落ちこぼれ魔女ですが、悪役令嬢の替え玉やってます

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残念王子は悪役令嬢と対峙する(ユーリ視点)

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「オフィーリア……君、ほんとに本物なの?!」

    そう、そこにいたのは僕の婚約者で悪役令嬢のオフィーリアその人だったのだ。

「……その言い方って、私の偽物がいるって公言しているようなものでしてよ?まったく、都合よく周りに誰もいないからいいようなものの……あなた自分が王子だって自覚ありまして?」

    うぐっ!この嫌味な言い方はまさしくオフィーリアだ。オフィーリアは記憶を思い出す前からこうやって僕の発言から言動までイチイチ難癖つけるんだよ。

「ふん、君こそ勝手にトンズラしてさ!公爵令嬢としての自覚あるの?あれから僕がどれだけ大変だったか……」

「私の後を追いかけたものの逃げられたからと魔女の村でお金と権力を振りかざし、いたいけな少女を買って私の替え玉にして、自分が浮気相手とイチャイチャするために働かせている身勝手な最低男に言われる筋合いなどありませんわ」

    ぐはぁっ!なんか言葉の槍で貫かれたぁぁぁぁぁ!!責められてる!責められてるよぉぉぉぉぉぉ!!

「ひ、酷い。僕って繊細なのに……」

「女の子を金で買って悪役令嬢の身代わりなんてさせる奴を繊細なんて断じて認めませんわ」

    なんか前に似たようなやり取りをルルーシェラとしたなぁ。と思い出した。いや、オフィーリアの方が辛辣だけど。

「ところでユーリ、あなたは気付いてないの?今、どうなってるかを」

「な、なんだよぉ。どうなってるかって、なにが……」

    今度はオフィーリアが何を言ってくるのかとビクビクしながら聞き返すと、オフィーリアは深いため息をついた。

なんだよぉぉぉ!なんでそんな残念そうに僕を、見るんだよぉぉぉぉ?!

「これだから顔だけの残念王子は……。いいこと?今、この世界は……シークレットルートに進んでいますわ」

「へ?」

    シークレットルートって……僕、そんなルート知らないんだけどぉぉぉぉぉ!!?





***







    乙女ゲーム≪乙女チックパラダイス!≫略して≪乙パラ≫は、一部のマニアックな人種にだけやたら人気のあったご都合主義満載のゲームである。そのマニアックな人種以外には所謂クソゲーとして認定されていた。

    ストーリーは一般的な乙女ゲームのようだが、とにかくユルい。なにがなんでもヒロインは絶対ハッピーエンド確定。逆ハーレムだって狙いたい放題。

    特に筆頭攻略対象者であるユリウス王子は、手のひらで転がすように簡単に攻略できることで有名である。
    どんな選択肢を選んでも必ず攻略出来るので攻略しがいがないとプレイヤーたちに「残念王子」と呼ばれているが、ゆるーい設定とマニア受けするビジュアルのキャラクターにドハマりする者は確実に存在していた。

    そんなプレイヤーたちはほとんどがメイン攻略対象者を一通りクリアするとゲームをやめてしまうのだが、実は隠されたルートがある。

    それは、逆ハーレムルートで王子のみの好感度が真っ先にMAXを振り切ると、悪役令嬢が行方不明になってしまうというものだ。

    すると、それまでモブであったはずの悪役令嬢の幼なじみである騎士見習いが突然ヒロインの前に姿を現す。悪役令嬢の安否を心配する騎士見習いの姿にヒロインは心を打たれ、それまで酷いイジメを受けていたことなど関係ないとばかりに一緒になって悪役令嬢の行方を探す手伝いをし出す。

    そんな健気なヒロインの姿に騎士見習いはだんだんヒロインに攻略されていくのである。

    シークレットキャラである騎士見習いの攻略は他のメイン攻略対象者とはひと味違って小難しい。悪役令嬢を幼なじみとして好意的に見ている騎士見習いをどう心変わりさせるかが攻略の鍵となるのだ。

    ヒロイン絶対主義の≪乙パラ≫て唯一攻略しがいがあると言われる騎士見習いだが……。攻略サイトにも乗っていない本当に隠されたこのシークレットキャラを発見出来る猛者は数えるほどしかいない。

    製作サイドが何を思ってこのシークレットキャラを設定したのかは、数少ないファンの中でも謎である。





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