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45:悪役令嬢と囚われ部屋

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「俺に服従する気になったら言え。ラインハルトの居場所を教えればお前は自由だぞ?」

    あの男はそう言い放ち私の手足に手錠を嵌めて自由を奪ったまま窓を潰したうす暗い部屋に押し込んだ。

「私はそんなの知らないし、もしも知っていても絶対に教えないわ!服従なんかしない!」

    猿轡を外されたばかりの口でそう言ってやれば、赤い髪の男……ルネス国王はふんと鼻で笑って立ち去っていったのだった。




「いたっ……」

    頬の傷がズキリと痛み、思わず手を動かして頬に触れようとするとガチッと手錠が音を立てた。

    一旦血は止まっているようたが傷口はズキズキと悲鳴をあげている。指先でそっと触れればぬるりとした感触がしてその指先は赤く染まっていた。

「……髪もズタズタだし、頬には大きな傷。これで正真正銘のキズモノ令嬢ね」

    あの男がライルの父親。そしてユイバール国のルネス国王だと知った。どうやら私を捕まえればライルが自分の言うことを聞くと思っているようである。

    馬鹿だなぁ。と思う。ライルに言うことを聞かせたいのなら私ではなくさっきまで側にいたヒロインを使うべきだったのに。ヒロインはシークレットキャラクターであるライルの唯一の弱点なのだから。

    でも逆に言えば勘違いをして私を拐ってきたのだから良かったのかもしれない。あの部屋に消えたヒロインも心配だが、彼女はこの世界のヒロインなのだからきっと大丈夫なはずだ。

    それに。と、ヒロインが言った言葉や態度を思い出す。彼女はライルが自分と結ばれる存在だとは気付いていないようにも思えた。

「やっぱり私は悪役令嬢ね。……ふたりがまだ惹かれ合っていないってわかってこんなに嬉しいなんて」

    でも、きっとそれも時間の問題だ。どのみち私はキズモノの悪役令嬢なのだから。

「ふっぅぅ……」

    ライルの事を思い出した途端に喉の奥と目頭が熱くなり、涙がボロボロと零れた。

    これは罰なんだ。私がライルを好きになってしまったから。しかもライルにも私を好きになって欲しいなんて思ったりしたから。きっとこのまま監禁され、役に立たないとわかったら殺されてしまう。これが悪役令嬢に課せられた断罪。

    でも、それでも。やっぱり最後にライルに会いたい。殺されるならライルに殺されたい気持ちは変わらない。

    このままルネス王に殺されてやるつもりはないわ。

    袖で擦るように涙を拭い、私は顔を上にあげた。













    あれから何時間経っただろうか?

    部屋の中を色々と調べたがやっぱり武器になりそうなものはなかった。薄い毛布が1枚に、淡く光るランプがひとつ。潰された窓は隙間なく埋められている。扉の下の部分には小さなドアがあったが、たぶん囚人に食事を与えるためのものだろう。

    ふと、そのドアが気になった。

    すると、コツン。と、音を立てて小さなドアが軽く揺れる。留め金もないそれは振り子のように動いていた。

コツン。コツン。コツン……。

    何度もなにかが中音がしてゆらゆらと扉が揺れ……ピタリとその動きを止める。パカリと口を開けたそこから外の光が見えたが、すぐにその光が遮られる事になる。




「ーーーーっ!」




    そこからは、床に顔を押し付け大きく見開いた碧眼が私をギョロリと見ていた。


















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