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新たな催し

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 頬を撫でる澄んだ風、突き抜けるような青い空。
 今日からロームルス学園は再開、休み中の出来事を話題に、下級クラスはワイワイと盛りあがっていた。

「──というわけで支店の売上は絶好調、次の支店も出せそうな勢いだぜ!」

 ベッポは意気揚々と実家の商売繁盛を語って聞かせる、とても有意義な休みを過ごせたよう。

「自分はアンナマリア様に同行し、アルテミア聖教国を巡礼してきた……。とにかく我儘ばかり言われて大変だった、おかげで予定は大幅に遅延だ……。結局休み中に巡礼を終えられず、時間切れで自分は先に帰ってきた……」

 シャルルは休みの間、アンナマリアに振り回され続けたらしい。自慢の筋肉も萎んで見えるほど、グッタリと疲れ果てている。

「ボクは実家でゆったり過ごしましたよ、たまの帰省はいいものですよね」

 ヘンリーは実家へと帰省し穏やかな時間を過ごした模様。しっかり休んで気分爽快、クタクタのシャルルとは対照的だ。

「そういえばウルリカさん達も帰省されたのですよね、魔界はどんな場所でしたか?」

「とてもステキな場所でしたわよ、新しいお友達を作りましたの!」

「凄く楽しかったです、今度は下級クラス全員で遊びにいきましょう!」

「私はドラルグ様からアグニス様への伝言を預かっています、後ほどアグニス様にお伝えさせてくださいね」

 まだまだ楽しい話は尽きない、そんな中どういうわけか、ウルリカ様はベッタリと机に突っ伏していた。

「授業……授業はまだかの……」

 どうやらウルリカ様は授業の禁断症状を起こしている様子、相変わらず授業大好きにもほどがある。
 そうこうしていると、ガシャリと音を立て昇降機が作動する。

「先生の気配なのじゃ、ようやく授業なのじゃ……うむ?」

「おはよう諸君!」

「あら、エリザベスお姉様?」

 昇降機から降りてきたのは、ヴィクトリア女王ではなくエリザベスだった。教卓の前で仁王立ちし、何やらメラメラと熱気を放っている。

「早速だがお知らせだ、しばらく通常授業は中止とする!」

「なんじゃとーっ!?」

 突如として告げられた悲報に、ウルリカ様は足を広げて椅子から転げ落ちてしまう。

「ウルリカ様、スカートの中が見えていますよ」

「スカートなどどうでもいいのじゃ!」

 怒りながら泣きながら、ウルリカ様はバタバタと大暴れ。学園祭の時とまったく同じ光景である。

「どういうことじゃ、なぜ授業を中止するのじゃ!」

「授業を中止にするのではない、通常の授業を中止にするのだ」

「ふむ?」

「つまりだな……来週の運動会に向けて、しばらく特別授業を行うのだ!」

「なんじゃとーっ!!」

 新たな催しのお知らせに、引っくり返って大喜びするウルリカ様なのであった。
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