったら後は弟に頑張ってもらって、私は田舎に隠居することにでもしましょう。のんびり田舎暮らし……最高かも。
そんな事を考えていたら国王から「せめてのお詫びに」と縁談を貰ってしまいました。えっ、いらないんですけど……えっ、王命ですか?そうですか。もしかしなくてもそれって断れないやつですよね。そうですよねぇー。えぇ、もちろん知ってましたとも。
そんな感じでとおいめをしていたのも束の間、縁談相手の名前を聞いてびっくりです。これもあの王女様の嫌がらせの延長に間違いありません。しかし「お詫び」と言いながらこんな案件を押し付けて、ついでに厄介払いしようとしている国王もかなりの腹黒ですけどね。でも、私にとったら棚ぼた案件でしたが。日頃の行いの良さかしら。
その縁談相手とは、王女様の弟でもあるこの国の第三王子。私よりも4つ?か、5つほど年下です。第三王子は理由があって国の外れにある搭に住んでおられるのですが、滅多に外に出る事もなく家族である王族からも煙たがられている存在なのです。
それはそれは、とぉーっても問題児な王子様なのですわ。まぁ、私が元婚約者に隠していた事に比べればたいしたことではありませんが……。
え?私の秘密ですか?それはーーーー。
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が転生者だって言ったらあなたは信じますか?あ、別にヒロインでも悪役令嬢でもないですけどね!
私は伯爵家の娘でリゼル・ヴィッツと申します。もう少しで17歳になる予定ですわ。弟に伯爵家をお任せして18歳の誕生日に侯爵家にお嫁入りする契約だったのですが……。
12歳の時に婚約してからもうすぐ5年。それなりに信頼を築いてきたつもりでしたが、壊れるのはほんの一瞬ですのね。
なんでもお忍びで街にいらしていた王女様と禁断の恋に落ちたのだとか……。彼は王女様の事を町娘だと思っていたらしく「どんなに隠しても気品と美しさは隠しきれなかった」とベタ褒めです。まぁ、王女様ですしねぇ。あんなに髪も肌も艶々してお忍びのくせに上等な絹の服を着た町娘なんてなかなかいないと思います。
王女様も王女様で「彼は身分なんか関係なく愛してくれる」なんて惚気てましたけど、王女までだとは思わなくても絶対にお金持ちだとは見抜いていたと思いますよ。彼って金の亡者ですから。何度かお忍びでデートしてた時も下町の屋台で割り勘でおやつを買ったとか、花園を散歩したとか……王女様には新鮮だったのでしょうね。私とのデートでは1銭も出さなかったので割り勘なら出した方なのかしら?
まぁそんなわけで、王女様のお願いに負けた国王が私に彼と別れてくれと言ってきたわけです。一人娘の王女様を甘やかしているとは聞いていましたけどこれは相当ですわね。これでも一応政略結婚なのですけれど。
しかもなぜか王女様の中では私が悪者になっていました。彼と結ばれた後も頻繁に逢えなかったり堂々とデート出来なかったのは私のせいだとかなんとか……。いえいえ、私のほうが正式な婚約者なのですから私とのお茶会を優先するのは当たり前では?頻度なんてせいぜい月1くらいですよ?というか、お忍びとはいえ私の親が私有する領地で私の婚約者と堂々とデートしようとしていただなんて正気ですか?と、ツッコミどころは多々ありましたが。
そんなツッコミどころ満載な疑問も、国王が頭を下げてまで私に別れるように言った時点で納得するしかありませんでした。
貴族の女性。特に王族の女は「清らかさ」が求められます。結婚前に純潔を失ってしまったなんてとんでもない失態です。それを隠して早く王女を結婚させたいのでしょう。もしも妊娠などしていたらそれこそ大変なことになりますから。ちなみにすでに妊娠してらっしゃいますよ。……おっとこれは極秘機密でした。
でも、それなら私と彼の婚約を白紙に戻せば良いですのにわざわざ「婚約破棄」にするなんてどうしてだろうと思ったらこれも王女様のワガママでした。
悪者の私には「キズモノ令嬢」がお似合いだと訳のわからない理論を言ってきたそうです。
婚約を「白紙」に戻せばその婚約が無かった事になるので私の名誉は無傷ですが、「破棄」されたとなればどちらに非があったとしても女にとっては致命傷ですもの。1度婚約破棄された令嬢はマトモな結婚は出来ないだろうとまで言われていますからね。
なんでも私をキズモノにしなければ彼と結婚しない。とかなんとか騒いだとか……。彼と結婚したいんですか、したくないんですか。どちらです?結婚しないと困るのは王女様だと思うのですが……。まぁ、私としてはどちらでもいいですが。
なんだか面倒臭くなってきました。どのみち彼には未練も何も無いですし、喜んで婚約破棄致しますよ。キズモノ上等です。だいたい婚約者がいるのに金持ちそうな町娘とそんな関係になるような男なんざこちらからお断りですわ。お父様と弟には怒られちゃうかしら……まぁいいか。
こうなったら後は弟に頑張ってもらって、私は田舎に隠居することにでもしましょう。のんびり田舎暮らし……最高かも。
そんな事を考えていたら国王から「せめてのお詫びに」と縁談を貰ってしまいました。えっ、いらないんですけど……えっ、王命ですか?そうですか。もしかしなくてもそれって断れないやつですよね。そうですよねぇー。えぇ、もちろん知ってましたとも。
そんな感じでとおいめをしていたのも束の間、縁談相手の名前を聞いてびっくりです。これもあの王女様の嫌がらせの延長に間違いありません。しかし「お詫び」と言いながらこんな案件を押し付けて、ついでに厄介払いしようとしている国王もかなりの腹黒ですけどね。でも、私にとったら棚ぼた案件でしたが。日頃の行いの良さかしら。
その縁談相手とは、王女様の弟でもあるこの国の第三王子。私よりも4つ?か、5つほど年下です。第三王子は理由があって国の外れにある搭に住んでおられるのですが、滅多に外に出る事もなく家族である王族からも煙たがられている存在なのです。
それはそれは、とぉーっても問題児な王子様なのですわ。まぁ、私が元婚約者に隠していた事に比べればたいしたことではありませんが……。
え?私の秘密ですか?それはーーーー。
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が転生者だって言ったらあなたは信じますか?あ、別にヒロインでも悪役令嬢でもないですけどね!
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