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落ちこぼれ魔女と小さな希望

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「ーーーー“森の魔女”って知ってる?」

「え?」

 少し冷めてしまったお茶を飲み干して、オフィーリアが目を細める。「魔女」という言葉に反応してしまったが、“森の魔女”という名前は聞いたことが無かった。

「……私も旅をしながら小耳に挟んだ噂話なんだけどね。その“森の魔女”はどんな願いも叶えてくれるらしいよ?もしかしたら同じ“魔女”としてなにか知ってるかもしれない人をひとり知ってるけどなぁ」

「あーーーーばっちゃん!私を王子に売ったあの業突く張りばばぁなら絶対になにか知ってるわ!」

 私がそう叫ぶと、オフィーリアは楽しそうに喉の奥を鳴らした。

「そうそう、その魔女の長老ならたぶんなにか知ってると思うんだよね。私からの情報としては、不思議な森に住んでいるとか……最近代替わりしたらしいとか……そのくらいかな。確か二代目の“森の魔女”は瓶底眼鏡がトレードマークらしいよ」

「め、眼鏡?しかも瓶底って……っていうか、瓶底眼鏡ってなんですか?」

「よく知らないけど、素顔がわからないくらい分厚い眼鏡らしいよ。まぁ、国が違えば文化も違うと思うし、個人の好みもあるからね。もしかしたら素顔を隠したい事情があるのかもしれないし……僕が……私が思うに、もしかしたらその新しい魔女も……いや、憶測に過ぎないか。…………………まさかーーーーそんなに転生者ばっかり転がってないよね」

「……オフィーリア様、なにか言いましたか?」

 最後が小声だったからか聞き逃してしまい首を傾げると、オフィーリアの表情が翳った気がした。いきなり双子だと言われても到底受け入れられるわけはないが、それでもやはり彼女(彼?)の事は無意識に気になってしまうようだ。

「ううん、なにも。まぁ、そんなわけだからルルーシェラは久々に里帰りしておいでよ。長老を問い詰めて、なんなら旅に出ておいで」

「た、旅?!でもそんなことしたら学園とかヒロインとか……それに、実は学園に協力者が、その」

「大丈夫だよ。学園にはもちろん私が通うし、ヒロインも徹底的に虐めておくから。その協力者とやらは懐柔しておくから詳しく聞かせてくれるかな?……それに、本当なら君はこの期間は神隠し的な行方不明になっているはずだったんだ。再び魔女の村に現れるはずだったから真っ先に会うために待ち構えていようと思っていたのに、それをあの阿呆王子……ユーリが替え玉なんてさせるために君を連れてきたからややこしくなっているんだよ。それにーーーー神隠しから戻ってきたゲームの君は、確かに“魔女”だったはずだよ」

 オフィーリアのその言葉にドキリと旨が高鳴る。

「私が、“魔女”に……?!」

 それは、私にとって砂山の中に光る一粒の宝石のような希望だったのだった。
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