官能小説に恋をして!

藤丸セブン

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中編

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 <四章ですわよ>
「冬三さんの言われるがままに来てみましたが、ここは?」
「聞いたことがないかにゃー?未来が見えると言われている占い師、浦部菜々子の事を」
 冬三が楽しげに笑って知らない女性の話をする。
「知りませんわ」
「う、浦部さんはさっき説明された通り、未来が見える占い師って言われてる有名な占い師だよ。い、今はこの学校の占い部に所属してて、望めばどんな人も無償で占ってくれるんだって」
 翔子の話を聞いて澤が口元を歪ませる。
「あっやしーぃですわね」
「第一声がそれか。まあ、確かに美味しい話だから裏があると考えるのも分からなくもないけどにゃあ。でも本当に当たるらしいよ」
 ふざけた口調で語る冬三だが、菜々子の占いが当たるという話は本当だ。こんな内容を占われたら引かれそうではあるが、今は藁にも縋りたい気分。覚悟を決めて行くしかない。
「わ、私。行ってきます」
「まぁそう気張らなくてもいいよ。そんでどうせ行くなら皆んなで行こう」
「賛成ですわ!占い師とやらの化けの皮剥いで草履にしてやりますわ!!!」
「そ、それは。ちょ、ちょっと訳が分からない」
 三人は同時に占い部の扉を開けた。
「おや、お客様ですか。ようこそ占い部へ」
 部室の中は少し薄暗く、本物の占いの館を思わせる造りとなっていた。その部室の中心に座っていた少女が挨拶をしてくる。
「こ、こんにちは浦部さん。突然ごめんね」
「おや、菅野さんですか。珍しいお客様ですね」
 部室の中心、水晶玉の目の前に座っていた少女こそが浦部菜々子。件の占い師だ。お客様が来た事で先程まで談笑していたであろう他の部員は静かに席を外していく。
「さてと。では本日は何を占いに来たのですか?」
「分からねぇのですか!?占い師ですのに!?!?」
 占い部屋に似合わぬ大きい声が響く。当然澤だ。
「こ、こら澤ちゃん!し、失礼でしょ」
「客が何しに来たのかも当てられねぇ占い師は占い師じゃぁありませんわ!?インチキですわぁぁ!!」
「澤ちゃん!」
 騒々しい。この言葉が一番似合う自称お嬢様はどうやら譲るつもりはない様だ。
「おほん。まあ構いませんよ。そういったお客様も少なくはないので」
 菜々子は咳払いをして手に付いている黒い手袋を取る。
「触れてください。そうすれば、あなたの未来が見えます」
「水晶玉は使わねぇのですのね」
「こちらの勝手でしょうが!文句多いですねあなた!」
 流石の菜々子も怒った。やることなす事全てに文句をつけられたら溜まったものではない。
「さあ、ショコリン」
「わ、私!?わ、分かった」
 冬三に押された翔子は少し驚くものの覚悟を決めて菜々子の手を握る。その瞬間に菜々子の脳に手を握られた人物、菅野翔子の未来が映る。
「え?」
「へ?」
 そして、素っ頓狂な声をあげた。
「分からねぇんですのね!!」
「いえ、分かったんですけど。まさかこんな事を聞きにくるとは思ってなくて。菅野さんって、ムッツリなんですね」
「ち!ちちちちちちちち違うのぉ!!!」
 菜々子の能力は未来を見る事が出来る。しかし、過去は見る事が出来ない。故に何故官能小説を書こうとしているのかという点は分からなかったのだ。そんな菜々子に翔子は必死にこれまでの事を伝える。
「な、なるほど。ひとまず分かりました」
「そ、そうなの。私、む、ムッツリじゃないからぁ!!」
 それは。どうなのだろう。ひとまず菜々子は納得した様に頷き、「苦労してますね」と小さく呟く。
「未来を見た結果、どうやら菅野さんは小説を書き上げられています。その場に後ろのお二人がいるので、完成したものを読み合っているのでしょうか」
「おお!完成するんだ!」
「神ですわ!!やはり占い師は神ですわ!!」
 掌を一八〇度変えて澤と冬三が喜ぶ。翔子は複雑そうな顔をしていた。
「ただ、気をつけて下さい。未来はほんの少しの出来事で大きく変わります。私が見たのはあくまでも可能性の一部であると把握して下さい」
「はぁぁぁぁ!?やっぱ占い師なんて輩は信用できねぇですわ!」
「澤ちゃん」
「黙りますわ!!!」
 漫才師の様な二人を苦笑いしながら見る菜々子。こいつは本当にやることなす事にケチ付けてんな。
「未来ってそんな簡単に変わるのー?」
「ええ。変わります。例えば朝食をご飯からパンにしただけで変わりますよ」
「そ、そうなんだ」
 未来とは普遍である、というのは全く違う。未来とはほんの少し、些細な事で大きく変わる。
「ですが、あなたには小説を書く力があるという事です。諦めずに、努力し続ければ必ず書けますよ」
「未来を見たけどその結果が変わった人とかはいらっしゃいますの!?ワタクシ!気になりますわ!」
「・・・今いい感じに締めたつもりだったのですが」
 菜々子の発言に同意します。四章長すぎるのでここいらで切ろうと思ってたのに。何言ってくれちゃってんだよお前。
「ザマァですわ作者ぁぁ!」
 作者を煽りにくんじゃねぇよクソアマァァァァ!!
「何を言ってるんですかあなた」
 まともな人間には作者は認識できない。つまり澤は一人で喋っている変人という訳だ。ザマァ。
「キィィ!うっぜぇぇですわ!」
「え!?そんなに酷い事言ってないと思いますけど!?」
 喋れば喋るほど変人になる澤。まぁ。元から変人だが。
「ちっ!話を戻しますわ!ほら!未来が変わった人はいるんですの!?いないんですの!?」
「いますよ。といっても私は話を聞いただけで占ってはいないんですけど」
「その人はどんな人でして!?」
 ぐいぐいと菜々子に迫る澤。今の澤は官能小説を書くという目的より好奇心で動いている。
「えっと。彼は自殺をしようと考えていた人でしたが、話を聞いて考えを変えてくれました。今も元気に過ごしていますよ」
「彼氏ですの?」
「なっ!か、関係ないでしょうが!」
 少し頬を赤くしながら叫ぶ菜々子。その表情を見てニヤニヤと笑う。この女マジでうざいね。殴っていいよ。
「と、とにかく!努力次第では書けます!ほら出てって下さい!!」
「なっ!何ですの!?追い出そうってんですのぉ!?」
「いや、撤退しようぜさわちー。もう目的は達成したでしょ?」
「さわちー!?」
 いつの間にかあだ名になっている事に驚いた瞬間に部室から追い出される澤。頑張れば書けるという事が分かったのならもうここに用はない。
「あれ?ワタクシ占ってもらってねぇですわ」
 
 <五章らしいですわよ>
「四章が長かったから巻きで行きますわよ」
「な、なんの話?」
 文芸部の部室に戻ってきた一同はいよいよ官能小説を書くという話をしていた。いや、してないなまだ。これからします。
「という事で。今から一週間後にここで出来上がった官能小説を発表致しますわ」
「急だねぇー。一週間で脚本って書けるもん?」
「余裕ですわ!だってこの小説は思いついて二日で書いてますもの」
「だ、だから何の話?」
 こうして、一同の官能小説作成が始まった!あと作者の執筆事情を晒すな。
「う、うううう。書けないよぉ。どうしようー!」
 頭を抱えながら悩み続ける者。
「なるほど!こんな体勢もあるのか!こんなプレイも!勉強になるなぁ!!」
 様々な資料を見ながら作成に挑む者。
「こっのぶいちゅーばーくっそ面白れぇですわ!!!」
 ユーチューブをみながら寝転がりつつ煎餅を食べる者。小説の書き方は人によって様々である。
「ちなみに作者は車に乗ってる時に小説を書くと原稿が捗りますわ!何でかっていうと家にいる時はゲームとか漫画とかで小説を書く気が起きねぇからですわ!!!」
 あ、こら!何暴露してくれとんねん!いいからさっさと書けや!
「はぁぁぁ!?このワタクシに指図ですの!?次回を楽しみにしていなさい!べらぼうに傑作を見せてやりますわ!!!」
 お前にー?無理だろ。
「いけますわ。だってワタクシの小説を書くのはワタクシじゃない。作者!あなたですもの!!!」
 おい。マジでメタいから辞めろ。こんなんじゃ誰にも読んで貰えないでしょうが!!
「今更ですわ。ここまで読んでる人ならどんなメタ発言しても気分次第で読んでくださる筈ですわ」
 皆様ー!読んでくださいー!!!
 続く!
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