130 / 310
勝利の夜
しおりを挟む
危機を退けたロアーナの町は歓喜に包まれていた。
住人達は喜びのあまり、町中の酒を引っ張り出して飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。すっかり夜も更けたというのに、賑やかさは増すばかりである。
ヴィクトリア女王は町を救った英雄として、お祭り騒ぎに参加させられている。「町の被害状況を確認したい」と訴えていたが、盛りあがりすぎた住人達はヴィクトリア女王を強制連行してしまったのだ。
一方、下級クラスの生徒達はというと──。
「ぐっ……ぐうぅっ……!」
「おいシャルル、大丈夫かよ?」
「心配するなベッポ……筋力増強魔法の副作用で全身筋肉痛なだけだ……、しばらく休めば回復する……」
「副作用のある魔法なんて聞いたことありませんね……そうだ、オリヴィアさんの回復魔法は効きませんかね?」
「ごめんなさいヘンリー様、シャルル様。昼間の戦いで魔法を使いすぎたせいか、しばらく魔法は使えそうにありません……」
「気にしないでくれオリヴィア嬢、これくらいの筋肉痛は自力で治してみせる!」
生徒達は町の宿屋で、戦いの疲れを癒しつつヴィクトリア女王の帰りを待っていた。
「それにしてもヴィクトリア様は遅いですね、もう夜中なのに……」
「住人達が放してくれないんだろ、なにしろ町を救った英雄だからな」
「ヴィクトリア様の人気は凄いな! ヴィクトリア様を連れて行く時の、住人達の盛りあがりっぷりときたら!」
「お美しいうえにカッコいい、しかもみんなから大人気! 生徒として誇らしいです!」
「そう……ですわね……」
ヴィクトリア女王の人気っぷりを生徒達は嬉しそうに語っている。
そんな中シャルロットだけは、しんみりとした様子で俯いている。昼間の戦闘で母親ヴィクトリア女王を危険にさらしてしまったのだ、落ち込むのも無理はない。
落ち込むシャルロットを心配して、オリヴィアはウルリカ様に相談しようとするが──。
「すやぁ……すやぁ……」
昼間のカッコいい姿はどこへやら、ウルリカ様はぐでーんとだらしない恰好で眠りこけている。
だらしないウルリカ様の姿に空気が緩んだちょうどその時、部屋の扉が開かれる。
「ただいま、遅くなっちゃったわね」
「お帰りなさいヴィクトリア様……と、クリスティーナ様とエリザベス様?」
扉を開けて現れたのは、ヴィクトリア女王とクリスティーナ、そしてエリザベスである。
「町の被害状況を確認しに来たところ、住人達に捕まってな……」
「住人のみんな……大騒ぎをしていた……はぁ……」
「二人とも揉みくちゃにされていたから、救出してあげたのよ」
どうやらクリスティーナとエリザベスは、お祭り騒ぎに巻き込まれてしまったようだ。よほどの大騒ぎだったのだろう、二人ともずいぶんゲッソリとしている。
「それはそうと下級クラスのみんな、昼間はロアーナの町を救ってくれて感謝する! みんなの活躍を聞いたときは心が躍ったものだ!」
「頑張ったわね……大変だったわね……今日はゆっくり休んでね……」
ゲッソリとしているものの、クリスティーナとエリザベスは生徒達への労いを忘れない。ほんわか柔らかな雰囲気が、部屋を優しく包み込む。
そんな中シャルロットはおずおずと口を開く。
「お母様……昼間のことは申し訳──」
「謝ったって許されないわよ」
「えっ!?」
ヴィクトリア女王の声色は、そして視線は鋭く厳しいものだ。先ほどまでとは打って変わって、ピリピリとした緊張感が部屋を包み込む。
「昼間の先生命令を覚えているかしら? 急いで屋敷に避難するよう伝えたはずよね?」
「はい……」
「なのにシャルロット、あなたは自分の判断で町に残ろうとしたそうね?」
「でも国民を……住人を残していくわけには……」
「あなたの勝手な判断で、クラスメイトは危険な目にあったのよ。大切な命が失われていたかもしれないのよ」
「はい……」
「謝って許されることではないわ、しっかり反省しなさい」
「……はい……」
厳しく叱られたシャルロットは、小さく返事をするだけで精いっぱいだ。そんなシャルロットを横目に、ヴィクトリア女王はクリスティーナとエリザベスを連れて部屋から出て行ってしまう。
重苦しい雰囲気の中、シャルロットはゆっくりと立ちあがる。
「シャルロット様、どちらへ行かれるのですか?」
「少し……風にあたってくるわ……」
「でしたら私も一緒に──」
「ごめんなさいナターシャ、しばらく一人にして……」
そう言うとシャルロットは、肩を震わせながら部屋を出て行ってしまう。
残されたクラスメイトは、シャルロットの背中を見送ることしか出来なかった。
住人達は喜びのあまり、町中の酒を引っ張り出して飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。すっかり夜も更けたというのに、賑やかさは増すばかりである。
ヴィクトリア女王は町を救った英雄として、お祭り騒ぎに参加させられている。「町の被害状況を確認したい」と訴えていたが、盛りあがりすぎた住人達はヴィクトリア女王を強制連行してしまったのだ。
一方、下級クラスの生徒達はというと──。
「ぐっ……ぐうぅっ……!」
「おいシャルル、大丈夫かよ?」
「心配するなベッポ……筋力増強魔法の副作用で全身筋肉痛なだけだ……、しばらく休めば回復する……」
「副作用のある魔法なんて聞いたことありませんね……そうだ、オリヴィアさんの回復魔法は効きませんかね?」
「ごめんなさいヘンリー様、シャルル様。昼間の戦いで魔法を使いすぎたせいか、しばらく魔法は使えそうにありません……」
「気にしないでくれオリヴィア嬢、これくらいの筋肉痛は自力で治してみせる!」
生徒達は町の宿屋で、戦いの疲れを癒しつつヴィクトリア女王の帰りを待っていた。
「それにしてもヴィクトリア様は遅いですね、もう夜中なのに……」
「住人達が放してくれないんだろ、なにしろ町を救った英雄だからな」
「ヴィクトリア様の人気は凄いな! ヴィクトリア様を連れて行く時の、住人達の盛りあがりっぷりときたら!」
「お美しいうえにカッコいい、しかもみんなから大人気! 生徒として誇らしいです!」
「そう……ですわね……」
ヴィクトリア女王の人気っぷりを生徒達は嬉しそうに語っている。
そんな中シャルロットだけは、しんみりとした様子で俯いている。昼間の戦闘で母親ヴィクトリア女王を危険にさらしてしまったのだ、落ち込むのも無理はない。
落ち込むシャルロットを心配して、オリヴィアはウルリカ様に相談しようとするが──。
「すやぁ……すやぁ……」
昼間のカッコいい姿はどこへやら、ウルリカ様はぐでーんとだらしない恰好で眠りこけている。
だらしないウルリカ様の姿に空気が緩んだちょうどその時、部屋の扉が開かれる。
「ただいま、遅くなっちゃったわね」
「お帰りなさいヴィクトリア様……と、クリスティーナ様とエリザベス様?」
扉を開けて現れたのは、ヴィクトリア女王とクリスティーナ、そしてエリザベスである。
「町の被害状況を確認しに来たところ、住人達に捕まってな……」
「住人のみんな……大騒ぎをしていた……はぁ……」
「二人とも揉みくちゃにされていたから、救出してあげたのよ」
どうやらクリスティーナとエリザベスは、お祭り騒ぎに巻き込まれてしまったようだ。よほどの大騒ぎだったのだろう、二人ともずいぶんゲッソリとしている。
「それはそうと下級クラスのみんな、昼間はロアーナの町を救ってくれて感謝する! みんなの活躍を聞いたときは心が躍ったものだ!」
「頑張ったわね……大変だったわね……今日はゆっくり休んでね……」
ゲッソリとしているものの、クリスティーナとエリザベスは生徒達への労いを忘れない。ほんわか柔らかな雰囲気が、部屋を優しく包み込む。
そんな中シャルロットはおずおずと口を開く。
「お母様……昼間のことは申し訳──」
「謝ったって許されないわよ」
「えっ!?」
ヴィクトリア女王の声色は、そして視線は鋭く厳しいものだ。先ほどまでとは打って変わって、ピリピリとした緊張感が部屋を包み込む。
「昼間の先生命令を覚えているかしら? 急いで屋敷に避難するよう伝えたはずよね?」
「はい……」
「なのにシャルロット、あなたは自分の判断で町に残ろうとしたそうね?」
「でも国民を……住人を残していくわけには……」
「あなたの勝手な判断で、クラスメイトは危険な目にあったのよ。大切な命が失われていたかもしれないのよ」
「はい……」
「謝って許されることではないわ、しっかり反省しなさい」
「……はい……」
厳しく叱られたシャルロットは、小さく返事をするだけで精いっぱいだ。そんなシャルロットを横目に、ヴィクトリア女王はクリスティーナとエリザベスを連れて部屋から出て行ってしまう。
重苦しい雰囲気の中、シャルロットはゆっくりと立ちあがる。
「シャルロット様、どちらへ行かれるのですか?」
「少し……風にあたってくるわ……」
「でしたら私も一緒に──」
「ごめんなさいナターシャ、しばらく一人にして……」
そう言うとシャルロットは、肩を震わせながら部屋を出て行ってしまう。
残されたクラスメイトは、シャルロットの背中を見送ることしか出来なかった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる