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悪役令嬢は伏線を張る(オフィーリア視点)
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「あら、こんなところに突っ立っていられたら邪魔でしてよ?」
「な、なん……ふぎゃっ?!」
ばっしゃーん!!
中庭の端っこにある小さな池の前で出くわした僕とヒロイン。ヒロインが「なんでここに?!」と叫ぶ前に池に突き落としてやった。浅くて小さな池なのだがやたらとカエルが多いその池で全身ずぶ濡れになったヒロインは顔色を悪くしてこちらを見て来るが、可哀想だなんて欠片も思わない。
だって……これは全て君が言い出したことなんだからね?
ヒロインがしっかり濡れ鼠になったことを確認すると僕は1枚の紙を取り出した。
「えーと、あとはなんだったかな?」
これには、これまで悪役令嬢がヒロインにしたと言われている嫌がらせリストが書いてある。ルルーシェラが気を使ったのか知らなかったのかはわからないが教えてくれなかった分もしっかり調べたものだ。
「あ、あんた……なにす……ひぃっ」
「今、忙しいから黙っててくれるかしら?」
文句を言おうとしてくるヒロインをひと睨みして黙らせると、リストにペンを走らせた。
「“池に突き落とす”は、これで完了っと」
そう、このリストは……僕がいない間にヒロインがセルフイジメでルルーシェラに負わせた罪のリストなのである。あれから数日、久々のヒロインとの顔合わせをした翌日から僕は妙に楽しくなってさっそくはりきってしまい毎日せっせとヒロインをイジメている。悪役令嬢の腕が鳴るというものだ。
「うふふ、では今日はこの辺に致しておきましょうか。一気にやってしまってはつまらないですものね。明日はどれを実行するか……お楽しみにしておいてくださいな」
僕がにっこりと笑顔を作ってそう言うと、ヒロインは顔色を悪くして震えていた。頭の上にカエルが乗っかっているからかその姿はとても滑稽に見えた。
「あ、あんた……やっぱりなんかおかしいわよ……!毎日毎日……こ、こんな────」
「ついこの間も、あなたは私にこのようにされていたんでしょう?それならば、これはいつもの事じゃないですか?」
「あ、あんたみたいな性悪女が何を偉そうに……!」
有無を言わさぬ笑顔で圧をかけてやったがさすがはヒロインといったところか。逆に噛み付く勢いで僕に掴みかかろうとしてくる。ヒロインにあるまじきすごい形相だが大丈夫なの?それ。ヒロインは気づいていないようだけど、さっきから背後に人の気配がする。たぶんこの気配は────。
「お前達、なにをしている?」
そう言ってタイミング良く茂みから現れたのは────攻略対象者のひとり、ニクス・ドゥードリシュのご登場である。
さぁ、ヒロインはどうするかな?と様子を見ていると、まるでスイッチを押したかのようにさっきのすごい形相が一瞬でうるうるの泣き顔へと変貌した。
「ニクスせんせぇ~!助けてくださぁい!!」
頭にカエルを乗せたままではあるが切り替えの速さに感心してしまう。ずぶ濡れのヒロインが泣き顔で助けを求めていたら攻略対象者……いや、ここにいたのがユーリだったならば確実にヒロインへと手を差し伸ばしただろうに。
「……」
しかしニクス・ドゥードリシュはチラリとヒロインを見てから僕に視線を動かした。
「……今度は何をしているんだ、オフィーリア嬢」
「せ、せんせぇ!あたし、オフィーリア様にイジメられてて……っ」
僕の方へと足を向けるニクス・ドゥードリシュに慌てて抱き着こうとするヒロインだったが、その足がピタリと止まる。それは、ヒロインを再び見るニクスの視線がとても冷たいものだったからだろう。
「俺様は、誤解されたくないのならば態度を改善すべきだと散々言ったはずだ。君はそれを怠り口先だけで態度は酷くなる一方じゃないか。貴族令嬢としての最低限のマナーも守れずに嘆くばかりでは公爵令嬢から指導を受けたとしても仕方無いだろう」
「そ、そんな……」
自分を甘やかして守ってくれるはずの攻略対象者に厳しい事を言われ、ヒロインは顔を悔しそうに歪ませて僕の方を睨んでくる。
「あ、あんた!ニクスに何をしたのよ……?!この悪役令嬢……っ」
そして悪態をつき僕に向かって足元にあった石を投げてきたのだが……その石を、ニクスの手のひらが掴んだ。
「男爵令嬢が公爵令嬢に向かって暴言と傷害か……しかもオフィーリア嬢は王子の婚約者なんだぞ、こんなとこが公になったらどうなるか……」
ニクスがため息混じりにそう言うと、ヒロインの体がビクッと揺れる。これまでは自分が何をしても否定的なことは言われなかったのに……そんな表情だ。確かに乙女ゲームはご都合主義満載で、どのキャラクターもヒロインの為に存在していると言っていいだろう。だがヒロインは、何事にも想定外なことがあると知るべきなのだ。例えば悪役令嬢の中身が“僕”である事とかね。
「落ち着いて下さい、先生。これは単なるじゃれ合いみたいなものですわ。どうやらちょっぴり私の指導が厳しかったようで、堪え性の無い方には難しかったのでしょう。やはり躾からやり直ししなくてはいけないと考えていたところなんですわ。ですので、言葉遣いも態度もこれからに期待して、今日のところは不問にいたしますわ」
「……オフィーリア嬢がそういうのなら、いいんだが」
そして僕とニクスの視線がヒロインに向けられると、その圧に耐えられなかったのかヒロインは「王子に全部言いつけてやるから!」と捨て台詞を吐いて走り去ってしまった。
「あらあら、騒がしい方ですわね。走り方に品位が無いわ。ドゥードリシュ先生もこれまで大変でしたのでは?」
「……いや、オフィーリア嬢に言われた通り確かに彼女を甘やかしすぎていたと自覚しただけだ。厳しい事を言うのも大人の役目だしな」
ニクスは肩を竦めてため息をついた。最初はまさか、ルルーシェラが学園にいると言っていた協力者がニクス・ドゥードリシュだと知った時は驚いたが今となってはヒロインの動向を操るのにとても役立ってくれているのだ。
もちろん、ニクス・ドゥードリシュの事情もルルーシェラから聞いている。そしてそれらの問題は僕が解決しておいた。ルルーシェラは公爵家の力を使うのは控えていたようだが、僕は使えるものは全て使う主義である。
「ありがとうございます。でも、このことは誰にも言わないで下さいね?もしもの時に恥をかくのは彼女ですし、これには王家のこれからも関わってきますので……」
「もちろんだ、約束は守ろう。しかしまさか君が、王家から内密で新たな王子妃の教育係を承っていたとは……。てっきり君が王子と結婚するものだと思っていたのに」
「私は彼女が王子妃として相応しく育つまでの隠れ蓑なんですわ。でなければ男爵令嬢の立場では周りからどんな攻撃をされるかわかりませんし……私はこれでも、王子とロゼット嬢の事を応援していますのよ。ロゼット嬢には立派な淑女になってもらわなくてはなりませんから」
これはもちろん、悪役令嬢の断罪劇をさせないための伏線作りだ。これからヒロインやユーリにはバレないように水面下でこの噂を広げるつもりである。悪役令嬢がヒロインをイジメていたのには「理由」があった。と、最終的に皆が納得する“餌”があればいいのである。
「もっと早く言ってくれていれば、オフィーリア嬢が理不尽なイジメをしているなんて疑うこともなかったのに……だが、信じてくれて感謝する。今後は恩を返すためにも全力を尽くすと誓おう」
「ふふ、ありがとうございます。ところで、こんなところへやってくるなんてなにかありましたか?今は研究の時間だったのでは?」
ヒロインへダメージを与えてくれたタイミングはとても良かったが、これは本当に偶然だった。たぶんゲームの強制力かなにかでヒロインが悪役令嬢にイジメられている現場に攻略対象者が導かれたのだろうが、ヒロインの誤算はその攻略対象者が悪役令嬢の仲間だったということだ。
まぁ、ニクス本人は“ヒロインの為に”やっていると信じているようだが。
まず僕はニクス・ドゥードリシュの買収から始めた。でもそれはルルーシェラがやっていた生温い交換条件などではない。
公爵家の財力に物を言わせて、新たな爵位を買い与えたのだ。
これでニクスは実家の子爵家とは縁を切って新たな伯爵となった。書類上では公爵家の領地の一部を任せた一代限りの伯爵ではあるがじゅうぶんだろう。そしてもうすぐ学園を辞めて今後は魔女の研究に集中してもらうことになっている。もちろん資金は一生かけても使い切れない程に用意してあるので存分に魔女の事を解明してもらう予定だ。……これは、ルルーシェラの今後の為に役立つはずだからだ。それに、ニクスは攻略対象者でありながら他のルートではお助けキャラになる場合がある。ヒロインの手助けなんか絶対にさせやしない。学園から切り離してしまえばニクスに助けてもらうのは絶望的のはずだ。本人も喜んで僕に感謝しているしね。
でも、本当は女性らしいからその辺はゲームのバグかな?とは思ったけれど。まぁ、僕の邪魔さえしなければどちらでもいいことだ。
そして問題は王家に伝わる“1000年に1度現れる恐怖の黒髪の魔女”の伝承だ。ユーリは裏設定には全く興味がなかったから知らないだろうけど(いや、王子のくせに興味持てよ。とも思った)、僕もこのことに関してはあまり詳しくない。だってゲームではそんな伝承があってもキャラクターとして出てきたわけではないからだ。ただ、まだ僕の知らないルートやエンドがあるかもしれない……ルルーシェラをバッドエンドに巻き込まないためにも対策はいくつあってもいいだろう。
ヒロインについても、僕はちゃんとユーリとくっつけてあげるつもりだよ。シークレットルートになんか行かせやしない……必ず分岐点で王子ルートに戻してやる。そのためにあらゆる手を尽くしてやるさ。
それがハッピーエンドか、バッドエンドかは知らないけどね。
「あ、あぁ……。それが、資料の本が一冊見当たらなくてな。以前、オフィーリア嬢が読んでいた本なのだが……どこかで見かけなかったか?」
その本のタイトルを聞いて僕はクスッと笑った。
「いえ、私は知りません。もしかしたら魔女のいたずらかもしれませんね」
それにしても、わざわざそんな本を持っていくなんて……ルルーシェラの“魔女の勘”でも働いたのかな?やっぱり君になんの才能も無いなんてあり得ない。そう、ただ……大きなキッカケが足りないだけなんだ。
そんな事を考えながら、今は遠くに旅立ってしまった妹に思いを馳せるのだった。
「な、なん……ふぎゃっ?!」
ばっしゃーん!!
中庭の端っこにある小さな池の前で出くわした僕とヒロイン。ヒロインが「なんでここに?!」と叫ぶ前に池に突き落としてやった。浅くて小さな池なのだがやたらとカエルが多いその池で全身ずぶ濡れになったヒロインは顔色を悪くしてこちらを見て来るが、可哀想だなんて欠片も思わない。
だって……これは全て君が言い出したことなんだからね?
ヒロインがしっかり濡れ鼠になったことを確認すると僕は1枚の紙を取り出した。
「えーと、あとはなんだったかな?」
これには、これまで悪役令嬢がヒロインにしたと言われている嫌がらせリストが書いてある。ルルーシェラが気を使ったのか知らなかったのかはわからないが教えてくれなかった分もしっかり調べたものだ。
「あ、あんた……なにす……ひぃっ」
「今、忙しいから黙っててくれるかしら?」
文句を言おうとしてくるヒロインをひと睨みして黙らせると、リストにペンを走らせた。
「“池に突き落とす”は、これで完了っと」
そう、このリストは……僕がいない間にヒロインがセルフイジメでルルーシェラに負わせた罪のリストなのである。あれから数日、久々のヒロインとの顔合わせをした翌日から僕は妙に楽しくなってさっそくはりきってしまい毎日せっせとヒロインをイジメている。悪役令嬢の腕が鳴るというものだ。
「うふふ、では今日はこの辺に致しておきましょうか。一気にやってしまってはつまらないですものね。明日はどれを実行するか……お楽しみにしておいてくださいな」
僕がにっこりと笑顔を作ってそう言うと、ヒロインは顔色を悪くして震えていた。頭の上にカエルが乗っかっているからかその姿はとても滑稽に見えた。
「あ、あんた……やっぱりなんかおかしいわよ……!毎日毎日……こ、こんな────」
「ついこの間も、あなたは私にこのようにされていたんでしょう?それならば、これはいつもの事じゃないですか?」
「あ、あんたみたいな性悪女が何を偉そうに……!」
有無を言わさぬ笑顔で圧をかけてやったがさすがはヒロインといったところか。逆に噛み付く勢いで僕に掴みかかろうとしてくる。ヒロインにあるまじきすごい形相だが大丈夫なの?それ。ヒロインは気づいていないようだけど、さっきから背後に人の気配がする。たぶんこの気配は────。
「お前達、なにをしている?」
そう言ってタイミング良く茂みから現れたのは────攻略対象者のひとり、ニクス・ドゥードリシュのご登場である。
さぁ、ヒロインはどうするかな?と様子を見ていると、まるでスイッチを押したかのようにさっきのすごい形相が一瞬でうるうるの泣き顔へと変貌した。
「ニクスせんせぇ~!助けてくださぁい!!」
頭にカエルを乗せたままではあるが切り替えの速さに感心してしまう。ずぶ濡れのヒロインが泣き顔で助けを求めていたら攻略対象者……いや、ここにいたのがユーリだったならば確実にヒロインへと手を差し伸ばしただろうに。
「……」
しかしニクス・ドゥードリシュはチラリとヒロインを見てから僕に視線を動かした。
「……今度は何をしているんだ、オフィーリア嬢」
「せ、せんせぇ!あたし、オフィーリア様にイジメられてて……っ」
僕の方へと足を向けるニクス・ドゥードリシュに慌てて抱き着こうとするヒロインだったが、その足がピタリと止まる。それは、ヒロインを再び見るニクスの視線がとても冷たいものだったからだろう。
「俺様は、誤解されたくないのならば態度を改善すべきだと散々言ったはずだ。君はそれを怠り口先だけで態度は酷くなる一方じゃないか。貴族令嬢としての最低限のマナーも守れずに嘆くばかりでは公爵令嬢から指導を受けたとしても仕方無いだろう」
「そ、そんな……」
自分を甘やかして守ってくれるはずの攻略対象者に厳しい事を言われ、ヒロインは顔を悔しそうに歪ませて僕の方を睨んでくる。
「あ、あんた!ニクスに何をしたのよ……?!この悪役令嬢……っ」
そして悪態をつき僕に向かって足元にあった石を投げてきたのだが……その石を、ニクスの手のひらが掴んだ。
「男爵令嬢が公爵令嬢に向かって暴言と傷害か……しかもオフィーリア嬢は王子の婚約者なんだぞ、こんなとこが公になったらどうなるか……」
ニクスがため息混じりにそう言うと、ヒロインの体がビクッと揺れる。これまでは自分が何をしても否定的なことは言われなかったのに……そんな表情だ。確かに乙女ゲームはご都合主義満載で、どのキャラクターもヒロインの為に存在していると言っていいだろう。だがヒロインは、何事にも想定外なことがあると知るべきなのだ。例えば悪役令嬢の中身が“僕”である事とかね。
「落ち着いて下さい、先生。これは単なるじゃれ合いみたいなものですわ。どうやらちょっぴり私の指導が厳しかったようで、堪え性の無い方には難しかったのでしょう。やはり躾からやり直ししなくてはいけないと考えていたところなんですわ。ですので、言葉遣いも態度もこれからに期待して、今日のところは不問にいたしますわ」
「……オフィーリア嬢がそういうのなら、いいんだが」
そして僕とニクスの視線がヒロインに向けられると、その圧に耐えられなかったのかヒロインは「王子に全部言いつけてやるから!」と捨て台詞を吐いて走り去ってしまった。
「あらあら、騒がしい方ですわね。走り方に品位が無いわ。ドゥードリシュ先生もこれまで大変でしたのでは?」
「……いや、オフィーリア嬢に言われた通り確かに彼女を甘やかしすぎていたと自覚しただけだ。厳しい事を言うのも大人の役目だしな」
ニクスは肩を竦めてため息をついた。最初はまさか、ルルーシェラが学園にいると言っていた協力者がニクス・ドゥードリシュだと知った時は驚いたが今となってはヒロインの動向を操るのにとても役立ってくれているのだ。
もちろん、ニクス・ドゥードリシュの事情もルルーシェラから聞いている。そしてそれらの問題は僕が解決しておいた。ルルーシェラは公爵家の力を使うのは控えていたようだが、僕は使えるものは全て使う主義である。
「ありがとうございます。でも、このことは誰にも言わないで下さいね?もしもの時に恥をかくのは彼女ですし、これには王家のこれからも関わってきますので……」
「もちろんだ、約束は守ろう。しかしまさか君が、王家から内密で新たな王子妃の教育係を承っていたとは……。てっきり君が王子と結婚するものだと思っていたのに」
「私は彼女が王子妃として相応しく育つまでの隠れ蓑なんですわ。でなければ男爵令嬢の立場では周りからどんな攻撃をされるかわかりませんし……私はこれでも、王子とロゼット嬢の事を応援していますのよ。ロゼット嬢には立派な淑女になってもらわなくてはなりませんから」
これはもちろん、悪役令嬢の断罪劇をさせないための伏線作りだ。これからヒロインやユーリにはバレないように水面下でこの噂を広げるつもりである。悪役令嬢がヒロインをイジメていたのには「理由」があった。と、最終的に皆が納得する“餌”があればいいのである。
「もっと早く言ってくれていれば、オフィーリア嬢が理不尽なイジメをしているなんて疑うこともなかったのに……だが、信じてくれて感謝する。今後は恩を返すためにも全力を尽くすと誓おう」
「ふふ、ありがとうございます。ところで、こんなところへやってくるなんてなにかありましたか?今は研究の時間だったのでは?」
ヒロインへダメージを与えてくれたタイミングはとても良かったが、これは本当に偶然だった。たぶんゲームの強制力かなにかでヒロインが悪役令嬢にイジメられている現場に攻略対象者が導かれたのだろうが、ヒロインの誤算はその攻略対象者が悪役令嬢の仲間だったということだ。
まぁ、ニクス本人は“ヒロインの為に”やっていると信じているようだが。
まず僕はニクス・ドゥードリシュの買収から始めた。でもそれはルルーシェラがやっていた生温い交換条件などではない。
公爵家の財力に物を言わせて、新たな爵位を買い与えたのだ。
これでニクスは実家の子爵家とは縁を切って新たな伯爵となった。書類上では公爵家の領地の一部を任せた一代限りの伯爵ではあるがじゅうぶんだろう。そしてもうすぐ学園を辞めて今後は魔女の研究に集中してもらうことになっている。もちろん資金は一生かけても使い切れない程に用意してあるので存分に魔女の事を解明してもらう予定だ。……これは、ルルーシェラの今後の為に役立つはずだからだ。それに、ニクスは攻略対象者でありながら他のルートではお助けキャラになる場合がある。ヒロインの手助けなんか絶対にさせやしない。学園から切り離してしまえばニクスに助けてもらうのは絶望的のはずだ。本人も喜んで僕に感謝しているしね。
でも、本当は女性らしいからその辺はゲームのバグかな?とは思ったけれど。まぁ、僕の邪魔さえしなければどちらでもいいことだ。
そして問題は王家に伝わる“1000年に1度現れる恐怖の黒髪の魔女”の伝承だ。ユーリは裏設定には全く興味がなかったから知らないだろうけど(いや、王子のくせに興味持てよ。とも思った)、僕もこのことに関してはあまり詳しくない。だってゲームではそんな伝承があってもキャラクターとして出てきたわけではないからだ。ただ、まだ僕の知らないルートやエンドがあるかもしれない……ルルーシェラをバッドエンドに巻き込まないためにも対策はいくつあってもいいだろう。
ヒロインについても、僕はちゃんとユーリとくっつけてあげるつもりだよ。シークレットルートになんか行かせやしない……必ず分岐点で王子ルートに戻してやる。そのためにあらゆる手を尽くしてやるさ。
それがハッピーエンドか、バッドエンドかは知らないけどね。
「あ、あぁ……。それが、資料の本が一冊見当たらなくてな。以前、オフィーリア嬢が読んでいた本なのだが……どこかで見かけなかったか?」
その本のタイトルを聞いて僕はクスッと笑った。
「いえ、私は知りません。もしかしたら魔女のいたずらかもしれませんね」
それにしても、わざわざそんな本を持っていくなんて……ルルーシェラの“魔女の勘”でも働いたのかな?やっぱり君になんの才能も無いなんてあり得ない。そう、ただ……大きなキッカケが足りないだけなんだ。
そんな事を考えながら、今は遠くに旅立ってしまった妹に思いを馳せるのだった。
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