114 / 310
登場
しおりを挟む
「フシャアァッ!」
アンナマリアの放つ強烈な威圧感を受けて、本能的に反応してしまったカーミラ。目にも止まらぬ速度で飛び出すと、一直線にアンナマリアへと襲いかかる。
「カーミラちゃん!」
あまりにも突然の事態に、オリヴィアは声をあげることしか出来ない。
その間にもカーミラは、ヒュンと風を切りアンナマリアの元へと迫る。一瞬にしてアンナマリアの背後へと回り込むと、鋭い爪をキラリと光らせ、そして──。
「おっと、可愛い猫ちゃんっすね!」
「フニャッ!?」
カーミラの爪が突き立てられようとしたまさにその時、アンナマリアは一瞬にしてその場から姿を消してしまう。かと思いきや次の瞬間にはカーミラの背後に現れ、ヨグソードの先端でカーミラのお尻ツンッと突く。
「大人しくするっす、ほいっ」
「フニャ──」
ヨグソードで突かれた瞬間、カーミラはその場でピタリと動きを止めてしまう。爪を立てて襲いかかろうとしていた姿勢のまま、空中で制止しているのである。まるで時が止まってしまったかのように、ピクリとも動かない。
「そんなっ、カーミラちゃん!?」
「えっ……どうしてカーミラは空中に浮かんでいますの……?」
「あれは一体なんだ……教主様はなにをしたのだ!?」
「ふふんっ、教主は強くないと務まらないっすからね!」
そう言うとアンナマリアは、自信満々な態度で小さな胸を張って見せる。クルクルとヨグソードを片手で回し、まさに余裕綽々といった様子だ。
「さて、シャルロットちゃん達はこれからどうするっすか?」
「えっ……あ……ワタクシ達は……」
「ナターシャちゃんを連れて帰るだけなら、私はなにもしないっす。ヨグソードまで持って帰ろうとするなら……分かるっすね?」
アンナマリアの言葉には、有無を言わせない静かな迫力がこもっている。息が詰まりそうなほどの緊張感に包まれる中。
「──シャは──じゃー」
遠く微かに聞こえてくる、聞き覚えのある可愛らしい声。そしてズシンズシンと響いてくる、不穏な気配の振動音。
「おや? なにやら騒がしいっすね?」
激しさを増す振動で礼拝堂はミシミシと軋んだ音を立てる。バラ窓には大きなひびが走り、天井からは石灰の欠片がパラパラと落ちてくる。そして──。
「サーシャはどこじゃー!」
バンッと激しく開かれる扉、勢いよく飛び込んでくる小さな影。全身に魔力を漲らせた、魔王ウルリカ様の登場である。
大切な友達を誘拐されてウルリカ様は怒り心頭だ。加えて寝起きのウルリカ様はすこぶる機嫌が悪い。
「サーシャはどこじゃ! サーシャを返してもらうのじゃ!!」
怒りに満ちた視線でアンナマリアを睨みつけるウルリカ様。しかし次の瞬間には、ウルリカ様の表情から怒りの色は消え去ってしまう。
「うむ? もしやお主は……」
一方のアンナマリアは顔色を真っ青に染めている。ウルリカ様と対峙したまま、ゆっくりと口を開き──。
「げげぇっ! まさかウルリカっすか!?」
アンナマリアの大絶叫が、礼拝堂に響き渡るのだった。
アンナマリアの放つ強烈な威圧感を受けて、本能的に反応してしまったカーミラ。目にも止まらぬ速度で飛び出すと、一直線にアンナマリアへと襲いかかる。
「カーミラちゃん!」
あまりにも突然の事態に、オリヴィアは声をあげることしか出来ない。
その間にもカーミラは、ヒュンと風を切りアンナマリアの元へと迫る。一瞬にしてアンナマリアの背後へと回り込むと、鋭い爪をキラリと光らせ、そして──。
「おっと、可愛い猫ちゃんっすね!」
「フニャッ!?」
カーミラの爪が突き立てられようとしたまさにその時、アンナマリアは一瞬にしてその場から姿を消してしまう。かと思いきや次の瞬間にはカーミラの背後に現れ、ヨグソードの先端でカーミラのお尻ツンッと突く。
「大人しくするっす、ほいっ」
「フニャ──」
ヨグソードで突かれた瞬間、カーミラはその場でピタリと動きを止めてしまう。爪を立てて襲いかかろうとしていた姿勢のまま、空中で制止しているのである。まるで時が止まってしまったかのように、ピクリとも動かない。
「そんなっ、カーミラちゃん!?」
「えっ……どうしてカーミラは空中に浮かんでいますの……?」
「あれは一体なんだ……教主様はなにをしたのだ!?」
「ふふんっ、教主は強くないと務まらないっすからね!」
そう言うとアンナマリアは、自信満々な態度で小さな胸を張って見せる。クルクルとヨグソードを片手で回し、まさに余裕綽々といった様子だ。
「さて、シャルロットちゃん達はこれからどうするっすか?」
「えっ……あ……ワタクシ達は……」
「ナターシャちゃんを連れて帰るだけなら、私はなにもしないっす。ヨグソードまで持って帰ろうとするなら……分かるっすね?」
アンナマリアの言葉には、有無を言わせない静かな迫力がこもっている。息が詰まりそうなほどの緊張感に包まれる中。
「──シャは──じゃー」
遠く微かに聞こえてくる、聞き覚えのある可愛らしい声。そしてズシンズシンと響いてくる、不穏な気配の振動音。
「おや? なにやら騒がしいっすね?」
激しさを増す振動で礼拝堂はミシミシと軋んだ音を立てる。バラ窓には大きなひびが走り、天井からは石灰の欠片がパラパラと落ちてくる。そして──。
「サーシャはどこじゃー!」
バンッと激しく開かれる扉、勢いよく飛び込んでくる小さな影。全身に魔力を漲らせた、魔王ウルリカ様の登場である。
大切な友達を誘拐されてウルリカ様は怒り心頭だ。加えて寝起きのウルリカ様はすこぶる機嫌が悪い。
「サーシャはどこじゃ! サーシャを返してもらうのじゃ!!」
怒りに満ちた視線でアンナマリアを睨みつけるウルリカ様。しかし次の瞬間には、ウルリカ様の表情から怒りの色は消え去ってしまう。
「うむ? もしやお主は……」
一方のアンナマリアは顔色を真っ青に染めている。ウルリカ様と対峙したまま、ゆっくりと口を開き──。
「げげぇっ! まさかウルリカっすか!?」
アンナマリアの大絶叫が、礼拝堂に響き渡るのだった。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
キャラ交換で大商人を目指します
杵築しゅん
ファンタジー
捨て子のアコルは、元Aランク冒険者の両親にスパルタ式で育てられ、少しばかり常識外れに育ってしまった。9歳で父を亡くし商団で働くことになり、早く商売を覚えて一人前になろうと頑張る。母親の言い付けで、自分の本当の力を隠し、別人格のキャラで地味に生きていく。が、しかし、何故かぽろぽろと地が出てしまい苦労する。天才的頭脳と魔法の力で、こっそりのはずが大胆に、アコルは成り上がっていく。そして王立高学院で、運命の出会いをしてしまう。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる