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33話 傾く政権 その1
しおりを挟む「くそ……! ラークスの奴からの報告は……!」
辺境領主であるラークス伯爵。金鉱山に新たな鉱脈が発見されていたことはウィンドミル・ラウツ王子の耳に届いていた。管理権はアイリーンが持っているが、それを隣国に譲っているのだ。
彼のイラつきの原因はそこにあった。
「い、如何いたしましょうか……?」
ゴウラ子爵はウィンドミルの顔色を窺うように、びくびくしながら話している。八つ当たりされないか不安なのだ。周囲に立っている兵士たちも同じような心境になっていた。
「へ、兵を動かして金鉱山を制圧いたしますか……?」
ゴウラ子爵は王子が考えそうなことを先出ししてみせた。彼の機嫌を悪くするのは、自らの立場に影響してしまうのだから。
「そうだな……いや、街の暴動を抑える方が先だ。奴らの集会は日に日に過激になってやがる。アランドロ女王国に漏れる前に制圧しろ」
「か、畏まりました……」
今は辺境の地域に構っていられる程の余裕はない。そんなことをすれば、完全に民衆の行動を加速させ、政権自体が倒されかねない。ゲシュタルト王国は現在、大きな局面に立たされかけていた。最早、住民からの支持はほとんどないと言っても過言ではないのだ。
状況はゲーム内と同じ末路を辿りつつあった……。
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アイリーンとアルガスのキスから一夜が明けた本日、ゲシュタルト王国の中央政権とは似ても似つかない、アルガス伯爵の屋敷内……
とても平和な会話が繰り広げられていた。
「いや~~、二人がいつの間にか夜の道から居なくなってから、これは最後までしたんかな思ってたわ」
「ちょっと……キス見てただけでもあれなのに、変な誤解しないでよね」
中庭でのやり取り後、アルガスはアイリーンを部屋まで送ったのだが……タイネーブはわざと大袈裟に物事を捉えたのだ。
「別に間違いが起きても、問題ないんやろ? なんも悪いことやあらへんし」
「そうかもしれないけど……まあ、色々とあるでしょ、タイミングとか」
流石にそこまで話が進むとアイリーンも恥ずかしくなってしまう。こちらのタイネーブは経験済みなのか、妙に慣れている節があった。
「タイネーブって……そういう経験終わってるの?」
「ん? まあ、恋人は居らんけど……まあね」
「……えっ?」
タイネーブからのカミングアウト……アイリーンは思わず自分の耳を疑いながら、同じ質問を繰り返していた。
ゲシュタルト王国の政権の傾き……彼女達が楽しい会話をしている間にも、それは確実に起きていたのだ。
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