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30話 動き出すグレン その3
しおりを挟む「驚いたな……まさかシャルロッテが王族の子? だなんて……」
「そうね……でも、あれだけ賢い子がただの平民の子だとは思えなかったけど」
シリンガ宮殿内でもシャルロッテの正体がわかってからは、その話題で持ち切りになっていた。平民出身であったのだが、彼女はその仕事振りから信頼されていた。それが半分王族の血が流れているとなれば、嫌でも噂にはなってしまうだろう。
一説では絶対記憶という能力を有している為に、国王陛下が用意した人間兵器なのではないか? という見方も出ていた程だ。今回で正体が分かり、すっきりしたと言えるだろうか。もちろん、シャルロッテ自身は噂になることは嬉しいことではない。国王夫妻と大臣参謀くらいしか、知らなかったはずの自らの正体がバレたことはともかくとして、目立つのは本意ではないからだ。
「すごい噂になっていますね、シャルロッテさん」
「はい……リオナ様。あまり噂にはなりたくなかったのですが、仕方ありませんね……」
ヨハン国王陛下が隠し子の存在を発表すると分かった時点でこうなることは確定ではあった。覚悟はしていたが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「一説では、わたくしも選挙に出馬すればいいという話もあり……困っています」
「シャルロッテさんが選挙にですか……?」
少し驚いたリオナではあるが、よくよく考えればそれほど悪い案ではないのかもしれない。女性である為に不利とはいえ、彼女も王位継承権があることは間違いないのだ。聡明な彼女であれば、女王といしてやっていくことも不可能ではないはず。
さらに、今の段階で出馬すれば、同情票や元々の信頼票で相当数の数を確保できる可能性がある。隠し子問題の余波でどうしてもアレンはダメージを受けてしまうからだ。アレンに誠心誠意仕えることを誓ったリオナではあるが、もしもアレンが劣勢になったときの代替え案も必要になるとは考えていた。
グレンにだけは王位を譲るわけにはいかない……シャルロッテがトップに立てば、民衆の意に叶った政治を実行するだろうと思える。
「シャルロッテさん……万が一のお話しなんですが……」
「リオナ様……?」
アレンに誠心誠意仕える……それの意味するところは、彼の意にそぐわない結果の排除だ。シャルロッテが女王になることは、アレンも否定しないと考え、リオナは彼女を説得してみることにした。
選挙戦は怒涛の後半戦へと進み、より波乱の展開を見せることになる……。
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