上 下
32 / 45

この旅は終焉を迎えたようだ

しおりを挟む
「え?あぁ、それならたぶん作れるよ。要はそれぞれの魔力を制御して扱えるようにすればいいんだろう?別にわざわざ自分の体に溜めるなんて危険な事しなくても貯蔵庫的な物を作ってあーしてこーしてこうすれば……。よし、じゃあその聖女がいるっていう学園にボクを連れていってよ」





 錬金術師さんから「この人は規格外だから」と教えられて私の事情を全て話すことにした。ループや賢者については信じてもらえないかも。と思ったのだが、なぜか大爆笑しながら「君、サイコーだね!」と大喜びしだし「もちろん信じるよ。弟子が迷惑かけたようだし、是非協力させてもらうよ。ボクは巻き込まれるのは嫌いだけど、巻き込まれに行くのは別腹さ」と、とにかく楽しそうだった。そして最終的に雷の耐性をつけたくて錬金術師を探していた事を話すと、「うーん、そうだねぇ……」と指で頬をグリグリと押しながらブツブツいいだしたかと思ったら急にピン!と指を立てて先程の言葉を口にしたのだ。





「学園ですか?でも……」

 私は思わず戸惑ってしまう。望みの物を作って貰えるかもしれないと希望の光を見たものの、今は“押して駄目なら引いてみろ”作戦の為に殿下から離れるべく旅に出ているのだ。そして出来れば先に雷の耐性を手に入れたいとも思う。この作戦か上手く行けば学園に戻ってすぐに殿下と婚約からの婚約破棄となり断罪劇を迎える予定だからだ。ここまで頑張ったのに結局雷に撃たれて死んでしまったら残念過ぎる。

 言葉に詰まる私にユーキさんは肩を竦めた。

「だって君、まずはその王子と婚約したいんだろう?そのなんとかって作戦が上手く行ってるのかどうかを確認しなくていいのかい?ボクはこの世界の貴族の事は詳しくは知らないけど、婚約してからの婚約破棄がどれだけ大変かは知ってるつもりだよ。特に王家が関わるとね。どのみち婚約したらそんなすぐにはどうこうならないさ。それに、君が望む物を作るための材料がその学園にあるんだから行くしかないだろう?」

「えっ!?」

「またこのヒトは……。なんでその材料がそんな所にあるってわかるんだよ?やっぱり規格外だ」

 私が驚き、錬金術師さんがため息をつくと、ユーキさんはニヤッと笑いながら重そうな眼鏡を指で押し上げた。

「フッフフフ……。まぁ、ボクに任せなって!」

 頼もしいような、不安なような……。

 腰に手を当てて軽快に笑うユーキさんの姿に複雑な思いを抱きつつ、私は学園に戻ることになった。




 というか、ユーキさんって男の人?いや、やっぱり女の人……?とにかく謎に包まれた人なのは確かである。

 それにしても、旅も終わりかぁ。殿下の事は気になりつつも旅が終わるのは少しだけ寂しいかも。そんな感情を隠しながら私はアンバーを抱き締めたのだった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】悪役令嬢とおねぇ執事

As-me.com
恋愛
完結しました。 セリィナは幼いときに暴漢に襲われたショックで、前世の記憶を思い出す。 なんとセリィナは乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたのだ! ヒロインが現れる未来では、回りの人間は家族すらも全部がセリィナの敵!このままでは信じていた家族に見捨てられ殺されてしまう……。セリィナは人間不信になってしまった。 唯一平気なのはセリィナの専属執事ライルだけ……。ゲームには存在しないはずのライルは、おねぇだけどセリィナにとっては大切な人になっていく。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

めぐめぐ
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑)

処理中です...