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王座争奪戦
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「魔王ウルリカよ、魔王の座をかけ貴様に決闘を申し込む!」
朝の魔王城に響き渡る、けたたましい決闘の申し出。
見渡す限りの地平線には数百もの巨大な影、強大な魔力を揺らめかせながら悠々と空を泳ぎ回っている。
「ひっ……!?」
向けられる殺気にオリヴィアは思わず悲鳴をあげる、シャルロットとナターシャも委縮してしまい動けない。
「なんと、久しぶりの挑戦者なのじゃ!」
「ウルリカ様への挑戦者ねぇ、何年ぶりかしらぁ」
殺気を向けられた張本人であるウルリカ様は心なしか嬉しそう。ヴァーミリアも呑気なものだ、むしろ事態を楽しんでいる様子。
「あの……ウルリカ様、これは一体どういう……?」
「あれは魔王の座を狙う妾への挑戦者なのじゃ」
「魔王の座を狙う?」
「妾を倒せば魔王になれるからの、まあ心配する必要はないのじゃ」
「ウルリカさん……心配する必要はないと言われても、心配せずにはいられません……」
ナターシャの意見はごもっともだ。とそこへゼノン王とゼーファードも駆けつける、どうやら朝方まで飲んでいたようで二人ともお酒臭い。
「おやウルリカ様、あれはもしや?」
「うむ、妾への挑戦者なのじゃ」
「やはり、ということは……」
「王座争奪戦なのじゃ!」
「かしこまりました!」
短い会話でも意図は伝わったらしく、頷くや否やゼーファードはどこかへ走り去ってしまう。続いてウルリカ様も寝室を出ていこうとするが、これをゼノン王は大慌てで阻止。
「おい待てウルリカ、あの魔物はウルリカを倒して魔王の座を奪い取ろうとしているか?」
「その通りなのじゃ、よく分かったのじゃ」
「昨夜ゼーファードから聞いたからな、ウルリカを倒せば魔王になれるというのは本当だったか……」
「本当なのじゃ、故に妾は迎え撃たねばならぬのじゃ」
「なんというか……大丈夫なのか?」
「心配無用なのじゃ、皆は楽しんでいっておくれなのじゃ!」
「「「「楽しむ?」」」」
「そうよ楽しむのよぉ、さあ私達は特等席にいきましょうねぇ」
果たして「楽しむ」とはどういうことなのか、困惑する一同を残してウルリカ様はどこかへ姿を消してしまうのであった。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
それから僅か数分後、城下町外れの小高い丘は異様な熱気に包まれていた。
次々と集まる大勢の魔物、ズラリと並ぶ様々な出店。辺り一帯はお祭り騒ぎ、所構わず大いに盛りあがっている。
しかし丘の頂上付近にはどの魔物も寄りつこうとしない、その理由はというと──。
「王座争奪戦か、久しぶりだな」
「グルルルッ、楽シミデアル」
「見晴らし最高、アタイ達特等席だね!」
「必死で場所取りしたのよぉ、感謝してよねぇ」
楽し気に雑談を交わす、ミーア、ドラルグ、ジュウベエ、そしてヴァーミリア。雰囲気こそ楽し気ではあるものの、大公四体の放つ威圧感はあまりにも強大だ。おかげで他の魔物は一切寄りつけないのである。
「「「……」」」
一方オリヴィア、シャルロット、ナターシャは、大公四体に囲まれてクルクルと目を回していた。突然の王座争奪戦から突然のお祭り騒ぎ、突然に次ぐ突然で目を回してしまっているのだ。
唯一ゼノン王だけは目を回すことなく状況を観察していた、そこへ姿を消していたゼーファードも合流する。
「これはこれは、素晴らしい盛りあがりですね」
「おいゼーファード、この一大事にどこへ消えていた?」
「王座争奪戦の開催を領内外へ告知していたのです」
「告知だと!?」
どうやら集まっている魔物達は、ゼーファードの告知で王座争奪戦を知り集まってきた模様。
「一体どういうことだ、なぜ告知をする?」
「より多くの魔物に王座争奪戦を楽しんでもらうためですよ、何しろ王座争奪戦はお祭りですからね」
「ウルリカは魔王の座を狙われているのだぞ、心配こそすれ祭りはおかしいだろう!」
「昨夜もお伝えした通り、魔界の全戦力で挑もうともウルリカ様には敵いません。すなわちウルリカ様の勝利を疑う余地はないのです、心配などおこがましいですよ」
「だからといって祭りは……」
「愛するウルリカ様を応援し勇敢なる挑戦者を称える、最高に盛りあがる祭りでしょう? その上ウルリカ様の戦闘を間近で拝見出来るのです、これは全ての魔物にとって貴重な機会なのですよ」
「そういうものなのか……ん?」
「お待たせなのじゃ!」
「「「「「うおおぉーっ!」」」」」
魔王城より飛来する現魔王ウルリカ様、主役の登場に集まった魔物は大盛りあがりだ。
「あら、あの恰好はなんですの?」
「あれは魔王としての正装よぉ」
「ウルリカさんステキです、本物の魔王様みたいです!」
「ウルリカ様……カッコいい……っ」
ウルリカ様の出で立ちは普段とまるで違った。夜を映す漆黒の衣、豪奢に輝く金色の王冠、そして腰に携えた魔剣ヴァニラクロス。
威厳溢れるウルリカ様の姿にシャルロットとナターシャは大興奮だ、オリヴィアは憧れの眼差しでウルリカ様を見つめている。
「待ちくたびれたぞ魔王ウルリカ!」
声の主はウルリカ様への挑戦者、悠々と空を泳ぐ巨大な魔物。
一見するとサメやクジラに酷似した外見、しかし細部はまったくの別物だ。背面を覆う暗い鬣、腹部に並ぶ鋭い鱗、そして頭部にはギザギザと波打つ一本の巨大な角。
その数は優に数百体、どの個体も魔王城に匹敵するほど大きい。中でも先頭を泳ぐ一体は他を圧倒する大きさだ。
「吾輩の名はネレイド! 深き魔の海を支配するリヴァイアサンの長にして、世界を喰らう大魔である!」
「妾はウルリカ・デモニカ・ヴァニラクロス! 魔王にして真祖の吸血鬼なのじゃ!」
「貴様が人間界で遊び惚けている間、吾輩は深き魔の海で牙を研ぎ澄ましてきた。そして吾輩の力は貴様を上回った、今こそ貴様に引導を渡し魔王の座を奪い取ってやろう!」
「うむ、健闘を祈るのじゃ!」
ネレイドの放つ強大な魔力は晴れ渡る空を暗く濁らせるほど。しかしウルリカ様は余裕綽々、相手の健闘を祈る余裕っぷりだ。
「リヴァイアサンは魔界の海を支配する魔物、その力は海を従え自在に操るという。しかしウルリカ様に通用するとは思えんが……」
「数は三百から四百くらいかな、ウルリカ様と戦うにしては心もとない数だよね」
「ちょっとまさか、ウルリカはあの大群を全て相手するつもりですの?」
「そうよぉ、王座争奪戦に一対一なんて決まりはないのよぉ」
「カツテハ我モ、エンシェントドラゴン百匹ヲ率イテ挑ンダモノダ。悉ク蹴リ飛バサレテシマッタガナ、グハハハハッ!」
ウルリカ様に負けず劣らず大公達も余裕綽々、心配するシャルロットを他所にワイワイと談笑している。ミーアにいたってはリヴァイアサンの大群を心もとないと評する始末。
「さて、そろそろだな……」
「そうじゃな……」
ともかく盛りあがりは最高潮、そして──。
「覚悟せよ魔王ウルリカ、いざ参る!」
「うむ、尋常に勝負なのじゃ!」
ついに王座争奪戦の火蓋は切られる。
朝の魔王城に響き渡る、けたたましい決闘の申し出。
見渡す限りの地平線には数百もの巨大な影、強大な魔力を揺らめかせながら悠々と空を泳ぎ回っている。
「ひっ……!?」
向けられる殺気にオリヴィアは思わず悲鳴をあげる、シャルロットとナターシャも委縮してしまい動けない。
「なんと、久しぶりの挑戦者なのじゃ!」
「ウルリカ様への挑戦者ねぇ、何年ぶりかしらぁ」
殺気を向けられた張本人であるウルリカ様は心なしか嬉しそう。ヴァーミリアも呑気なものだ、むしろ事態を楽しんでいる様子。
「あの……ウルリカ様、これは一体どういう……?」
「あれは魔王の座を狙う妾への挑戦者なのじゃ」
「魔王の座を狙う?」
「妾を倒せば魔王になれるからの、まあ心配する必要はないのじゃ」
「ウルリカさん……心配する必要はないと言われても、心配せずにはいられません……」
ナターシャの意見はごもっともだ。とそこへゼノン王とゼーファードも駆けつける、どうやら朝方まで飲んでいたようで二人ともお酒臭い。
「おやウルリカ様、あれはもしや?」
「うむ、妾への挑戦者なのじゃ」
「やはり、ということは……」
「王座争奪戦なのじゃ!」
「かしこまりました!」
短い会話でも意図は伝わったらしく、頷くや否やゼーファードはどこかへ走り去ってしまう。続いてウルリカ様も寝室を出ていこうとするが、これをゼノン王は大慌てで阻止。
「おい待てウルリカ、あの魔物はウルリカを倒して魔王の座を奪い取ろうとしているか?」
「その通りなのじゃ、よく分かったのじゃ」
「昨夜ゼーファードから聞いたからな、ウルリカを倒せば魔王になれるというのは本当だったか……」
「本当なのじゃ、故に妾は迎え撃たねばならぬのじゃ」
「なんというか……大丈夫なのか?」
「心配無用なのじゃ、皆は楽しんでいっておくれなのじゃ!」
「「「「楽しむ?」」」」
「そうよ楽しむのよぉ、さあ私達は特等席にいきましょうねぇ」
果たして「楽しむ」とはどういうことなのか、困惑する一同を残してウルリカ様はどこかへ姿を消してしまうのであった。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
それから僅か数分後、城下町外れの小高い丘は異様な熱気に包まれていた。
次々と集まる大勢の魔物、ズラリと並ぶ様々な出店。辺り一帯はお祭り騒ぎ、所構わず大いに盛りあがっている。
しかし丘の頂上付近にはどの魔物も寄りつこうとしない、その理由はというと──。
「王座争奪戦か、久しぶりだな」
「グルルルッ、楽シミデアル」
「見晴らし最高、アタイ達特等席だね!」
「必死で場所取りしたのよぉ、感謝してよねぇ」
楽し気に雑談を交わす、ミーア、ドラルグ、ジュウベエ、そしてヴァーミリア。雰囲気こそ楽し気ではあるものの、大公四体の放つ威圧感はあまりにも強大だ。おかげで他の魔物は一切寄りつけないのである。
「「「……」」」
一方オリヴィア、シャルロット、ナターシャは、大公四体に囲まれてクルクルと目を回していた。突然の王座争奪戦から突然のお祭り騒ぎ、突然に次ぐ突然で目を回してしまっているのだ。
唯一ゼノン王だけは目を回すことなく状況を観察していた、そこへ姿を消していたゼーファードも合流する。
「これはこれは、素晴らしい盛りあがりですね」
「おいゼーファード、この一大事にどこへ消えていた?」
「王座争奪戦の開催を領内外へ告知していたのです」
「告知だと!?」
どうやら集まっている魔物達は、ゼーファードの告知で王座争奪戦を知り集まってきた模様。
「一体どういうことだ、なぜ告知をする?」
「より多くの魔物に王座争奪戦を楽しんでもらうためですよ、何しろ王座争奪戦はお祭りですからね」
「ウルリカは魔王の座を狙われているのだぞ、心配こそすれ祭りはおかしいだろう!」
「昨夜もお伝えした通り、魔界の全戦力で挑もうともウルリカ様には敵いません。すなわちウルリカ様の勝利を疑う余地はないのです、心配などおこがましいですよ」
「だからといって祭りは……」
「愛するウルリカ様を応援し勇敢なる挑戦者を称える、最高に盛りあがる祭りでしょう? その上ウルリカ様の戦闘を間近で拝見出来るのです、これは全ての魔物にとって貴重な機会なのですよ」
「そういうものなのか……ん?」
「お待たせなのじゃ!」
「「「「「うおおぉーっ!」」」」」
魔王城より飛来する現魔王ウルリカ様、主役の登場に集まった魔物は大盛りあがりだ。
「あら、あの恰好はなんですの?」
「あれは魔王としての正装よぉ」
「ウルリカさんステキです、本物の魔王様みたいです!」
「ウルリカ様……カッコいい……っ」
ウルリカ様の出で立ちは普段とまるで違った。夜を映す漆黒の衣、豪奢に輝く金色の王冠、そして腰に携えた魔剣ヴァニラクロス。
威厳溢れるウルリカ様の姿にシャルロットとナターシャは大興奮だ、オリヴィアは憧れの眼差しでウルリカ様を見つめている。
「待ちくたびれたぞ魔王ウルリカ!」
声の主はウルリカ様への挑戦者、悠々と空を泳ぐ巨大な魔物。
一見するとサメやクジラに酷似した外見、しかし細部はまったくの別物だ。背面を覆う暗い鬣、腹部に並ぶ鋭い鱗、そして頭部にはギザギザと波打つ一本の巨大な角。
その数は優に数百体、どの個体も魔王城に匹敵するほど大きい。中でも先頭を泳ぐ一体は他を圧倒する大きさだ。
「吾輩の名はネレイド! 深き魔の海を支配するリヴァイアサンの長にして、世界を喰らう大魔である!」
「妾はウルリカ・デモニカ・ヴァニラクロス! 魔王にして真祖の吸血鬼なのじゃ!」
「貴様が人間界で遊び惚けている間、吾輩は深き魔の海で牙を研ぎ澄ましてきた。そして吾輩の力は貴様を上回った、今こそ貴様に引導を渡し魔王の座を奪い取ってやろう!」
「うむ、健闘を祈るのじゃ!」
ネレイドの放つ強大な魔力は晴れ渡る空を暗く濁らせるほど。しかしウルリカ様は余裕綽々、相手の健闘を祈る余裕っぷりだ。
「リヴァイアサンは魔界の海を支配する魔物、その力は海を従え自在に操るという。しかしウルリカ様に通用するとは思えんが……」
「数は三百から四百くらいかな、ウルリカ様と戦うにしては心もとない数だよね」
「ちょっとまさか、ウルリカはあの大群を全て相手するつもりですの?」
「そうよぉ、王座争奪戦に一対一なんて決まりはないのよぉ」
「カツテハ我モ、エンシェントドラゴン百匹ヲ率イテ挑ンダモノダ。悉ク蹴リ飛バサレテシマッタガナ、グハハハハッ!」
ウルリカ様に負けず劣らず大公達も余裕綽々、心配するシャルロットを他所にワイワイと談笑している。ミーアにいたってはリヴァイアサンの大群を心もとないと評する始末。
「さて、そろそろだな……」
「そうじゃな……」
ともかく盛りあがりは最高潮、そして──。
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