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その勝負に待ったなし
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「どうしよう……」
私はとても悩んでいた。そう、たぶんここ最近で1番悩んでいたのだが……。そんな悩みをぶった斬るように私の目の前で小さな影が素早い動きを見せたのだ。
『ちぇっくめいとでしゅ!』
「また負けたぁ……!フラムったら強すぎるわ!」
フラムとチェスで対戦して五連敗中だった。
***
怪しい黒マント男からアンバーとフラムを救出したあと、その気絶した黒マント男をどうしたものかと考えていた時だった。
「あっ……!?」
なんと黒マント男の体がズブズブと地面に……いや、いつの間にかその場にあった水溜まりに沈んでいった。
ちゃぷん。と静かな音を立てて黒マントがいなくなると、今度は『ぴぎぃ』とアンバーがその水溜まりに飛び込んでしまったのだ。
「アンバーまで……。もう、これって絶対にベクターの仕業よね!なにを企んでいるのかしら?」
あの女の人たちにフルボッコにされてると思っていたのに、まさか私に黙ってこんなイタズラ(?)をしでかした上に可愛いアンバーまで巻き込むなんて……。
すぅ……っと、頭の芯が冷えてくる。成り行きで一緒に旅をすることにはしたが、私にとってアンバーとフラムの方が大切なのだ。もしもアンバーを危ない目に合わせる気なら……。
「人魚の干物にしてやる……『それだけはやめてくださいぃぃぃぃぃ!!』あ、ベクター!ちょっとアンバーをどこにやったの?!ついでに黒マント男も!」
なにやら必死の形相で水溜まりから飛び出してきたのは人魚の姿に戻ったベクターだった。なにを焦ったように青ざめているのか。
『賢者様から不穏なオーラを感じまして……勝手なことをしたのは謝りますが、この美しいワタクシを干物なんてそんな罪深い……干乾びてしわしになるのは嫌でございます!!』
ならば新鮮な刺し身ならいいのだろうか?ピッチピチのベクターの活造り……は、なんか喜びそうだからそれはそれで嫌かもしれない。
「はぁ……。とりあえず、なにをしているのかちゃんと説明を『では賢者様、こちらをどうぞ!!』へ?」
そう言って渡されたのはチェスのセットだ。駒は透明な水色でとても綺麗だが、なぜ今この場でチェスなのか。
『これはワタクシの魔力で作った特別製のチェスでございます!是非このチェスでフラム様とご遊戯を楽しんでください!ちなみにフラム様に1回でも勝たれたらワタクシの負けを認めて降参致しますので今はお許しくださいーーーーっ』ぽちゃん!
「へ?え、あ……行っちゃった」
ベクターはものすごい勢いでチェスのセットを私に押し付けると、またもやものすごい勢いで水溜まりに飛び込んでしまったのだ。
うーん、なにをそんなに焦っているのかしら?私だって本気でベクターがアンバーに何かしようとしてるなんて思ってないけど(干物にはしてやろうと思ったが)まさかこんなに必死に隠そうとするなんて怪しい……。
「ねぇ、フラム。やっぱりベクターってば怪しくない?今から例の洞窟に行ってみようかしら」
チェスの駒を摘みながらそう言うとフラムは目をキラキラとさせて、ふんす。と鼻息を荒くした。
『ぼくはちぇすをやってみたいでしゅ!おしえてほしいでしゅ!』
「え、そうなの?」
尻尾を振りながらおねだりされ簡単なルールを教えると、フラムはあっという間に覚えてしまい……私に圧勝しているのだ。
ベクターは言った。『……ちなみにフラム様に1回でも勝たれたらワタクシの負けを認めて降参致しますので今はお許しくださいーーーーっ』と。
つまり、私がフラムにチェスで勝てばベクターはこの企みを包み隠さず話すということなのだろうが……拙い手付きで駒を動かしながらも容赦なく私の駒を追い込むフラムが強すぎて全く勝てそうにないのだった。
私はとても悩んでいた。そう、たぶんここ最近で1番悩んでいたのだが……。そんな悩みをぶった斬るように私の目の前で小さな影が素早い動きを見せたのだ。
『ちぇっくめいとでしゅ!』
「また負けたぁ……!フラムったら強すぎるわ!」
フラムとチェスで対戦して五連敗中だった。
***
怪しい黒マント男からアンバーとフラムを救出したあと、その気絶した黒マント男をどうしたものかと考えていた時だった。
「あっ……!?」
なんと黒マント男の体がズブズブと地面に……いや、いつの間にかその場にあった水溜まりに沈んでいった。
ちゃぷん。と静かな音を立てて黒マントがいなくなると、今度は『ぴぎぃ』とアンバーがその水溜まりに飛び込んでしまったのだ。
「アンバーまで……。もう、これって絶対にベクターの仕業よね!なにを企んでいるのかしら?」
あの女の人たちにフルボッコにされてると思っていたのに、まさか私に黙ってこんなイタズラ(?)をしでかした上に可愛いアンバーまで巻き込むなんて……。
すぅ……っと、頭の芯が冷えてくる。成り行きで一緒に旅をすることにはしたが、私にとってアンバーとフラムの方が大切なのだ。もしもアンバーを危ない目に合わせる気なら……。
「人魚の干物にしてやる……『それだけはやめてくださいぃぃぃぃぃ!!』あ、ベクター!ちょっとアンバーをどこにやったの?!ついでに黒マント男も!」
なにやら必死の形相で水溜まりから飛び出してきたのは人魚の姿に戻ったベクターだった。なにを焦ったように青ざめているのか。
『賢者様から不穏なオーラを感じまして……勝手なことをしたのは謝りますが、この美しいワタクシを干物なんてそんな罪深い……干乾びてしわしになるのは嫌でございます!!』
ならば新鮮な刺し身ならいいのだろうか?ピッチピチのベクターの活造り……は、なんか喜びそうだからそれはそれで嫌かもしれない。
「はぁ……。とりあえず、なにをしているのかちゃんと説明を『では賢者様、こちらをどうぞ!!』へ?」
そう言って渡されたのはチェスのセットだ。駒は透明な水色でとても綺麗だが、なぜ今この場でチェスなのか。
『これはワタクシの魔力で作った特別製のチェスでございます!是非このチェスでフラム様とご遊戯を楽しんでください!ちなみにフラム様に1回でも勝たれたらワタクシの負けを認めて降参致しますので今はお許しくださいーーーーっ』ぽちゃん!
「へ?え、あ……行っちゃった」
ベクターはものすごい勢いでチェスのセットを私に押し付けると、またもやものすごい勢いで水溜まりに飛び込んでしまったのだ。
うーん、なにをそんなに焦っているのかしら?私だって本気でベクターがアンバーに何かしようとしてるなんて思ってないけど(干物にはしてやろうと思ったが)まさかこんなに必死に隠そうとするなんて怪しい……。
「ねぇ、フラム。やっぱりベクターってば怪しくない?今から例の洞窟に行ってみようかしら」
チェスの駒を摘みながらそう言うとフラムは目をキラキラとさせて、ふんす。と鼻息を荒くした。
『ぼくはちぇすをやってみたいでしゅ!おしえてほしいでしゅ!』
「え、そうなの?」
尻尾を振りながらおねだりされ簡単なルールを教えると、フラムはあっという間に覚えてしまい……私に圧勝しているのだ。
ベクターは言った。『……ちなみにフラム様に1回でも勝たれたらワタクシの負けを認めて降参致しますので今はお許しくださいーーーーっ』と。
つまり、私がフラムにチェスで勝てばベクターはこの企みを包み隠さず話すということなのだろうが……拙い手付きで駒を動かしながらも容赦なく私の駒を追い込むフラムが強すぎて全く勝てそうにないのだった。
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