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葉方萌生

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第一話 かっこいい上司になりたいあなたへ 

プロローグ

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 何から話し始めるのが良いだろう。
 私の今の状況を、初めましての読者の皆さんに一発で上手に説明するのは難しい。
 うーん、そうだなあ……。
 ひとまず、この状況……というか、私の困惑っぷりを実感していただこうかしら。

「えーっと……」

 そのときの私は、かつてないほど戸惑っていた。
ついこの間まで就職活動をしていたから、面接の場面で緊張したり、急に真新しい質問が飛んできて戸惑ったりすることに慣れていた……はずなのに。
 これは一体、どういうことなんだ。
 “泣く子も黙る”真夏のあっつい京都の昼下がり、店番をしていた私の目の前で、三十代ぐらいの一人の見知らぬ男が私に頭を下げている。
 ワックスで中途半端に固められた前髪に、半袖のワイシャツ、地味なグレーのネクタイ。
 手には重たいパソコンでも入っていそうな、光沢のないビジネスバッッグが握られている。
 見れば、白いワイシャツの襟はよれよれで、「アイロンに失敗したのかな」と心配になるくらいだった。
 いや、男の身なりなんて、今の私にはどうでもいい。
 ただ一つだけ言えるのは、先ほど目の前で私に懇願するような視線を送りつつ男が放った一言が、私の頭を「?」でいっぱいにしているということ。
 あまりに困惑して私が何も言えずにいると、男は再びゆっくりと、その言葉を口にした。

「お願いします! 店員さん。僕を、助けてくれませんか?」

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