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1 死に戻りした転生者
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「ルティア・シューレクト公爵令嬢!僕はお前との婚約を破棄して、この聖女ジュリアを新たな婚約者する!」
華やかながらも厳粛であるべき学園の卒業パーティーでその茶番劇は開催されていた。
本来ならば皆にお祝いを述べられるべき卒業生達をパーティー会場の隅に追いやり、堂々と視線を集めているのは私の婚約者であるはずの第一王子だ。そしてその隣には顔も見たくないピンクの髪をした令嬢がひとり。それで隠しているつもりなのかと聞きたい程にニヤニヤと口元を歪めている。
「……婚約破棄ですか。理由をお伺いしても?」
「今更とぼけるとは往生際が悪いぞ!お前がジュリアに嫌がらせをしていたのはわかっているんだ!しかもこのジュリアは次代の聖女に選ばれた特別な存在……お前は国の宝である聖女を害した罪で死刑だ!」
「私は「問答無用だ!」なっ……?!」
私は反論する暇もなく聖女の取り巻きである騎士団長の息子や宰相の息子達に取り押さえられ無理矢理地下牢へと閉じ込められた。騎士団長の息子は筋肉バカで加減と言う言葉を知らないらしく掴まれた腕には手形のアザが出来ているし、宰相の息子に突き飛ばされたせいでところどころに擦り傷が出来てしまった。そしてそれをニヤニヤと見ていた王子と聖女の顔を思い出して吐き気がした。
そして、あっという間に私の死刑が実行され……断頭台のギロチンに固定された私の側に聖女がやって来てこう囁いたのだ。
「さようなら、悪役令嬢さん」と。
その時の醜悪な笑みを脳裏に焼き付けたまま、私の首は転がり落ちていったのだった。
「私!悪役令嬢だったんじゃん!!」
聖女……いや、ヒロインのあの言葉で私は思い出してしまった。あの世界が乙女ゲームの世界で私が悪役令嬢だったことを。まさか、死んだ瞬間に自分が転生者だと思い出すなんて……。
王子も騎士団長の息子も宰相の息子も、全員攻略対象者だったのだ。しかも悪役令嬢が断罪されて首ちょんぱエンドと言うことは逆ハーレムルートじゃないか!だって他のルートならせいぜい国外追放エンドとか平民落ちエンドだもの!
「そうとわかってればフラグへし折ったのに、まんまとヒロインをイジメちゃったわ。いや、でも殺される程酷いことなんてしてなくない?人の婚約者とイチャイチャしてたから忠告的な事を言っただけなのに……まぁ、ヒロインも転生者っぽかったしどのみち捏造されるかぁ……」
公爵令嬢なら絶対にしないだろう胡座をかいて、がっくりと肩を落とし大きなため息をついた。細かい事は思い出せないが前世の私はがさつな性格だったようだ。確か友達に「もっと乙女心を学ぶべき!」と参考書代わりに貸してもらった乙女ゲームだった。意外と面白くて全ルート制覇したけれど、ゲームを返す約束の日に友達の家に行く途中でトラックに────。
そこからの記憶は無い。だがその時の衝撃と痛みを想像しただけで背筋がブルッと震えた。
「はぁ……。前世では事故死して、転生したら首ちょんぱって私の人生どこまで最悪なのかしら。こうゆうのってせめて途中から前世を思い出して不幸を回避するものじゃないの?思い出すのが遅すぎよ!」
ついでに乙女心の代わりに二次創作を学んだこの乙女ゲームのおかげで転生物のWEB小説もちょこちょこ読んでいたのも思い出す。そういえば攻略対象者同士のなんちゃらも流行っていたのよね。ビジュアルが美形ばっかりだったから。
前世の自分の名前は思い出せないのに、乙女ゲーム関連の情報ばかりが脳内を巡る。だから、今更遅いってば!
もしこれらの情報を生きているうちに思い出していれば、死刑エンドだけでも回避出来たかもしれないのに……そう考えたら叫ばずにはいられなかった。
「せめてもう一度やり直させてよーっ!ヒロインばっかり優遇して……神様のケチ!バカ!デベソ!!」
半泣きになりながらいるかどうかもわからない神様に向かって悪態をつき、私の意識はプツリと途絶えた。
今度こそ完全な死が来るのだと、怯えながら────。
***
次に目が覚めた瞬間、私は確かに叫んでいたのだ。
「ルティア・シューレクト公爵令嬢、僕はお前との婚約をは────??!」
私は自分の置かれている状況がわからず思わず手で口を押さえた。そして目の前にいる人物の姿に目を見開き驚くしかなかった。
鮮やかな赤い髪と、少しつり上がった赤い瞳。だがいつものように毅然とした表情ではなく、青ざめながら「??!」みたいな顔をしている私がそこにいたのだ。
私と“私”がお互いを指差して「「??!」」としていると、真横からなんだか甘ったるい声が聞こえてくる。
「王子様ぁ、どうしたのぉ?早くあの人と婚約破棄してあたしと結婚してくれるんでしょぉ?」
私はその声の方向に恐る恐る視線を動かした。
「!!」
なんと私は憎きピンク頭……ヒロインの腰をその手で抱き締めてしたのだ。
もしかして、私……王子になっちゃってる?!
しかもこの場面は私が問答無用で断罪されたあのシーンだ。え、これってWEB小説でよくあるループ?時間を遡る死に戻りってやつ?まさか神様が私の願いを叶えてくれて記憶を持ったままやり直しを……
いやいやいやいやいや、なんで王子に転生してるのぉ?!しかもこんな断罪中のギリギリに!!
「アレク王子様?あの女のせいで気分が悪くなったんですかぁ?」
私が混乱していると、ねっとりとした声でしなだれかかってくるヒロイン。幼い顔立ちのくせに胸だけは大きくて、その胸をぎゅむっと押し付けてきた。今までの王子はコレで誘惑されていたんだろうか。しかし今の私はこのヒロインの本性をよく知っている。
「うっ……!」
私は自分が死んだ瞬間に見た、忘れられないこの女のニヤついた醜悪な笑みを思い出して一気に気分が悪くなり……ヒロインのドレスに思いっきりゲロをぶちまけてしまったのだ。
「ギャーッ!なにするのよ?!信じらんない!」
ヒロインがドレスが汚れた事を怒って叫んでいる中、私は気が遠くなりその場に崩れ落ちた。最後に視界に入ったのは、ひたすら青ざめたまま私を見ている“私”で……なんだかそれが妙におかしかった。
目覚めると、多分王子の自室であろう部屋に寝かされていた。私の婚約者だったアレク王子はわがままでプライドばかり高い人だったが、部屋は意外とシンプルなようだ。婚約者時代は部屋になんか入ったことは無いし、そういえば妃教育が忙しくてヒロインの存在が目立つようになって来た頃には王子とマトモに会話をしたこともなかった。今から思えばそれもイベントのひとつだったのだろうか。
しばらくして扉がノックされると、筋肉バカ……騎士団長の息子で王子の側近候補のマーカーが鼻息を荒くしながら意気揚々と部屋に入ってくる。
まだ許可出してないんだけど……王子とはヒロインを奪い合うライバルでありヒロインを守る仲間みたいな感じだったからこれはいつもの事なのだろう。
「王子!具合いはどうですか?!ジュリアが心配していましたよ!いやぁ、ジュリアはやはり優しいですね!」
やたら大きな声に耳がキーンとする。筋肉バカなだけあって筋肉質なマーカーは声量も大きい。しかも倒れた王子の心配よりもヒロインとの惚気を始めるとはいい度胸だ。いやあのヒロイン、ドレスが汚れたって怒って王子を放って行っちゃったよね?!まぁ、私としては側にこられても嫌なんだけど。
「……あ、あぁ。それで、あの後はどうなったの……んだ?」
引きつりそうな表情筋を抑えて冷静に声を絞り出す。王子ってどんな話し方だったっけ?いつも拗ねるか怒っていたから普段の落ち着いた様子なんて想像もつかない。
多少声が上擦ってしまったが、マーカーは気にせず話を続けた。マーカーがおバカでよかった!
「それなら、あの悪役令嬢を牢屋に入れておきましたよ!やはり死刑判決は王子の口から言われた方がショックを与えられるだろうとお楽しみは取ってありますから!理由のわからないことを言って抵抗しましたが少しいたぶってやったら絶望した顔で大人しくしていますよ!」
「か弱い令嬢になにしてくれてんのよ!あんたみたいな筋肉バカに無理矢理引っ張られて痛かったんだから!女をいたぶって楽しむなんて悪趣味もいいところだわ!」
その途端、前言撤回だこのバカ!とばかりに断罪の時にやられた事を思い出し思わずマーカーの首根っこを掴みそうになって、はっ!と我に返る。さすがに変に思われたのかマーカーが首を傾げた。
「お、王子?やはりまだ具合いが悪いんですか?」
「ん、んんっ!いや、すまない。い、いくら罪人とはいえ女性の扱いは丁寧にしておかないといけないんじゃないかと思ったんだ。あんな女でも一応公爵令嬢だしな……。それに、卒業後に入る騎士団は紳士の集まりだと聞くじゃないか」
騎士団はこの国を守る矛と盾であり、弱者には優しくあれと叩き込まれるはずだ。妃教育で習った知識ではあるが王子ならそれくらい知っているだろう。しかしそんな騎士団の団長の息子がこんなだとは、絶対に子育て失敗してるよ騎士団長!と訴えたい気持ちになった。ゲームでプレイしている時はバカっぽいところが可愛いと人気だったキャラなのに現実は残酷だ。
「そ、そうですね!この断罪が上手くいけば王子からも推薦してもらえますし、俺の将来は安泰です!あの頑固親父が俺の入団は認めないってうるさいんで王子の力で黙らせてやって下さいよ!なんなら親父をクビにして俺が団長の座を継ぎますんで!」
ドヤ顔で親指を立てるマーカーに「は、ははは……」と曖昧な苦笑いを返しておいた。どうやら騎士団長はこの息子のダメさ加減に気付いているようだが、まさかマーカールートのハッピーエンドでマーカーが騎士団長の跡継ぎになるエピソードの裏でこんなやり取りがあったとは……この国終わってるな。
そんな事を思いつつ……、とにかく“私”に会わねばなるまいと足を踏み出すのだった。
華やかながらも厳粛であるべき学園の卒業パーティーでその茶番劇は開催されていた。
本来ならば皆にお祝いを述べられるべき卒業生達をパーティー会場の隅に追いやり、堂々と視線を集めているのは私の婚約者であるはずの第一王子だ。そしてその隣には顔も見たくないピンクの髪をした令嬢がひとり。それで隠しているつもりなのかと聞きたい程にニヤニヤと口元を歪めている。
「……婚約破棄ですか。理由をお伺いしても?」
「今更とぼけるとは往生際が悪いぞ!お前がジュリアに嫌がらせをしていたのはわかっているんだ!しかもこのジュリアは次代の聖女に選ばれた特別な存在……お前は国の宝である聖女を害した罪で死刑だ!」
「私は「問答無用だ!」なっ……?!」
私は反論する暇もなく聖女の取り巻きである騎士団長の息子や宰相の息子達に取り押さえられ無理矢理地下牢へと閉じ込められた。騎士団長の息子は筋肉バカで加減と言う言葉を知らないらしく掴まれた腕には手形のアザが出来ているし、宰相の息子に突き飛ばされたせいでところどころに擦り傷が出来てしまった。そしてそれをニヤニヤと見ていた王子と聖女の顔を思い出して吐き気がした。
そして、あっという間に私の死刑が実行され……断頭台のギロチンに固定された私の側に聖女がやって来てこう囁いたのだ。
「さようなら、悪役令嬢さん」と。
その時の醜悪な笑みを脳裏に焼き付けたまま、私の首は転がり落ちていったのだった。
「私!悪役令嬢だったんじゃん!!」
聖女……いや、ヒロインのあの言葉で私は思い出してしまった。あの世界が乙女ゲームの世界で私が悪役令嬢だったことを。まさか、死んだ瞬間に自分が転生者だと思い出すなんて……。
王子も騎士団長の息子も宰相の息子も、全員攻略対象者だったのだ。しかも悪役令嬢が断罪されて首ちょんぱエンドと言うことは逆ハーレムルートじゃないか!だって他のルートならせいぜい国外追放エンドとか平民落ちエンドだもの!
「そうとわかってればフラグへし折ったのに、まんまとヒロインをイジメちゃったわ。いや、でも殺される程酷いことなんてしてなくない?人の婚約者とイチャイチャしてたから忠告的な事を言っただけなのに……まぁ、ヒロインも転生者っぽかったしどのみち捏造されるかぁ……」
公爵令嬢なら絶対にしないだろう胡座をかいて、がっくりと肩を落とし大きなため息をついた。細かい事は思い出せないが前世の私はがさつな性格だったようだ。確か友達に「もっと乙女心を学ぶべき!」と参考書代わりに貸してもらった乙女ゲームだった。意外と面白くて全ルート制覇したけれど、ゲームを返す約束の日に友達の家に行く途中でトラックに────。
そこからの記憶は無い。だがその時の衝撃と痛みを想像しただけで背筋がブルッと震えた。
「はぁ……。前世では事故死して、転生したら首ちょんぱって私の人生どこまで最悪なのかしら。こうゆうのってせめて途中から前世を思い出して不幸を回避するものじゃないの?思い出すのが遅すぎよ!」
ついでに乙女心の代わりに二次創作を学んだこの乙女ゲームのおかげで転生物のWEB小説もちょこちょこ読んでいたのも思い出す。そういえば攻略対象者同士のなんちゃらも流行っていたのよね。ビジュアルが美形ばっかりだったから。
前世の自分の名前は思い出せないのに、乙女ゲーム関連の情報ばかりが脳内を巡る。だから、今更遅いってば!
もしこれらの情報を生きているうちに思い出していれば、死刑エンドだけでも回避出来たかもしれないのに……そう考えたら叫ばずにはいられなかった。
「せめてもう一度やり直させてよーっ!ヒロインばっかり優遇して……神様のケチ!バカ!デベソ!!」
半泣きになりながらいるかどうかもわからない神様に向かって悪態をつき、私の意識はプツリと途絶えた。
今度こそ完全な死が来るのだと、怯えながら────。
***
次に目が覚めた瞬間、私は確かに叫んでいたのだ。
「ルティア・シューレクト公爵令嬢、僕はお前との婚約をは────??!」
私は自分の置かれている状況がわからず思わず手で口を押さえた。そして目の前にいる人物の姿に目を見開き驚くしかなかった。
鮮やかな赤い髪と、少しつり上がった赤い瞳。だがいつものように毅然とした表情ではなく、青ざめながら「??!」みたいな顔をしている私がそこにいたのだ。
私と“私”がお互いを指差して「「??!」」としていると、真横からなんだか甘ったるい声が聞こえてくる。
「王子様ぁ、どうしたのぉ?早くあの人と婚約破棄してあたしと結婚してくれるんでしょぉ?」
私はその声の方向に恐る恐る視線を動かした。
「!!」
なんと私は憎きピンク頭……ヒロインの腰をその手で抱き締めてしたのだ。
もしかして、私……王子になっちゃってる?!
しかもこの場面は私が問答無用で断罪されたあのシーンだ。え、これってWEB小説でよくあるループ?時間を遡る死に戻りってやつ?まさか神様が私の願いを叶えてくれて記憶を持ったままやり直しを……
いやいやいやいやいや、なんで王子に転生してるのぉ?!しかもこんな断罪中のギリギリに!!
「アレク王子様?あの女のせいで気分が悪くなったんですかぁ?」
私が混乱していると、ねっとりとした声でしなだれかかってくるヒロイン。幼い顔立ちのくせに胸だけは大きくて、その胸をぎゅむっと押し付けてきた。今までの王子はコレで誘惑されていたんだろうか。しかし今の私はこのヒロインの本性をよく知っている。
「うっ……!」
私は自分が死んだ瞬間に見た、忘れられないこの女のニヤついた醜悪な笑みを思い出して一気に気分が悪くなり……ヒロインのドレスに思いっきりゲロをぶちまけてしまったのだ。
「ギャーッ!なにするのよ?!信じらんない!」
ヒロインがドレスが汚れた事を怒って叫んでいる中、私は気が遠くなりその場に崩れ落ちた。最後に視界に入ったのは、ひたすら青ざめたまま私を見ている“私”で……なんだかそれが妙におかしかった。
目覚めると、多分王子の自室であろう部屋に寝かされていた。私の婚約者だったアレク王子はわがままでプライドばかり高い人だったが、部屋は意外とシンプルなようだ。婚約者時代は部屋になんか入ったことは無いし、そういえば妃教育が忙しくてヒロインの存在が目立つようになって来た頃には王子とマトモに会話をしたこともなかった。今から思えばそれもイベントのひとつだったのだろうか。
しばらくして扉がノックされると、筋肉バカ……騎士団長の息子で王子の側近候補のマーカーが鼻息を荒くしながら意気揚々と部屋に入ってくる。
まだ許可出してないんだけど……王子とはヒロインを奪い合うライバルでありヒロインを守る仲間みたいな感じだったからこれはいつもの事なのだろう。
「王子!具合いはどうですか?!ジュリアが心配していましたよ!いやぁ、ジュリアはやはり優しいですね!」
やたら大きな声に耳がキーンとする。筋肉バカなだけあって筋肉質なマーカーは声量も大きい。しかも倒れた王子の心配よりもヒロインとの惚気を始めるとはいい度胸だ。いやあのヒロイン、ドレスが汚れたって怒って王子を放って行っちゃったよね?!まぁ、私としては側にこられても嫌なんだけど。
「……あ、あぁ。それで、あの後はどうなったの……んだ?」
引きつりそうな表情筋を抑えて冷静に声を絞り出す。王子ってどんな話し方だったっけ?いつも拗ねるか怒っていたから普段の落ち着いた様子なんて想像もつかない。
多少声が上擦ってしまったが、マーカーは気にせず話を続けた。マーカーがおバカでよかった!
「それなら、あの悪役令嬢を牢屋に入れておきましたよ!やはり死刑判決は王子の口から言われた方がショックを与えられるだろうとお楽しみは取ってありますから!理由のわからないことを言って抵抗しましたが少しいたぶってやったら絶望した顔で大人しくしていますよ!」
「か弱い令嬢になにしてくれてんのよ!あんたみたいな筋肉バカに無理矢理引っ張られて痛かったんだから!女をいたぶって楽しむなんて悪趣味もいいところだわ!」
その途端、前言撤回だこのバカ!とばかりに断罪の時にやられた事を思い出し思わずマーカーの首根っこを掴みそうになって、はっ!と我に返る。さすがに変に思われたのかマーカーが首を傾げた。
「お、王子?やはりまだ具合いが悪いんですか?」
「ん、んんっ!いや、すまない。い、いくら罪人とはいえ女性の扱いは丁寧にしておかないといけないんじゃないかと思ったんだ。あんな女でも一応公爵令嬢だしな……。それに、卒業後に入る騎士団は紳士の集まりだと聞くじゃないか」
騎士団はこの国を守る矛と盾であり、弱者には優しくあれと叩き込まれるはずだ。妃教育で習った知識ではあるが王子ならそれくらい知っているだろう。しかしそんな騎士団の団長の息子がこんなだとは、絶対に子育て失敗してるよ騎士団長!と訴えたい気持ちになった。ゲームでプレイしている時はバカっぽいところが可愛いと人気だったキャラなのに現実は残酷だ。
「そ、そうですね!この断罪が上手くいけば王子からも推薦してもらえますし、俺の将来は安泰です!あの頑固親父が俺の入団は認めないってうるさいんで王子の力で黙らせてやって下さいよ!なんなら親父をクビにして俺が団長の座を継ぎますんで!」
ドヤ顔で親指を立てるマーカーに「は、ははは……」と曖昧な苦笑いを返しておいた。どうやら騎士団長はこの息子のダメさ加減に気付いているようだが、まさかマーカールートのハッピーエンドでマーカーが騎士団長の跡継ぎになるエピソードの裏でこんなやり取りがあったとは……この国終わってるな。
そんな事を思いつつ……、とにかく“私”に会わねばなるまいと足を踏み出すのだった。
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