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第8話 神、友を作る

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「やぁ! 待ってたぞマルス! パパは嬉しいぞ!」
「ただいまです」

「あれ!? さっきどっかに飛んでったはずじゃ」



 俺の魔法によって吹っ飛んでったはずの父が、俺達よりも先に家についていることに、アドメイヤは随分と驚いていた。
 
 父ならばあり得るだろうと俺は驚かなかったが、かすり傷一つ付いていないのは些か悔しくはある。



「アークベアに襲われかけてた子だね。俺の名はアルフリート、マルスのお父さんだよ」

「僕の名前はアドメイヤと申します。助けていただいてありがとうございます!」


「父上、アドメイヤを招待しても良いですか?」

 

 父は笑顔で、もちろんだとも! と迎え入れてくれた。



「外から見ても凄かったけど中も凄い、マルネスター君の家はお金持ちなんだね」



 アドメイヤは物珍しそうにあたりを見回し、出されたお茶とクッキーに目を丸くしている。
 


「マルスでいいよ、アドメイヤはこの村の人間なのか?」



 そう聞くとアドメイヤは嬉しそうに、僕もメイヤで良いよと言った。

 メイヤは村の人間ではあるが、森の中で祖母と2人きりで静かに暮らしているとのことだ。
 1人で薬草取りをしている時にアークベアと遭遇してしまい、そこへたまたま俺が来たから助かったとのこと。



「そうなのか、それにしてもアークベアなんてここら辺には生息していないはずなんだがな……」

「そうなのですか? 父上」

「僕もあんな怖い魔獣に遭ったのは初めてです。スーパの森にはおとなしい生き物しか居ないはずなのに」




 俺達が生活しているスーパの村は魔界から遠く離れていて、強力な魔獣やモンスターは居ない人間が住みやすい地域なのだ。
 
 アークベアといえば俺が強い魔獣を作りたいと思って創造したやつなので、こんな所にいるのはおかしい、何かあったのだろうか?



「マルス! 怪我はない!?」



 考え込んでいると母が慌てた様子でコチラに駆け寄ってきた。
 使用人から魔獣と遭遇した事を聞いたのだろう、しきりに俺の体を触り怪我がないかを調べてくる。



「あぁ、良かった。貴方も大丈夫? 怖かったでしょう、怪我はない?」



 
 メイヤにも同じく怪我がないかを調べ、念の為に回復魔法をかけておくわね。と魔法をかけてくれた。

 父はカウントされてないらしく、そっちのけにされ少し寂しそうにしていたが、彼を一番よく知っている母からすれば当然のことだろう。



「あっ! そろそろ帰らないとお婆ちゃんが心配しちゃう!」

「ああ、そうだね。マルス、アドメイヤ君を一緒に送ってあげよう」



 メイヤは薬草を取りに外へ出てたのだ、帰りが遅くなると不安になるだろう、また魔獣が出ては危険なので父と共に家まで送ってやることにした。







「送って頂いてありがとうございます。」

「いいんだよ、気をつけてね」
「この位どうってことは無いさ」



「あの、もし良かったら僕と友達になってくれないかな?」



 メイヤが帰り際に、おずおずとそう言った。

 友達だと? この神とか? そう思ったが俺は魔法や知識を蓄える為に余り外へ出なかったせいで6歳にもなって友達の1人もいない、母がそれを心配していたが……もうする必要はないだろう。



「勿論、メイヤが俺の友達第一号だ光栄に思うがいい」
「! 僕も友達ができるの初めてなんだ! これからよろしくね!」




 俺達は固く握手を交わし、また会うことを約束して別れた。
 
 父はその光景を暖かい目で見つめていて、帰り道の途中でこれでもかと俺の頭をグシャグシャにしてきたが不思議と悪い気はしなかった。



「お友達が出来たの!? ママ嬉しいわ! またお家に連れてきてもいいのよ、歓迎するからね!」



 母に告げると俺を抱きしめながら喜んだ。
 父も同様に喜んでいて、暫く2人で輪になって回っていたのを使用人に見られているのに気がついて恥ずかしそうにしていた。



********



  次の日、早速メイヤの家に母から渡された手土産を持ち遊びに行く、父達が夜中の内に森をくまなく調べがあのアークベア以外はいなかったようで、俺だけでも良いと許可を得たのだ。



「あ、マルス。僕も丁度行こうとしてたんだ」
「そうか、奇遇だな。これは母からの手土産だ、受け取るがいい」
 


 ありがとう。メイヤは嬉しそうに受け取り、家の中へ持っていく。
 


「マルスくんだね。わざわざありがとう、メイヤと仲良くしてね」




 そうするとメイヤの祖母が礼をしに来た。
 白髪の優しげな彼女に、任せるが良い。と返事をして遊びにいった。



「して、遊びというのは何をすればいいのだ?」
「え? んー、気に登ったり、虫を捕まえたり、あとは変な色のキノコを探したり?」



 はたしてそれは面白いのだろうか?
 
 文句を言う前にやってみるべきか、一先ずメイヤが言うとおりに、木登り、虫の捕獲、珍種のキノコ探しをやってみた。



「まったく面白くないぞ!」 
「え? そうかなぁ、僕は楽しいけど」



 メイヤは楽しげだったが、俺にとってはこれをしてなんの意味があるのだとしか思えない。
 
 人間の子供がする遊びなのだから高レベルのモノを要求する気は無いがもっとある筈だ。



「そうだ。メイヤよ、俺と隠れん坊をしようじゃないか!」
「それ僕も知ってる! やろう!」



 ジャンケンの結果、俺が隠れる側になった。
 メイヤには悪いが勝ったも当然だ。やるからには全力でやる。

 10数えている間に魔法で穴を作り、それをバレないように塞いで完成だ。これでは見つかりようが無いだろう!



「みーつけた!」
「え?」



 何故かメイヤは迷う事なく真っ直ぐコチラに歩いてきて、即座に居場所がバレてしまった。



「何故だ! いや、分かったぞ、俺が隠れるのを見ていたな貴様! もう一度仕切り直しだ!」

「え? うん、別にいいけど」



 ズルをしたに違いないと今度は目を塞がせ、見えない所まで遠く離れた上で、今度は大木の中に身を潜め更にそこを塞ぐ。

 今度こそ分かるはずがない! 神すら欺く完璧な作戦。これで気が付かれようものなら俺は神の座をゆずってやっても……


 
「凄いとこに隠れたね。みーつけた!」
「何故だぁー!」



 何か秘密があるに違いない、メイヤを問い詰めてやると、マルスの気配がしたからだと言う。

 気配……父も隠れん坊で探すコツは気配を探る事だと言っていた気がする。
 あれはもしかして遊びではなく修行の一貫だったのか? 相手がどこにいるか探る技術、これはかなり重要になる筈だ。



「メイヤ、その気配とやらを俺に教えてくれ!」

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