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文化祭
第8話 勝手に撮られた写真は閉会式で…
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「こうして今年も無事に閉会式を迎えられたのも皆さんの協力のおかげです…」
ステージで文化祭の総合司会が閉会の挨拶をしているのを聞きながら、栄一に撮られた写真がどうなったのかが頭の片隅に引っかかっていた。
「なぁ、あの写真、上手く使うってどうしたんだよ。」
「まぁまぁ、それはお楽しみってことで。」
閉会式会場まで長名をエスコートしてきた栄一に何度も問い質すが、はぐらかされるばかりで写真をどうしたのか教えてくれない。
いつの間にか、閉会式では文化祭の各部門の優秀クラス発表が始まっていた。総合司会が勿体ぶった話し方で解説しながら優秀クラスを発表していく。
「…ということで、クラス展示部門優秀クラスは1年6組でしたー!…それでは、これより飲食部門の優秀クラスを発表します!優秀クラスは、奇抜な衣装を見事に着こなす女子の人気はもちろん、恥を忍んでメイド姿になった男子への同情票も集まった……2年4組のメイド喫茶でーす!…」
2年4組と聞こえた瞬間、弾けるように叫び声をあげるクラスメイトのおかげで続きが全然聞こえなくなった。文化祭委員と衣装担当の生徒は抱き合いながら涙まで流している。準備で一番苦労した人達だから感慨もひとしおなのだろう。その後ろで、まだメイド服を着ている女装モンスター達が調子に乗ってポーズをとっていて無駄な盛り上がりを見せている。感動が一気に冷めてしまった。
「…以上で優秀クラス…は終わり…続いて、…コンテストの結果…」
興奮冷めやらぬクラスメイトの声にかき消されていまいち聞こえないが、コンテストの結果発表が始まったようだ。
「…ということで、カップルフォトコンテスト第1位は…」
――カップルフォトコンテストという恥晒しイベントの開催。美少女と撮られた写真。上手く使うと言った悪友……これは、アリスの顔面偏差値のおかげで入賞してしまうやつだ。今も、写真でもメイド服を着たままだ…晒し者になってしまう。
「…2年4組の佐藤君、広井さんカップルでーす!まさに美女と野獣、というかモンスターが楽しそうにしている様子が好評だったようです。それでは、選ばれた二人は舞台へどうぞ。」
この女装をモンスターと表現する点では総合司会とは意見が合いそうだ。そんなことはどうでも良い。席を立つのを渋っていると、栄一が得意顔をしながら舞台に行くように促してくる。まるで良いことをしたかのように振る舞う姿が癪に触る。栄一に踊らされているようでムカつくから、軽く小突いてささやかな仕返しをしてから舞台に向かう。
同様にクラスメイトに押し出され、顔を真っ赤にしたアリスが隣にやって来る。よし、選ばれてしまったものは仕方ない。腹をくくって、舞台で表彰されよう!まだメイド服のままであることも忘れて堂々とするしかない!…
腹をくくったこちらとは対照的に、アリスは舞台に上がってもまだ恥ずかしそうにしていた。無理もない、今年転校してきて初めての文化祭でほとんどが知らない人の中、全校生徒の前に立たされるなんてもはや拷問だ。
「後で栄一にはよーくよーーく言っておくから。今はとにかく楽しんでしまおう!」
小声でアリスにささやき、直後にその手をつかみ全校生徒に向かって手を振る。隣にいるアリスがどんな顔をしているのか見ることができないが、つないだ手をアリスも一生懸命振っている感触はあった。どうせほとんどの好奇の目はこの女装モンスターに向くのだから、アリスは少しでも楽しんで誇ってくれたらいい。そう考えながら、柄にもなく少し無理をして大げさに喜んだりした。
閉会式が終わり、教室に戻って片付けをしながら優秀クラスに選ばれたことを喜び合ったり、カップルコンテストについてイジられたりした。
コンテストについてみんなが一致した意見としては、アリスのおかげであるということは間違いなかった。そんなことは言うまでもなく、ぐうの音も出ないくらい正しい意見だ。
「まぁまぁ、それもこれも素晴らしい写真を撮ってコンテストにまで応募してあげたこの私があってこそなんですけどね。」
盗撮の反省をするどころか、むしろ誇らしげにしている栄一には1週間購買のパンを奢ってもらうことで話がついた。もちろんアリスの分も含めて二人分だ。
舞台から降りた瞬間からアリスは女子やファンに囲まれてしまい、声を掛けることさえできていない。こっちには栄一とイジりにくる男子くらいしか寄って来ずにガラガラなのに。
「栄一君が盗撮した写真だったって聞いた時はびっくりしちゃったよ。でも1位になれるなんて本当に良い写真だったんだね。」
コンテストのねぎらいに来てくれる女子なんて長名くらいなものだ。
「もし私が隣だったらコンテストで選ばれたりなんかしなかっただろうしね。アリスちゃんと回れて感謝しないとだね。」
「いやいや、長名は熱狂的なファンもいるんだから、コンテストに出しさえすれば選ばれるって!」
「そんな人がいるの?…じゃあ来年は一緒に…」
「何を隠そう!この私、園田栄一が長名ちゃんファンクラブ創設者だからね!今は30人くらい会員がいるよ!」
「栄一はいいから!飲み物でも買ってこい。ごめん長名、何か言ってた?」
「ううん、何でもない。私も何か買ってこよーっと。」
長名は小声で何か言っているようだったが、聞き取れないまま栄一と一緒に出て行ってしまった。
一人になってふとアリスの方を見てみるが、クラスの女子と和気あいあいと話し続けている。恥ずかしい思いもしたが、こうしてアリスが楽しく過ごすきっかけになったと思えば悪い気はしないものだ。
こうして、今回もフラグを大いに回収し、これまでの人生の中で最も騒がしく、そして最も充実した文化祭が幕を下ろしたのだった。
ステージで文化祭の総合司会が閉会の挨拶をしているのを聞きながら、栄一に撮られた写真がどうなったのかが頭の片隅に引っかかっていた。
「なぁ、あの写真、上手く使うってどうしたんだよ。」
「まぁまぁ、それはお楽しみってことで。」
閉会式会場まで長名をエスコートしてきた栄一に何度も問い質すが、はぐらかされるばかりで写真をどうしたのか教えてくれない。
いつの間にか、閉会式では文化祭の各部門の優秀クラス発表が始まっていた。総合司会が勿体ぶった話し方で解説しながら優秀クラスを発表していく。
「…ということで、クラス展示部門優秀クラスは1年6組でしたー!…それでは、これより飲食部門の優秀クラスを発表します!優秀クラスは、奇抜な衣装を見事に着こなす女子の人気はもちろん、恥を忍んでメイド姿になった男子への同情票も集まった……2年4組のメイド喫茶でーす!…」
2年4組と聞こえた瞬間、弾けるように叫び声をあげるクラスメイトのおかげで続きが全然聞こえなくなった。文化祭委員と衣装担当の生徒は抱き合いながら涙まで流している。準備で一番苦労した人達だから感慨もひとしおなのだろう。その後ろで、まだメイド服を着ている女装モンスター達が調子に乗ってポーズをとっていて無駄な盛り上がりを見せている。感動が一気に冷めてしまった。
「…以上で優秀クラス…は終わり…続いて、…コンテストの結果…」
興奮冷めやらぬクラスメイトの声にかき消されていまいち聞こえないが、コンテストの結果発表が始まったようだ。
「…ということで、カップルフォトコンテスト第1位は…」
――カップルフォトコンテストという恥晒しイベントの開催。美少女と撮られた写真。上手く使うと言った悪友……これは、アリスの顔面偏差値のおかげで入賞してしまうやつだ。今も、写真でもメイド服を着たままだ…晒し者になってしまう。
「…2年4組の佐藤君、広井さんカップルでーす!まさに美女と野獣、というかモンスターが楽しそうにしている様子が好評だったようです。それでは、選ばれた二人は舞台へどうぞ。」
この女装をモンスターと表現する点では総合司会とは意見が合いそうだ。そんなことはどうでも良い。席を立つのを渋っていると、栄一が得意顔をしながら舞台に行くように促してくる。まるで良いことをしたかのように振る舞う姿が癪に触る。栄一に踊らされているようでムカつくから、軽く小突いてささやかな仕返しをしてから舞台に向かう。
同様にクラスメイトに押し出され、顔を真っ赤にしたアリスが隣にやって来る。よし、選ばれてしまったものは仕方ない。腹をくくって、舞台で表彰されよう!まだメイド服のままであることも忘れて堂々とするしかない!…
腹をくくったこちらとは対照的に、アリスは舞台に上がってもまだ恥ずかしそうにしていた。無理もない、今年転校してきて初めての文化祭でほとんどが知らない人の中、全校生徒の前に立たされるなんてもはや拷問だ。
「後で栄一にはよーくよーーく言っておくから。今はとにかく楽しんでしまおう!」
小声でアリスにささやき、直後にその手をつかみ全校生徒に向かって手を振る。隣にいるアリスがどんな顔をしているのか見ることができないが、つないだ手をアリスも一生懸命振っている感触はあった。どうせほとんどの好奇の目はこの女装モンスターに向くのだから、アリスは少しでも楽しんで誇ってくれたらいい。そう考えながら、柄にもなく少し無理をして大げさに喜んだりした。
閉会式が終わり、教室に戻って片付けをしながら優秀クラスに選ばれたことを喜び合ったり、カップルコンテストについてイジられたりした。
コンテストについてみんなが一致した意見としては、アリスのおかげであるということは間違いなかった。そんなことは言うまでもなく、ぐうの音も出ないくらい正しい意見だ。
「まぁまぁ、それもこれも素晴らしい写真を撮ってコンテストにまで応募してあげたこの私があってこそなんですけどね。」
盗撮の反省をするどころか、むしろ誇らしげにしている栄一には1週間購買のパンを奢ってもらうことで話がついた。もちろんアリスの分も含めて二人分だ。
舞台から降りた瞬間からアリスは女子やファンに囲まれてしまい、声を掛けることさえできていない。こっちには栄一とイジりにくる男子くらいしか寄って来ずにガラガラなのに。
「栄一君が盗撮した写真だったって聞いた時はびっくりしちゃったよ。でも1位になれるなんて本当に良い写真だったんだね。」
コンテストのねぎらいに来てくれる女子なんて長名くらいなものだ。
「もし私が隣だったらコンテストで選ばれたりなんかしなかっただろうしね。アリスちゃんと回れて感謝しないとだね。」
「いやいや、長名は熱狂的なファンもいるんだから、コンテストに出しさえすれば選ばれるって!」
「そんな人がいるの?…じゃあ来年は一緒に…」
「何を隠そう!この私、園田栄一が長名ちゃんファンクラブ創設者だからね!今は30人くらい会員がいるよ!」
「栄一はいいから!飲み物でも買ってこい。ごめん長名、何か言ってた?」
「ううん、何でもない。私も何か買ってこよーっと。」
長名は小声で何か言っているようだったが、聞き取れないまま栄一と一緒に出て行ってしまった。
一人になってふとアリスの方を見てみるが、クラスの女子と和気あいあいと話し続けている。恥ずかしい思いもしたが、こうしてアリスが楽しく過ごすきっかけになったと思えば悪い気はしないものだ。
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