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一章 駆け出し魔剣士
一話 平和の代償
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かの有名なグロシアー・ミルコビッチは言った。
「世界を平和にする為には圧倒的な力を持つ存在がその他のものを支配しなければならない」
その言葉に全世界の人々は同意した。それと同時に一つの考えに全人類は支配された。自分達こそが圧倒的な力を持つ存在であると。この国、ユニヴァールの支配者は我々であると。そうしてユニヴァールを支配する為の戦争が行われた。ユニヴァールには大きく分けて四つの国があった。スタレイス。ワールスア。アースラ。エラス。この四国は自分達の国こそが世界を支配すると信じて疑わなかった。そうして巻き起こった戦争を世の人々はこう呼んだ。
平和戦争
「学園長による挨拶!」
平和戦争が引き起こされてから百三十四年。ユニヴァールの最も小さな国、スタレイス帝国では魔剣士と呼ばれる少年少女達の卒業式が行われていた。
「皆、よくぞ努力をして魔剣士学校を卒業した。君達は今日から立派な魔剣士として、我々スタレイスの為に戦ってもらう。今日は君達の卒業式にして入隊式だ!」
学園長の挨拶に卒業生達は皆気が引き締まっている。
「うむ、良い目をしている。これより部隊を分けるが、何か質問のある者は?」
学園長のその言葉にとある卒業生が真っ直ぐに手を挙げた。
「ほう。宜しい、申してみよ」
卒業生の質問に学園長は少し嬉しそうに笑い質問を許す。この様な場で質問をする勇気のある卒業生はここ三十年現れていない。故に学園長は少し期待したのだ。その卒業生がどの様な人間で、どんな質問をしてくるのかと。手を挙げた男は学園長の許しが出た後息を吸って、大声で質問を投げかけた。
「バナナはおやつに入りますか!!?」
「・・・うん?」
静かだった卒業式会場はザワザワと騒ぎ始めた。それも当然だ。卒業式にして入隊式という人生で一番と言ってもいい日にこんな馬鹿げた質問が出たのだから。
「おい!何を考えてそんなふざけた質問を行なっている!!アルタイル・ヴェルガス!!」
魔剣士学校の教員から当然の怒号が飛び、質問をした生徒、アルタイルが首を傾げる。
「いえ、おやつは三百イースまでと聞いたんですけど。バナナっておやつかなと思いまして」
アルタイルの言葉に会場は再び雑音で塗れる。当然だ。本当になぜその質問が出たのか分からないのだから。
「アル。言葉足らずだよ。ここは私に任せて。すぅ、先生!バナナをおやつに含めるのならばメロンはおやつになりますか!?スイカは!?きゅうりは!?はっきりとお答え下さい!」
アルタイルに歩み寄り、アルタイル以上に可笑しな言葉を口走る少女がいた。ベガ・ヴェルガス。アルタイルの双子の妹にして最大の理解者だ。
「外に出ていろ!!!」
こうしてアルタイル・ヴェルガスとベガ・ヴェルガスは無事魔剣士学校を卒業。本日よりれっきとした魔剣士と認められたのだった。そして数時間後。
「アルタイル。ベガ。君達はどうしてそう目立ちたがり屋なんだ」
「目立ちたいから質問した訳じゃない。純粋に分からなかったから聞いたんだ」
卒業式終了後、外に出されていた二人に声をかけてきた人物がいた。立派な鎧に身を包み爽やかな匂いを漂わせる男、サターンだ。
「しっかしあんた達は本当に面白いね!入学した時からだけど、本当に飽きない!」
「うん。びっくりした」
サターンの後ろから話しかけてきた女性二人はマーズとジュピター。三人ともアルタイルとベガの学友だ。卒業した今は学友というよりただの友人の方が正しいのかも知れないが。
「マーズ。私達は何処所属になった?」
「何と、偶然にもみんな同じ部隊だよ!早速全部隊でエラスに攻め込むんだってさ!」
どうやらアルタイルとベガがいない間に所属部隊まで決められていた様だ。
「嘘は良くない。アルタイルとベガは同じ部隊。そして私達三人も同じ部隊。だけど私達とベガ達は違う部隊」
「ジュピター!こういうのはジョークで軽く流すもんじゃーん!」
嬉しそうにジュピターに抱きつくマーズを「暑い」と言って引き離すジュピター。この二人の絡みをベガはそれなりに気に入っていたが違う部隊配属なるともうなかなか見る事が出来なさそうだ。
「そういえば聞いていなかった。君達は何故魔剣士を志したんだ?」
魔剣士。それは名前の通り魔法と剣を操り戦う者で、今の戦争の全てを任させれている職業だ。今も尚止まる勢いのない平和戦争で真っ先に死ぬ職業、それが魔剣士だ。
「「カッコいいから!」」
その職業になりたい理由をアルタイルとベガは即答した。
「そ、そうか。まあそれもいいだろう。最近はそういう動機で魔剣士を目指す者も増えていると聞くしな」
「そういうサターンはどうなんだ?何で魔剣士に?」
アルタイルに問われたサターンは少し考えてから「少し重い話になるが」と言葉を紡ぐ。
「俺の両親が魔剣士だったんだ。両親は世界を平和にする為に戦い、力尽きた。ならば、次は俺が戦い、必ず世界を平和にしてみせる」
「カッコイイじゃん!サターンならきっと出来るよ」
「そういうマーズは?」
「私は大した理由じゃないさ。ただ弟と妹が戦争に出なくていい様に。私達で世界を平和にしたいって思ったんだ」
「いい理由。私は自分の為。私は、他の世界を見てみたい。ワールスアやアースラに行って、自由に観光したい」
ジュピターの魔剣士を志す理由に皆は笑って答える。無言の肯定にジュピターは満足そうに頷く。
「さあ、初陣の時間だ。各自、生きてまた会おう!」
サターンの言葉に皆は頷きそれぞれの持ち場へ移動する。
「俺たちも行こうか、ベガ」
「背中は任せたからね、アル」
こうして初陣は幕を開けた。
「突撃ー!!」
指揮官の言葉に従ってアルタイルとベガ、それ以外の新入隊員達が勢いよく突撃する。アルタイルとベガ、両名の防具は必要最低限。盾などは一切持たず頑丈だが重すぎない質で出来た服のみだ。
「舐めてんのか、戦場を!」
そんなアルタイルを見た敵兵が舌打ちをしてアルタイルに狙いを定める。敵の数は多数。
「来い」
アルタイルが小さく呟くとその手の中に真っ赤に燃え上がる剣が現れる。
「ふっ!」
振り下ろされる敵の剣を受け止め、弾き返す。そこで生まれた隙を見逃さずアルタイルは敵兵を切り裂いた。
「なっ!」
切り裂かれた仲間を見た他の敵兵が驚き、またしても隙が生まれる。余りにも素人レベルの敵兵にアルタイルは肩を落としながら同じく命を奪った。
「うぉぉぉぉ!!」
だが、剣だけでは限界がある。何故なら敵はまだ五十は下らない。だからこそ、魔法があるのだ。
「フレアフレイム」
アルタイルが勢いよく剣を振り下ろすとアルタイルの剣から高濃度の炎が放出される。その炎は向かってくる敵、逃げ出す敵、呆然とする敵を飲み込み、焼き尽くす。
「私の獲物残しといてよ」
「ああ、ごめん。俺が強すぎたから」
「ムカつく」
自らの力を誇る様に笑うアルタイルにベガがゲンコツを入れる。確認できる敵兵はなし。初陣は疑う余地がない程完璧な勝利を収めた。この部隊は。
「・・・は?」
勝利の数分後。別部隊の救助要請を聞き届けた一同は直様援軍へ向かったが、そこにあったのは死体の海だった。
「これ、みんなスタレイスの魔剣士か?」
全滅。それ以外に適した言葉は無かった。その場にいるスタレイスの魔剣士達は皆息絶えていた。その中には
「サターン」
当然アルタイルの友人の姿もあった。
「アル。こっちに来て、・・いや。やっぱり来ないで」
ベガの弱々しい言葉にアルタイルは迷わずベガが立っている方へ向かう。そこにあったのはマーズと思われる人物の首から下の体。そしてその体に抱き抱えられていたのはジュピターの頭部だった。
「・・・ベガ。俺は決めたよ」
アルタイルは本当にただカッコよさそうだから魔剣士になると決めた。そして先程も、自分の力を見せつけたいからという軽さで敵兵を殺した。しかし。人々の命はそんなに軽い物ではない。サターンは親を継いで世界を平和にしようと志した。マーズは家族の為に平和を望んだ。ジュピターは自らの為に平和を願った。だが、そんな善良な人間達は皆命を落とした。アルタイルが殺した人間達の中にも、この様な願いや目的を抱えた人間達がいたのだろう。ならば。ならばアルタイル・ヴェルガスは。
「俺は、この戦争を終わらせる。綺麗事は言わない。俺はきっとこの戦争を終わらせる為に、幾万人もの命を殺すのだろう」
それでも、絶対に世界を平和にする。争いのない世界を作る。もう二度と、罪のない人間が死なない様に。
「力を貸してくれ、俺は。世界を平和にしたい」
「・・・私も、彼女達の犠牲を無駄にしたく無い。争いのない世界が作れるなら、それを望みたい。望む所だよ、私もアルと戦う」
双子の魔剣士はここに誓った。必ず世界から戦争を無くすと。世界を平和にすると。例え、この先にどれだけ平和の代償があったとしても。
第一話 平和の代償
「世界を平和にする為には圧倒的な力を持つ存在がその他のものを支配しなければならない」
その言葉に全世界の人々は同意した。それと同時に一つの考えに全人類は支配された。自分達こそが圧倒的な力を持つ存在であると。この国、ユニヴァールの支配者は我々であると。そうしてユニヴァールを支配する為の戦争が行われた。ユニヴァールには大きく分けて四つの国があった。スタレイス。ワールスア。アースラ。エラス。この四国は自分達の国こそが世界を支配すると信じて疑わなかった。そうして巻き起こった戦争を世の人々はこう呼んだ。
平和戦争
「学園長による挨拶!」
平和戦争が引き起こされてから百三十四年。ユニヴァールの最も小さな国、スタレイス帝国では魔剣士と呼ばれる少年少女達の卒業式が行われていた。
「皆、よくぞ努力をして魔剣士学校を卒業した。君達は今日から立派な魔剣士として、我々スタレイスの為に戦ってもらう。今日は君達の卒業式にして入隊式だ!」
学園長の挨拶に卒業生達は皆気が引き締まっている。
「うむ、良い目をしている。これより部隊を分けるが、何か質問のある者は?」
学園長のその言葉にとある卒業生が真っ直ぐに手を挙げた。
「ほう。宜しい、申してみよ」
卒業生の質問に学園長は少し嬉しそうに笑い質問を許す。この様な場で質問をする勇気のある卒業生はここ三十年現れていない。故に学園長は少し期待したのだ。その卒業生がどの様な人間で、どんな質問をしてくるのかと。手を挙げた男は学園長の許しが出た後息を吸って、大声で質問を投げかけた。
「バナナはおやつに入りますか!!?」
「・・・うん?」
静かだった卒業式会場はザワザワと騒ぎ始めた。それも当然だ。卒業式にして入隊式という人生で一番と言ってもいい日にこんな馬鹿げた質問が出たのだから。
「おい!何を考えてそんなふざけた質問を行なっている!!アルタイル・ヴェルガス!!」
魔剣士学校の教員から当然の怒号が飛び、質問をした生徒、アルタイルが首を傾げる。
「いえ、おやつは三百イースまでと聞いたんですけど。バナナっておやつかなと思いまして」
アルタイルの言葉に会場は再び雑音で塗れる。当然だ。本当になぜその質問が出たのか分からないのだから。
「アル。言葉足らずだよ。ここは私に任せて。すぅ、先生!バナナをおやつに含めるのならばメロンはおやつになりますか!?スイカは!?きゅうりは!?はっきりとお答え下さい!」
アルタイルに歩み寄り、アルタイル以上に可笑しな言葉を口走る少女がいた。ベガ・ヴェルガス。アルタイルの双子の妹にして最大の理解者だ。
「外に出ていろ!!!」
こうしてアルタイル・ヴェルガスとベガ・ヴェルガスは無事魔剣士学校を卒業。本日よりれっきとした魔剣士と認められたのだった。そして数時間後。
「アルタイル。ベガ。君達はどうしてそう目立ちたがり屋なんだ」
「目立ちたいから質問した訳じゃない。純粋に分からなかったから聞いたんだ」
卒業式終了後、外に出されていた二人に声をかけてきた人物がいた。立派な鎧に身を包み爽やかな匂いを漂わせる男、サターンだ。
「しっかしあんた達は本当に面白いね!入学した時からだけど、本当に飽きない!」
「うん。びっくりした」
サターンの後ろから話しかけてきた女性二人はマーズとジュピター。三人ともアルタイルとベガの学友だ。卒業した今は学友というよりただの友人の方が正しいのかも知れないが。
「マーズ。私達は何処所属になった?」
「何と、偶然にもみんな同じ部隊だよ!早速全部隊でエラスに攻め込むんだってさ!」
どうやらアルタイルとベガがいない間に所属部隊まで決められていた様だ。
「嘘は良くない。アルタイルとベガは同じ部隊。そして私達三人も同じ部隊。だけど私達とベガ達は違う部隊」
「ジュピター!こういうのはジョークで軽く流すもんじゃーん!」
嬉しそうにジュピターに抱きつくマーズを「暑い」と言って引き離すジュピター。この二人の絡みをベガはそれなりに気に入っていたが違う部隊配属なるともうなかなか見る事が出来なさそうだ。
「そういえば聞いていなかった。君達は何故魔剣士を志したんだ?」
魔剣士。それは名前の通り魔法と剣を操り戦う者で、今の戦争の全てを任させれている職業だ。今も尚止まる勢いのない平和戦争で真っ先に死ぬ職業、それが魔剣士だ。
「「カッコいいから!」」
その職業になりたい理由をアルタイルとベガは即答した。
「そ、そうか。まあそれもいいだろう。最近はそういう動機で魔剣士を目指す者も増えていると聞くしな」
「そういうサターンはどうなんだ?何で魔剣士に?」
アルタイルに問われたサターンは少し考えてから「少し重い話になるが」と言葉を紡ぐ。
「俺の両親が魔剣士だったんだ。両親は世界を平和にする為に戦い、力尽きた。ならば、次は俺が戦い、必ず世界を平和にしてみせる」
「カッコイイじゃん!サターンならきっと出来るよ」
「そういうマーズは?」
「私は大した理由じゃないさ。ただ弟と妹が戦争に出なくていい様に。私達で世界を平和にしたいって思ったんだ」
「いい理由。私は自分の為。私は、他の世界を見てみたい。ワールスアやアースラに行って、自由に観光したい」
ジュピターの魔剣士を志す理由に皆は笑って答える。無言の肯定にジュピターは満足そうに頷く。
「さあ、初陣の時間だ。各自、生きてまた会おう!」
サターンの言葉に皆は頷きそれぞれの持ち場へ移動する。
「俺たちも行こうか、ベガ」
「背中は任せたからね、アル」
こうして初陣は幕を開けた。
「突撃ー!!」
指揮官の言葉に従ってアルタイルとベガ、それ以外の新入隊員達が勢いよく突撃する。アルタイルとベガ、両名の防具は必要最低限。盾などは一切持たず頑丈だが重すぎない質で出来た服のみだ。
「舐めてんのか、戦場を!」
そんなアルタイルを見た敵兵が舌打ちをしてアルタイルに狙いを定める。敵の数は多数。
「来い」
アルタイルが小さく呟くとその手の中に真っ赤に燃え上がる剣が現れる。
「ふっ!」
振り下ろされる敵の剣を受け止め、弾き返す。そこで生まれた隙を見逃さずアルタイルは敵兵を切り裂いた。
「なっ!」
切り裂かれた仲間を見た他の敵兵が驚き、またしても隙が生まれる。余りにも素人レベルの敵兵にアルタイルは肩を落としながら同じく命を奪った。
「うぉぉぉぉ!!」
だが、剣だけでは限界がある。何故なら敵はまだ五十は下らない。だからこそ、魔法があるのだ。
「フレアフレイム」
アルタイルが勢いよく剣を振り下ろすとアルタイルの剣から高濃度の炎が放出される。その炎は向かってくる敵、逃げ出す敵、呆然とする敵を飲み込み、焼き尽くす。
「私の獲物残しといてよ」
「ああ、ごめん。俺が強すぎたから」
「ムカつく」
自らの力を誇る様に笑うアルタイルにベガがゲンコツを入れる。確認できる敵兵はなし。初陣は疑う余地がない程完璧な勝利を収めた。この部隊は。
「・・・は?」
勝利の数分後。別部隊の救助要請を聞き届けた一同は直様援軍へ向かったが、そこにあったのは死体の海だった。
「これ、みんなスタレイスの魔剣士か?」
全滅。それ以外に適した言葉は無かった。その場にいるスタレイスの魔剣士達は皆息絶えていた。その中には
「サターン」
当然アルタイルの友人の姿もあった。
「アル。こっちに来て、・・いや。やっぱり来ないで」
ベガの弱々しい言葉にアルタイルは迷わずベガが立っている方へ向かう。そこにあったのはマーズと思われる人物の首から下の体。そしてその体に抱き抱えられていたのはジュピターの頭部だった。
「・・・ベガ。俺は決めたよ」
アルタイルは本当にただカッコよさそうだから魔剣士になると決めた。そして先程も、自分の力を見せつけたいからという軽さで敵兵を殺した。しかし。人々の命はそんなに軽い物ではない。サターンは親を継いで世界を平和にしようと志した。マーズは家族の為に平和を望んだ。ジュピターは自らの為に平和を願った。だが、そんな善良な人間達は皆命を落とした。アルタイルが殺した人間達の中にも、この様な願いや目的を抱えた人間達がいたのだろう。ならば。ならばアルタイル・ヴェルガスは。
「俺は、この戦争を終わらせる。綺麗事は言わない。俺はきっとこの戦争を終わらせる為に、幾万人もの命を殺すのだろう」
それでも、絶対に世界を平和にする。争いのない世界を作る。もう二度と、罪のない人間が死なない様に。
「力を貸してくれ、俺は。世界を平和にしたい」
「・・・私も、彼女達の犠牲を無駄にしたく無い。争いのない世界が作れるなら、それを望みたい。望む所だよ、私もアルと戦う」
双子の魔剣士はここに誓った。必ず世界から戦争を無くすと。世界を平和にすると。例え、この先にどれだけ平和の代償があったとしても。
第一話 平和の代償
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