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下級クラスに告ぐ
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「ちょっと待った!」
「うむ?」
「久しぶりだな下級クラス!」
待ったの声をあげたのは、生徒会長のハインリヒだった。何やらメラメラと目に炎を灯し、下級クラスを睨みつけながらの登場だ。
「おや、アンソニーなのじゃ」
「違う、私の名はハインリヒだと何度も名乗っているだろう!」
「ふーむ?」
相変わらずウルリカ様はハインリヒの名前を覚えていない、もはや別人の名前を呼ぶ始末。それにしてもアンソニーとは、一体どこから出てきた名前なのやら。
「お久しぶりですわね生徒会長、ワタクシ達に何か用ですの?」
「ああ、これを渡しにきた!」
差し出された一枚の書状、表には大きく“果たし状”と書かれていた。シャルロットは代表して受け取り、訝しみながらも内容を読みあげる。
「下級クラスに告ぐ──」
──下級クラスに告ぐ
来る運動会にて、私ハインリヒ・マックスウェルは下級クラスに勝負を申し込む。
小細工は一切しない、他者の力も借りはしない、己の力のみで下級クラスを打ち負かしてみせよう。
互いに持てる力の全てを発揮し、正々堂々と戦おうではないか。そして私と諸君の因縁にケリをつけようではないか。
諸君の勇気ある応戦に期待する。
生徒会長、ハインリヒ・マックスウェル──。
シャルロットは読み終わると同時に、ハインリヒ睨みつけ一言。
「今度は何を企んでいますの?」
「おい待て、何も企んではいない!」
「ふーん……本当ですの?」
今までハインリヒは何度も下級クラスに嫌がらせをしてきた、警戒されて当然であろう。しかし今回のハインリヒは、どうやら少し様子が違った。
「……運動会が終わり間もなくすれば、私はロームルス学園を卒業するのだ」
「卒業? 突然どうしましたの?」
「卒業すること自体は喜ばしいことだ、しかし私には心残りがある。私は下級クラスに勝てていない、一度たりとも勝てていないのだ!」
ハインリヒは叫ぶと同時に、ダンッと地面を踏み鳴らす。いつにも増して感情的な、なんとも荒々しい態度である。
「私は下級クラスに勝ちたい、正々堂々と真っ向勝負で打ち負かしたいのだ! そして運動会は下級クラスと戦える最後の機会なんだ!」
「そんなことを言って、どうせまた──」
「素晴らしいぞ生徒会長!」
「──えっ、お姉様!?」
エリザベスはシャルロットから果たし状を奪い取り、グッと力強く握り締める。果たし状はクシャクシャになってしまうも、興奮したエリザベスはそんなこと気にも留めない。
「なんという力強い言葉、そして熱い意思! これに応えねば騎士ではない、下級クラスは勝負を受けよう!」
「いえお姉様、ワタクシ達は騎士ではありませんわ……」
「それにしても見直したぞ生徒会長! 正々堂々と戦いを挑むとは、それでこそ誇り高き騎士だな!」
「いえエリザベス様、私も騎士ではありません……とにかく一位の表彰台に立つのは私だ!」
ハインリヒからの熱い申し出に、元より運動会に乗り気だったウルリカ様、ナターシャ、シャルルの三人は、さらにノリノリで応戦する。
「分かりました、絶対に負けません!」
「おうっ、いざ尋常に勝負といこう!」
「うむ、勝負なのじゃーっ!」
こうして運動会は、クラス内での一位争奪戦に加え、生徒会長とも争うという白熱の展開に突入するのだった
「うむ?」
「久しぶりだな下級クラス!」
待ったの声をあげたのは、生徒会長のハインリヒだった。何やらメラメラと目に炎を灯し、下級クラスを睨みつけながらの登場だ。
「おや、アンソニーなのじゃ」
「違う、私の名はハインリヒだと何度も名乗っているだろう!」
「ふーむ?」
相変わらずウルリカ様はハインリヒの名前を覚えていない、もはや別人の名前を呼ぶ始末。それにしてもアンソニーとは、一体どこから出てきた名前なのやら。
「お久しぶりですわね生徒会長、ワタクシ達に何か用ですの?」
「ああ、これを渡しにきた!」
差し出された一枚の書状、表には大きく“果たし状”と書かれていた。シャルロットは代表して受け取り、訝しみながらも内容を読みあげる。
「下級クラスに告ぐ──」
──下級クラスに告ぐ
来る運動会にて、私ハインリヒ・マックスウェルは下級クラスに勝負を申し込む。
小細工は一切しない、他者の力も借りはしない、己の力のみで下級クラスを打ち負かしてみせよう。
互いに持てる力の全てを発揮し、正々堂々と戦おうではないか。そして私と諸君の因縁にケリをつけようではないか。
諸君の勇気ある応戦に期待する。
生徒会長、ハインリヒ・マックスウェル──。
シャルロットは読み終わると同時に、ハインリヒ睨みつけ一言。
「今度は何を企んでいますの?」
「おい待て、何も企んではいない!」
「ふーん……本当ですの?」
今までハインリヒは何度も下級クラスに嫌がらせをしてきた、警戒されて当然であろう。しかし今回のハインリヒは、どうやら少し様子が違った。
「……運動会が終わり間もなくすれば、私はロームルス学園を卒業するのだ」
「卒業? 突然どうしましたの?」
「卒業すること自体は喜ばしいことだ、しかし私には心残りがある。私は下級クラスに勝てていない、一度たりとも勝てていないのだ!」
ハインリヒは叫ぶと同時に、ダンッと地面を踏み鳴らす。いつにも増して感情的な、なんとも荒々しい態度である。
「私は下級クラスに勝ちたい、正々堂々と真っ向勝負で打ち負かしたいのだ! そして運動会は下級クラスと戦える最後の機会なんだ!」
「そんなことを言って、どうせまた──」
「素晴らしいぞ生徒会長!」
「──えっ、お姉様!?」
エリザベスはシャルロットから果たし状を奪い取り、グッと力強く握り締める。果たし状はクシャクシャになってしまうも、興奮したエリザベスはそんなこと気にも留めない。
「なんという力強い言葉、そして熱い意思! これに応えねば騎士ではない、下級クラスは勝負を受けよう!」
「いえお姉様、ワタクシ達は騎士ではありませんわ……」
「それにしても見直したぞ生徒会長! 正々堂々と戦いを挑むとは、それでこそ誇り高き騎士だな!」
「いえエリザベス様、私も騎士ではありません……とにかく一位の表彰台に立つのは私だ!」
ハインリヒからの熱い申し出に、元より運動会に乗り気だったウルリカ様、ナターシャ、シャルルの三人は、さらにノリノリで応戦する。
「分かりました、絶対に負けません!」
「おうっ、いざ尋常に勝負といこう!」
「うむ、勝負なのじゃーっ!」
こうして運動会は、クラス内での一位争奪戦に加え、生徒会長とも争うという白熱の展開に突入するのだった
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