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12話 立ちはだかるライバル? その2

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「何……だって?」


 カイルの言葉を上手く聞き取れなかったレオン・アンバートは、とても狼狽えながら聞き返してしまっていた。いや、聞き取ることは出来たが信じたくなかったと言うのが正解か。

「だから、アミーナは処女でしたよ」


 カイルはそっけない態度でレオンに宣言した。「彼女の初めての男は自分だ」と──。レオンはめまいでも起こしたかのようにフラフラと座り込んでしまった。

「だ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫だ……触るな!」

 座り込んだ彼に差し伸べられた護衛の手を振り解くレオン。気丈にもそのまま立ち上がる。


「まさか、この私の前にこんなにも強力なライバルが現れるとはな……」

「ライバル……? いや、全然違うと思うんですけど」

「カイル、ここは話しに乗ってあげなさいよ! デリカシーないわね、あんたって」

「デリカシー? まあ、いいけど……。えっと……レオン・アンバート様が恋のライバルなんて光栄ですよ、あははははっ」

 棒読みにも程があるカイルのセリフ。大根役者が読み上げているような感覚だ。彼としても、アミーナの恋のライバルなど認められるわけはないので当然といえば当然なのだが。しかし、その大根振りにはアミーナも頭を抱えていた。

「あんた、演劇とか向いてないかもね」

「うるさいなっ。別に演劇に興味なんてねーし」

 こういう何気ないやり取りでも、二人の仲の良さが露呈していた。レオンのお付きとしてやってきた面々は、二人の初々しさに微笑みを送っているほどだ。レオン以外は、アミーナとカイルの二人を祝福しているようだった。

「……どうやらここは、退散するしかないようだね。カイル……か、その名前覚えておこう」

「なんのセリフですか、それは……」

 いかにもな悪役のセリフ。演劇の話が出ていた為に、貴族間で流行っているお話のセリフをパクったのかもしれない。だとすると、レオンはとても痛々しいことをしているのだが……。

「覚えてろっ!」

「うわ~~~……」

 レオンは負け犬の雰囲気を全身に纏わせながら、お付きの部下たちと共に馬車を走らせて帰って行った。しかし、また何らかの準備をしてやってきそうだ。あの様子から、武力制圧は考えにくいが。


「……案外、賑やかな人だな」

「あんた、ライバル認定されてるし。ま、頑張って私のこと守ってよね」

「任せろ。報酬はアミーナの身体でいいや」

「……バカ」

 既に最後まで完了している二人。今後どのような障壁が訪れようとも、彼らの愛を打ち砕ける者は居ないだろう。特段シリアスな展開にならなかったライバル対決? は、カイルの勝利で終わった。
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