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③戸惑いながらも自覚して
しおりを挟む あぁ、なんかモヤモヤする。
私はこのままコリンに会う気になれず、約束をすっぽかして帰ることにした。
***
「姉上、今日なんかあった?」
「んへっ……?!ル、ルディったら……なにを根拠にそんなこと……」
疑いの眼で私をじっとりと見てくる弟の視線が痛い。
「え、えーと、昼間の事なら急用が出来てそれであれで……ご、ごめんね!」
「急用ねぇ……。ちなみに俺に言わないなら次はコリンが来るよ?昼間ガゼボに姉上がいなかったから学園中に聞き込みに回ってたし、まさか悪い男に捕まったんじゃとか顔面蒼白で言い出すから大変だったんだ。父上まで巻き込もうとするからさすがに止めたけど」
やれやれと肩を竦める弟に申し訳なさでいっぱいになる。父様はなんというか……(特に私に対して)かなりの過保護なのだ。
「父上にそんなこと言ったら、国から男という生物が全て消えるよ」
「まさか、いくらなんでもそこまで……」
「ほんとに?」
さすがに規模が大きすぎると、笑い飛ばそうとしたがルディは真剣な眼差しで私に詰め寄った。
「ル、ルディ……」
「ほんとにそう思う?大袈裟だって?
昔、母上と父上が珍しく夫婦喧嘩して母上がプチ家出した時に王家に乗り込んで母上の行き先を隠密に探させた父上だよ?
しかも仲直りしたその後、母上が家出と称したショッピングをしてた先でナンパされたって冗談で言ったらそのナンパ男共に暗殺者を放とうとした父上だよ?あの人、母上に関する事柄は冗談通じないから。
さらに言えば、母上と今は亡きルーナおばあさまにそっくりだと言われる姉上を溺愛している父上だよ?
公爵当主なのに(しかも入婿)、なぜか王家を自由がままに操る父上だよ?母上の事を崇拝している女王となんか知らないけど結託している父上だよ……?」
父様がたまに規格外なことをするのは我が家では周知の事実だ。だいたい母様は元々領民たちに好かれているし、たまに下町に出て昔働いていたとか言うお店(昔は酒場だったそうだが、今はランチの美味しい定食屋さんになった)に顔を出して世間話に華を咲かせる親しみやすい公爵夫人である。今さら母様をナンパしてどうこうしようなんて人はこの街にはいないと思うのだが……。あぁ、そう言えば「旅行客はロティーナが既婚かどうかわからないかもしれない!」と叫んでいたっけ。よくよく考えれば母様もレベッカおばさまと並ぶ美魔女だったわ。子供を2人産んでいてさらに成人した娘がいるなんて信じられないくらいだ。母様の少女時代の姿絵を見たことがあるけれど、今は美しさはそのままに大人の色気を足したような感じである。まぁ、父様も年齢を感じさせない感じなのだが……とにかく心配症の過保護なのだ。
ちなみに女王であるメルローズ様はうちの母様至上主義である。
「言っとくけど、父上が暴走しても俺は無関係だから。姉上がなんとかしてよね」
“父様が何かしても知りません”とそっぽを向かれました。弟が冷たい!
「み、見捨てないでルディ!全部言うから~っ!」
私は有りうるかもしれない最悪の想定にゾッとして弟に昼間あったことをすべて白状したのだった。
***
昼間の出来事……謎の美少女の事を洗いざらい吐かされ、さらにその事に妙にモヤモヤしてしまった事まで白状させられた。恥ずかしい。
「その令嬢って……あぁ、知ってる。確かコリンと街に出てる時に会った子だよ。侍女とはぐれて迷子になってたからコリンと一緒に探してあげたんだ。なるほど、その時にコリンに一目惚れした訳だ。
……それにしても強気な令嬢だね?まさか姉上にライバル宣言するなんて」
「……ライバル宣言っていうか……私みたいなおばさんはお呼びじゃないみたいな……。
ねぇ、ルディ。……私くらいな年齢になったら、やっぱり年増って言うか、おばさんってなるのかしら……」
私はモヤモヤしている原因を弟にぶつけた。別に自分が若くて美しいとかなんて思ってないけど、年下の令嬢からこうも攻撃的に言われれば気になるのが女心と言うものだ。
「俺は……って言うか、それって俺に聞いてるの?それともコリンに聞きたいの?」
「なっ……!いや、別にそんなんじゃ……!」
コリンは関係無い……ことは無いけど。
「……私が、コリンに付きまとっているって噂を……聞いてしまって。私みたいな年増がコリンの側にいると、コリンに迷惑が……」
そこまで言ってポロリと涙が溢れる。
あれ?私ったら、なんで泣いているんだろう?ただ、もしもコリンが私の存在を疎ましく思っていたら申し訳無いというか、ごめんなさいみたいな……。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらポロポロと泣き出す私を見てルディは大きなため息をついた。
「ねぇ、姉上」
「え?」
「姉上は……コリンが好きなの?」
“コリンが好きなの?”
一瞬、頭が真っ白になって……過去の幼い頃のコリンとの思い出がフラッシュバックして……。昔、コリンに告白された時の事を思い出した。
「好き。なのかも……?」
と、思わず口をついて出てしまったのだった。
私はこのままコリンに会う気になれず、約束をすっぽかして帰ることにした。
***
「姉上、今日なんかあった?」
「んへっ……?!ル、ルディったら……なにを根拠にそんなこと……」
疑いの眼で私をじっとりと見てくる弟の視線が痛い。
「え、えーと、昼間の事なら急用が出来てそれであれで……ご、ごめんね!」
「急用ねぇ……。ちなみに俺に言わないなら次はコリンが来るよ?昼間ガゼボに姉上がいなかったから学園中に聞き込みに回ってたし、まさか悪い男に捕まったんじゃとか顔面蒼白で言い出すから大変だったんだ。父上まで巻き込もうとするからさすがに止めたけど」
やれやれと肩を竦める弟に申し訳なさでいっぱいになる。父様はなんというか……(特に私に対して)かなりの過保護なのだ。
「父上にそんなこと言ったら、国から男という生物が全て消えるよ」
「まさか、いくらなんでもそこまで……」
「ほんとに?」
さすがに規模が大きすぎると、笑い飛ばそうとしたがルディは真剣な眼差しで私に詰め寄った。
「ル、ルディ……」
「ほんとにそう思う?大袈裟だって?
昔、母上と父上が珍しく夫婦喧嘩して母上がプチ家出した時に王家に乗り込んで母上の行き先を隠密に探させた父上だよ?
しかも仲直りしたその後、母上が家出と称したショッピングをしてた先でナンパされたって冗談で言ったらそのナンパ男共に暗殺者を放とうとした父上だよ?あの人、母上に関する事柄は冗談通じないから。
さらに言えば、母上と今は亡きルーナおばあさまにそっくりだと言われる姉上を溺愛している父上だよ?
公爵当主なのに(しかも入婿)、なぜか王家を自由がままに操る父上だよ?母上の事を崇拝している女王となんか知らないけど結託している父上だよ……?」
父様がたまに規格外なことをするのは我が家では周知の事実だ。だいたい母様は元々領民たちに好かれているし、たまに下町に出て昔働いていたとか言うお店(昔は酒場だったそうだが、今はランチの美味しい定食屋さんになった)に顔を出して世間話に華を咲かせる親しみやすい公爵夫人である。今さら母様をナンパしてどうこうしようなんて人はこの街にはいないと思うのだが……。あぁ、そう言えば「旅行客はロティーナが既婚かどうかわからないかもしれない!」と叫んでいたっけ。よくよく考えれば母様もレベッカおばさまと並ぶ美魔女だったわ。子供を2人産んでいてさらに成人した娘がいるなんて信じられないくらいだ。母様の少女時代の姿絵を見たことがあるけれど、今は美しさはそのままに大人の色気を足したような感じである。まぁ、父様も年齢を感じさせない感じなのだが……とにかく心配症の過保護なのだ。
ちなみに女王であるメルローズ様はうちの母様至上主義である。
「言っとくけど、父上が暴走しても俺は無関係だから。姉上がなんとかしてよね」
“父様が何かしても知りません”とそっぽを向かれました。弟が冷たい!
「み、見捨てないでルディ!全部言うから~っ!」
私は有りうるかもしれない最悪の想定にゾッとして弟に昼間あったことをすべて白状したのだった。
***
昼間の出来事……謎の美少女の事を洗いざらい吐かされ、さらにその事に妙にモヤモヤしてしまった事まで白状させられた。恥ずかしい。
「その令嬢って……あぁ、知ってる。確かコリンと街に出てる時に会った子だよ。侍女とはぐれて迷子になってたからコリンと一緒に探してあげたんだ。なるほど、その時にコリンに一目惚れした訳だ。
……それにしても強気な令嬢だね?まさか姉上にライバル宣言するなんて」
「……ライバル宣言っていうか……私みたいなおばさんはお呼びじゃないみたいな……。
ねぇ、ルディ。……私くらいな年齢になったら、やっぱり年増って言うか、おばさんってなるのかしら……」
私はモヤモヤしている原因を弟にぶつけた。別に自分が若くて美しいとかなんて思ってないけど、年下の令嬢からこうも攻撃的に言われれば気になるのが女心と言うものだ。
「俺は……って言うか、それって俺に聞いてるの?それともコリンに聞きたいの?」
「なっ……!いや、別にそんなんじゃ……!」
コリンは関係無い……ことは無いけど。
「……私が、コリンに付きまとっているって噂を……聞いてしまって。私みたいな年増がコリンの側にいると、コリンに迷惑が……」
そこまで言ってポロリと涙が溢れる。
あれ?私ったら、なんで泣いているんだろう?ただ、もしもコリンが私の存在を疎ましく思っていたら申し訳無いというか、ごめんなさいみたいな……。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらポロポロと泣き出す私を見てルディは大きなため息をついた。
「ねぇ、姉上」
「え?」
「姉上は……コリンが好きなの?」
“コリンが好きなの?”
一瞬、頭が真っ白になって……過去の幼い頃のコリンとの思い出がフラッシュバックして……。昔、コリンに告白された時の事を思い出した。
「好き。なのかも……?」
と、思わず口をついて出てしまったのだった。
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