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魔王出陣!

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「…なんで俺を殺さない」
魔王城の客間。魔力で編まれた縄にぐるぐるに締められた紅がいた。
「聞きたいことがあるんだ。その情報によっては殺さないよ」
悠馬が椅子に座りながら聞く。
「勇者ってみんな地球の日本から来た人達なの?」
「………」
紅が黙っているので魔王剣を出す。
「ひっ!そ、そうだ!十人の勇者全員が日本人だせ!?」
「そっか」
悠馬が魔王剣をしまう。
「さっき転生って言ったけど勇者はみんな転生者?」
「………」
「魔王剣」
「いやそうだ!みんな現実で死んでから転生した!俺は家が火事になって死んだから炎の勇者に選ばれたんだ!」
「なに?」
今まで黙って聞いていた恭平が反応した。ちなみに桜はメイの様子を見てくるといって寝室に向かったのでここにはいない。
「勇者の属性は死に方によるんだな」
「おう、水の勇者の真怜は溺死したって言ってたし、剣の勇者は博物館のデカイ剣が降ってきたとか言ってたな」
「殺されたな。全の勇者に」
恭平が珍しく深刻な声を出す。
「殺されただと!?そんなわけねえだろ!善の勇者様はそんな人じゃねえよ!」
「全の勇者にあったことあるの?」
「いや、ねえけど」
悠馬の問いにしぶしぶ答える。
「無いなら分かんないじゃん」
「そりゃそうだが」
「とにかく他の勇者の情報を教えてよ。これから倒しにいくんだから」
「そ、それはできねぇ!仲間を売るようなことは!」
「ほお」
悠馬は魔王らしい顔と声で紅を威嚇した。
「うっ!」
紅も黒炎の咆哮のダメージがまだ残っているので凄くたじろいだ。
「これ以上喋らないなら俺が殺すぞ悠馬」
「や!分かった!話すから!」
「よし、じゃあ話してもらおう」 
「おう、まず水の勇者はっ、!」
紅が話そうとした直後窓から弓矢が飛んできて紅の額に刺さった。
「ガハッ!」
「弓?どこから!?」
悠馬が弓が飛んできたと思われる方向を向いたが既に放たれていた銃数本の弓矢が素早く紅に刺さる。
「おい!紅!」
悠馬が倒れた紅に駆け寄るが紅はすでに死んでいた。
「くそ!貴重な情報が!」
恭平はそういって窓を見た。
「狙撃は終わったみたいだね」悠馬が周囲を見回す。
「おう」
「悠馬さん!大丈夫ですか!?」
客間の扉を桜が勢いよく開ける。
「パパ!だいじょーぶ?」
少し遅れてメイも来る。
「メイ!もう寝る時間だろ?」
「パパ達がうるさくするからじゃん!で、そこで縛られてるのだーれ?」
「いや、だれでもないから大丈夫」
流石にメイに死体は見せられない。悠馬は必死に紅を隠す。
「ほらメイ、寝に行きましょうね」
「えーやだぁ!」
「素直に寝ないと一緒に寝てあげないぞー」
悠馬はメイが大人しくなる方法の一つを使った。が、
「いいもん!パパが寝てるところに襲いにいくもん!」
「だ!誰にそんなこと聞いたんだ!!」
悠馬が急に大声を出す。
「あ!パパの声で目が覚めた。ざーんねん!」
「よし!とっとと寝ろ!」
(今後のことは明日話そう)
悠馬はそう思いながら寝室に向かった。
  ◇
「狙撃成功。紅 死んだ」
どこかの岩山。弓を構えた少女が抑揚のない声を発した。
「流石だな葵。弓の勇者は伊達じゃねえな」
少し離れた場所にいた男が声をかけながら葵と呼ばれた少女に歩み寄る。
「いいの? 紅 仲間」
「あ?しょうがねえだろ?魔族に捕まって俺たちのこと話そうとしたんだ。裏切りには死がつきもんだろ?」
「理解 裏切り ダメ」
そういうと葵と呼ばれた女が弓を消した。
「助かったぜ。俺の槍じゃ流石に届かねえからな」
「問題なし 勇者 当然」
「そうかい。じゃあこのことを伝えてくるわ」
そういうと男、槍の勇者は歩き始めた。
「勇者長? 副勇者長?」
「副勇者長の方だ。勇者長は忙しいだろうからな」
「了解 撤退 睡眠」
「おう。またな」
「また」
そして、槍の勇者、弓の勇者は姿を消した。

 翌日
「さて、会議を始めよう」
魔王城の会議室。大量にある椅子の一つに腰掛けた悠馬が言った。
「おう」
「いつでもどうぞ」
「どうぞどうぞー」
この会議室には桜と恭平、どうしてもというのでメイもいる。
「これから次の勇者を倒しに行くけど、どこから行こうか」
「旅の用意もいるし、宿代もいるな」
「うーん」
悠馬と恭平は仲良く首を傾げた。
「はい!提案があります!」
桜が元気よく手を挙げた。
「ん?なに?」
「こんなこともあろうかと全自動魔導車を作っておいたんです!ベットもダブルベッドが四つありますよ!」
「万能かよ」
流石にツッコミたかった。まじ桜万能。
「いえいえ、万能なのはジキルさんですよ」
件のジキルさん、ありがとう。
「魔導車には細工をしておいて手のひらサイズにもなりますし、ジキルさんの機会も小さく出来たので持ち運び自由です!」
「本当に万能か!」
ジキルさんって神なのかと思った。
「じゃあまずどの勇者から倒す?」
「妥当なのは土か水だな。勇者こ中にも弱いやつと強いやつがいるからな」
恭平が少しだるそうに語る。
「勇者には大きく分けて二つある。属性勇者と武具勇者だ。もっかい言うが一般的には武具勇者の方が強い」
「なるほど。じゃあ水かな」
「そのこころは!?」
メイがどこかで聞いたことあることを椅子から乗り出して言った。
「えーとどちらもーどちらもー」
「え?どちらもってなんですか?」
「土と水は両方弱い方からどっちでもいいぞ?」
「それだ!どちらも弱いでしょう!」
「???」
滑った。思いっきり滑った。
「えっと、ちなみに炎は何番めくらいなの?」
話をそらすために聞いてみた。
「炎は下から数えて二番目くらいだな」
「じゃあもっと強い勇者はいるわけだ。いやー最初が炎でよかったー!」
「よかったー!」
メイが勇者の真似をする。実に可愛らしいネ!
「じゃあ水の勇者の領土に行くか!」
「おー!!」
悠馬達は水の勇者を倒すために魔導車へと乗り込んだ。
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