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3話 オトコの娘とゲーセン
しおりを挟む「晴が、オトコの娘、だと?」
「せやでー」
「バカな、あり得ん!こんなに可愛い顔して!オトコの娘だと!?そんな人物が、この世に存在しているのか!?」
「鏡見てみぃ?多分可愛い顔したオトコの娘が映ると思うで?」
自分が可愛い顔をしているから彼女が出来ないという事実を完全に忘れて目の前の事実に驚愕する。
「じゃあ、その化粧と口紅は!?化粧も口紅も女の子特有の」
「これは趣味やね。ジブン女装が趣味なんよ。それに今時は男でも口紅塗るしメイクする時代やで」
確かに今は多様性の時代。故に男だから化粧をしないとか女だから口紅をするとか言っていられない。
「待てよ」
そこで思い直す。確か蒼は友誼の彼女となってくれそうな彼女の友達を紹介すると言っていなかったか?
「ちょっとごめん先行ってて!蒼に話がある!!」
「え?急にどったん!?」
人の多い道を全力で走って蒼と雫が待っている場所へ辿り着く。
「おい蒼!晴が男ってどういう事だ!?お前俺に彼女の友達を紹介するって言ってたよな!?」
「おう、雫さんの友達だろ?別に僕は女の子の友達とは言ってないぞ」
「確かにそうだけど流れで女の子だろ!?普通に考えれば分かることだろ!?」
怒りで大声になっている友誼を宥めながら蒼は悪びれる事なく言葉を紡ぐ。
「あら、晴ちゃんがオトコの娘だって言ってなかったの?」
「うん。秘密の方が楽しいでしょ」
「それで騒がれてたらダメじゃない」
雫がやれやれという様にため息を吐く。どうやら雫は晴がオトコの娘である事を友誼に伝えてあるものだと思っていた様だ。
「ごめんなさいね友誼君。ちゃんと貴方を異性として見れくれそうな友人には声をかけたのよ。でも、貴方が男の子だって伝えても彼女達の見る目が変わらなくて」
「分かるよ。最初は「きゃー!この子可愛い!紹介?うんいいよ!友達になりたい!」とか言われたんだろ?でも俺が男だって言ったら「え?この子を男として?うーん。それは、無理かな?だってこの顔で男の子には見えないよ」みたいな事言われたんだろ!!!」
「せ、正解よ。確かに私も友誼君の事を異性としては見れないから、気持ちは分かるんだけど」
撃沈。友誼は膝から崩れ落ちた。頼んだ時はそんなに期待はしていなかった。しかしまさかの紹介してくれるという返事が来たのでウッキウキな気持ちだったのに。裏切られた気分だ。
「何でだよー!!何で女の子じゃないんだよ!!!」
「ごめんなぁー。オトコの娘で」
涙を流しながら床に膝を突く友誼の背後から可愛らしいピンク色のハンカチで手を拭く晴が帰ってくる。どうしようもない事を謝られるとこちらが申し訳なくなってくる。
「まさか同族だとは。って事は晴も顔のせいで彼女いないのか?」
「ジブンは彼女欲しいって思ってへんし。それに友誼君に彼女が出来へんのは顔じゃなくてそのがっつきすぎな性格のせいちゃうかな?女の子は男の子の下心くらいすぐ分かるんやで」
「晴ちゃんの言う通りよ。だから初めて会った時に友誼君が私の胸を凝視してたのもすぐ分かったわ」
雫の言葉に蒼が睨みつけてくる。これはおふざけの睨みではない。ガチなやつだ。
「ごめん。でも、どうしてもおっぱいに目が行っちゃうのは男の子の性だろ?」
「・・・僕は許そう」
「確かに雫ちゃんのおっぱいでっかいもんなぁ」
男陣が友誼の意見に同意する。良かった、みんな男なんだ。
「いや良くなーい!!結局俺に彼女は出来ないって事じゃんか!!このままじゃ一生彼女なし、生涯童貞ぃぃ」
「元気だしぃや。多分ジブンもそうやで」
「晴は童貞卒業したいと思ってるのか?」
「いんや?ジブンはもう女の子として生きようかな思ってる。手術はめちゃくちゃ怖いからせぇへんけど」
ならば問題ないではないか。友誼が悲しんでいるのは卒業したいのに卒業出来ないことだ。卒業しなくてもいいと考えている晴とは天と地ほどの差がある。
「そうだ!晴の友達を紹介してくれ!」
「ジブンの友達は大体雫ちゃんの友達や」
「終わったー!!!」
頭を抱えて床を殴りつける。しかし床に八つ当たりをしても悲しさは消えない。
「というかそろそろ立ってくんない?なんか僕が泣かせたみたいな雰囲気になってんの」
蒼の言葉で周りを見ると行き交う人々が友誼を見ていた。「ハーレムクソ野郎が!」という男の嫉妬もあれば「修羅場よ修羅場!」と昼ドラ感覚で友誼達を見ている主婦の方々もいた。
「お、お騒がせしました」
「移動するぞ。んでお前はさっさとトイレ行ってこい」
「そうだった」
悲しい事だが、致し方ない。世界は残酷だ。それでも、友誼は諦めない。絶対に彼女を作って童貞を卒業してみせる!
「だからさっさとトイレ行ってこいって」
決意を新たにした友誼の頭を蒼が叩き、友誼はそのままトイレに行った。
「うへっ!?ここは男子トイレですよ!?」
「男子なんですよ」
そしてトイレでもやっぱり性別を間違えられた。
「第二ラウンドの舞台はここ!ゲーセンや!」
「ゲーセンか。懐かしいな」
気を取り直して一同は三階のゲームセンターへやって来た。小さい頃はよくここでポケットのモンスターのゲームやドラゴンのボールのゲームをやっていたものだ。著作権?ギリギリ守られないでしょうか?(焦り)
「ゲーセンに来たらやる事は一つ!」
「カビカーだよな」
「エアホッケーか?」
「プリクラや!」
「何をするの?」
一同の解答が見事にバラけた。というか雫は答えを出していないが。
「えー。やっぱゲーセンって言うたらプリやろ!?」
「俺はプリクラなんて撮った事無いんだよ。プリクラなんて撮ったらますます可愛いとは言われるじゃんか」
「ええやん!プリ撮ろー!あかん?」
晴は上目遣いで瞳をうるうるさせながら友誼に懇願してくる。
「ぐっ!!」
手を顎の下へ持って来て拳は軽く握り、瞳を湿らせて上目遣い。実にあざといポーズだが、可愛い女の子にこんな事をされたら男は絶対に断れない。
「何言ってる俺!晴は男だろうが!!」
「友誼くーん」
語尾にハートマークが付くような甘ったるい声に友誼の意思が揺れ動く。別にプリクラくらいいいのでは無かろうか。実際彼女と一緒にプリクラを撮るのは友誼のやりたい事でもあったし。
「いいやダメだ!プリクラなんて男の撮るもんじゃねー!!!」
「はーいチーズ!!!」
友誼はプリクラを撮った。何故?野暮な事は聞くものでは無い。プリクラを撮ったって言ったのだから撮ったのだ。ちなみにプリクラを撮るのは凄く恥ずかしかったが全力でポーズを取って写真を撮った。そうするのがプリクラのマナーなのだそうだ。
「じゃ、次はエアホッケーだな」
落書きをしたプリクラを大切にしまい、四人はエアホッケーを楽しんだ。チームは友誼と晴。蒼と雫のペア。負けたチームが三回回って犬の真似をするという罰ゲームありの闇のデュエルだ。
「ふっ!俺のエアホッケー力を見せてやる!来い!ブルーアイズ!マレットドラゴン!」
「ふっ、甘いな。僕の力はそれを凌駕する!ブラックマレット魔術!」
「男の子ってこういうの好きよねー」
エアホッケーで暑くなる友誼と蒼を微笑ましそうに見守りながら参加する雫。その姿は彼女と彼氏というより息子とお母さんに見える。
「ふっふっふ。ジブンの戦闘力は五十四万やで!!」
「あら、男の子がもう一人」
ワイワイと盛り上がりながらエアホッケーをする。対戦は拮抗。一点取ったと思ったら一点を取り返される最高に燃える試合。その試合が動いたのは。
「ほりゃぁぁ!」
「なっ!待て晴!あんまり派手に動くと、すカートが!!!」
白熱して晴が大きく動くようになってからだ。
「そんな事言ってられへんやろ!?」
「そうだけど!そうなんだけどぉぉぉ!」
「今だけ雫さん!狙いは晴ちゃんのパンツを全力で見ようとしてる友誼だ!」
「分かったわ!」
「べ!別に見ようとなんてしてねぇし!男のパンツなんて微塵も興味ねーし!」
試合終了。七対五という凄く僅差で蒼、雫チームの勝ちと相成った。
「さあ、鳴いて貰おうか。わんちゃーん?」
「ぐ、ぐぅぅぅ!」
友誼が涙目で偉そうにしている蒼を睨みつける。その様子を見た男グループで遊びに来ていたB君は「シンプルに羨ましい」と語ったそうだ。
「うおおおおお!わん!」
「うんうん、よく出来ました」
「おい何動画撮ってやがる!さっさと消しやがれ!」
こうして友誼と晴の友達関係は始まった。
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