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34:チャンスはやってくる(ヒロイン視点)
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その日は酷く蒸し暑い夜だった。
わたしが幽閉されている牢は半地下のはずだったが窓が全部塞がれていて空気も悪い。わずかに漏れる月の光だけが唯一の灯りだった。
「あぁ、もう……!なんでわたしがこんな目に……!」
一体いつまでここにいなければいけないんだろうか。罪人だとは言われてもよくよく考えればわたしは何も悪くないのだ。
悪いのは、わたしを騙したあの元侍女とこの計画を立てた王子なのだから。それなのに全部わたしが罪を被るなんてこんな不公平なことあっていいはずがない。
もう公爵令嬢にもなれないし、王子の婚約者にもなれないならせめて男爵家に戻ってやり直すしかない。本当の両親のことはもうバレているかもしれないが男爵家の母親はわたしを溺愛しているから受け入れてくれるはずだ。
それに他のわたしにまとわりついていた男たちも王子程とまではいかなくてもそれなりの地位はあるし適当に相手をしてやればなんとかなるだろう。
兵士たちが食事を持ってくるときに噂していた他の国の王様にも興味がある。どうやら用事があって、今この城にいるというではないか。おじさんの相手なんてお断りだと思っていたがそれなりに美形らしいし、なにより王様なら例え愛人でもいい暮らしをさせてくれそうである。
とにかくここから出たいのだ。そのためなら自分の武器はなんでも使ってやる。大丈夫、わたしは魅力的な女だ。中年のおやじくらい簡単に籠絡できるわ。
わたしにはなぜか自信があった。どんな男もわたしを見れば絶対に自分のものにしたくなるはずだと。だって今までがそうだったから。
必ずチャンスはやって来る。
だからわたしは、そのチャンスを作るために見張りの兵士を誘惑した。
いつもわたしのことをいやらしい目で見てくるその兵士はいとも簡単に釣られてくれた。
服を1枚づつ脱ぐ単純なストリップショーだが声も顔も、恥ずかしさに身悶えしながらも欲求に逆らえない純真で妖艶な女を演じて見せる。王子たちの前ではいつもやっていたから慣れたものだ。男なんて単純だから、こうやってやればすぐに餌に飢えた犬のようになるのだ。
ほら、鍵を開けたーーーー。
「面白いことをやってるな」
見張りの男は鍵を開けた直後、胸に穴を開け口から血を吹き出した。男の胸の穴からは誰かの手が生えてきていて、別の生き物のように指を動かしている。
ずるり……と手が抜かれると、男の体は噴水のように血を撒き散らしてその場に崩れ落ちた。
「……ひぁっ…………!」
赤く染まった物体となったその男の後ろから現れたのは、赤い髪と紫の瞳をした怖いくらいに美しい男だった。
「……お前が男爵令嬢だな。なかなか男を操るのが上手いじゃないか。まぁ、こんな浅はかな手に引っ掛かる程度の男しか相手にしたことなどないのだろうがな」
「あ、あなた、なに……誰……。その赤い髪……。あなたの事、どこかで見たような……」
血にまみれたその姿が、ひたすら恐ろしく美しいと感じてしまった。そして誰かに似ていると。
「そうだわ、いつもセリィナの隣にいたあの男に……」
肌や髪の色の濃さと言う違いがなければそっくりだ。
「お前が俺に協力するのならばここから出してやろう」
「えっ」
真っ赤に染まった手が鍵の開いた扉の隙間からわたしに伸びてきた。
これは危険信号だ。頭の中の何かがこの男は危険だと知らせている。
でもわたしは迷いなくその手を取った。
だってこれはチャンスだ。
間違いなく最後のチャンスがやってきたのだと、わたしの本能が危険信号を消し去り告げたのだ。
わたしが幽閉されている牢は半地下のはずだったが窓が全部塞がれていて空気も悪い。わずかに漏れる月の光だけが唯一の灯りだった。
「あぁ、もう……!なんでわたしがこんな目に……!」
一体いつまでここにいなければいけないんだろうか。罪人だとは言われてもよくよく考えればわたしは何も悪くないのだ。
悪いのは、わたしを騙したあの元侍女とこの計画を立てた王子なのだから。それなのに全部わたしが罪を被るなんてこんな不公平なことあっていいはずがない。
もう公爵令嬢にもなれないし、王子の婚約者にもなれないならせめて男爵家に戻ってやり直すしかない。本当の両親のことはもうバレているかもしれないが男爵家の母親はわたしを溺愛しているから受け入れてくれるはずだ。
それに他のわたしにまとわりついていた男たちも王子程とまではいかなくてもそれなりの地位はあるし適当に相手をしてやればなんとかなるだろう。
兵士たちが食事を持ってくるときに噂していた他の国の王様にも興味がある。どうやら用事があって、今この城にいるというではないか。おじさんの相手なんてお断りだと思っていたがそれなりに美形らしいし、なにより王様なら例え愛人でもいい暮らしをさせてくれそうである。
とにかくここから出たいのだ。そのためなら自分の武器はなんでも使ってやる。大丈夫、わたしは魅力的な女だ。中年のおやじくらい簡単に籠絡できるわ。
わたしにはなぜか自信があった。どんな男もわたしを見れば絶対に自分のものにしたくなるはずだと。だって今までがそうだったから。
必ずチャンスはやって来る。
だからわたしは、そのチャンスを作るために見張りの兵士を誘惑した。
いつもわたしのことをいやらしい目で見てくるその兵士はいとも簡単に釣られてくれた。
服を1枚づつ脱ぐ単純なストリップショーだが声も顔も、恥ずかしさに身悶えしながらも欲求に逆らえない純真で妖艶な女を演じて見せる。王子たちの前ではいつもやっていたから慣れたものだ。男なんて単純だから、こうやってやればすぐに餌に飢えた犬のようになるのだ。
ほら、鍵を開けたーーーー。
「面白いことをやってるな」
見張りの男は鍵を開けた直後、胸に穴を開け口から血を吹き出した。男の胸の穴からは誰かの手が生えてきていて、別の生き物のように指を動かしている。
ずるり……と手が抜かれると、男の体は噴水のように血を撒き散らしてその場に崩れ落ちた。
「……ひぁっ…………!」
赤く染まった物体となったその男の後ろから現れたのは、赤い髪と紫の瞳をした怖いくらいに美しい男だった。
「……お前が男爵令嬢だな。なかなか男を操るのが上手いじゃないか。まぁ、こんな浅はかな手に引っ掛かる程度の男しか相手にしたことなどないのだろうがな」
「あ、あなた、なに……誰……。その赤い髪……。あなたの事、どこかで見たような……」
血にまみれたその姿が、ひたすら恐ろしく美しいと感じてしまった。そして誰かに似ていると。
「そうだわ、いつもセリィナの隣にいたあの男に……」
肌や髪の色の濃さと言う違いがなければそっくりだ。
「お前が俺に協力するのならばここから出してやろう」
「えっ」
真っ赤に染まった手が鍵の開いた扉の隙間からわたしに伸びてきた。
これは危険信号だ。頭の中の何かがこの男は危険だと知らせている。
でもわたしは迷いなくその手を取った。
だってこれはチャンスだ。
間違いなく最後のチャンスがやってきたのだと、わたしの本能が危険信号を消し去り告げたのだ。
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