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第36話 君とのデート当日④
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メインの料理を運んでくる足音が近づいてくる。
「こちらシェフのスペシャルメニュー、お母さんカレーです。」
二人の前に運ばれてきたのは、ごく普通の家のカレーだった。ここまでフランス料理のコースが続いていたからきっと驚いたでしょ。そう思って山石君の方に目を向けると、山石君は給仕してくれた人に釘付けになっていた。
「……母さん!こんなところで何やってるの!?……いや、ほんとに何やってるのだよ!」
「つばめちゃんが楽しそうなこと計画してるみたいだから来ちゃった。」
「来ちゃった、じゃないから!友達と一緒に母親のコスプレ姿見せられるこっちの身になってよ……」
看護師さんたち同様、お母さんもデートの相談をしたらノリノリで店員さん役を買って出てくれた。その上、メイド服まで自前で用意してくれて、こうしてメインの給仕係をやってくれているのだ。
「お母さん、メイド服も似合いますね。まだまだお若い。」
「そうかなぁ。今度お父さんにも見せてあげようかしら。」
ロングスカートの裾をはためかせながら、お母さんはご機嫌そうに服を見回していた。本当にまだまだ若々しくて似合ってる。
「……地獄だ。こんな辱め、なんていう名前の地獄なんだ。早くあっちいってよ。食欲がなくなるよ。」
「もぅ、もうちょっとつばめちゃんと話させてよね。そのカレー、シェフのスペシャルだからね。しっかり味わいなさいよ。」
「もういいから。」
こうして見ると、普段は大人びてる山石君でもちょっと反抗期な感じがあって年相応の可愛らしい反応をしている。お母さんが渋々引き下がって姿が見えなくなると、山石君は深呼吸して表情を整えた。
「ふぅ……見苦しいものを見せてしまったね。いい年してはしゃいじゃって、もぅ……それにしても、メインがカレーって珍しいね。」
「お母さんも楽んでて何よりじゃない。なぜカレーかって言うとね、山石君は入院が長いから家庭の味みたいなのが恋しいんじゃないかって思って。お母さんに山石家の家庭の味を聞いたら、カレーが一番よく食べてたって。それに……カレーなら……かなって。まあとにかく食べてみてよ!」
余計なことを口走ってしまう前に山石君の口にカレーを放り込んでもらおう。山石君は後半いまいち聞き取れなかったみたいで不思議そうな顔をしていたけど、勧められるままにカレーを口に放り込んだ。
「おいしい!たしかに、これは家のカレーの味がする。あぁ、懐かしいなぁ。昔、カレーに日にお代わりしすぎてお米を二合完食したことがあるんだけど、その時とおんなじ味だ。これならいくらでも食べられるよ。おいしいなぁ。これが体が求めてた味なんだーって感じ。もう細胞レベルでこの味を喜んでるよ。久々に食べたからかな?これまで食べた中でも一番おいしいような気がする。」
食べてる途中も何度かおいしい、おいしいと呟きながらがつがつと食べ続け、あっという間に一皿完食してしまった。ここまで食べっぷりが良いと見ているだけで嬉しくなってくる。でも、こんなに絶賛されると嬉しいを通り越して恥ずかしいが勝ってしまう。
「実は……それ、お母さんに作り方教わって、私が作ったの。黙っててごめんね……正直な感想が聞きたいなーって思って。でも、そんなに喜んでもらえてこっちも嬉しいよ。」
「うぇ!?これ森野さんが作ってくれたの?てっきり母さんが作ったものかと思った……僕、なんかめっちゃ言ってたよね?うわぁぁぁ!っていうか森野さんのカレーならもっとゆっくり味わえばよかったぁ!」
大げさに頭を抱える山石君の耳は真っ赤に染まっていた。対するこちらもきっと恥ずかしさで真っ赤になってるはず。自分の作った料理がこんなに褒めてもらえることはもう二度とないかもってくらい褒めてもらえたのは素直に嬉しかった。けど、ちょっと褒めすぎかな。
そうして、顔を真っ赤にした二人が照れながらデザートをかき込んで、デートのランチタイムはちょっと気まずいような気恥ずかしい空気の中、終了したのだった。
「こちらシェフのスペシャルメニュー、お母さんカレーです。」
二人の前に運ばれてきたのは、ごく普通の家のカレーだった。ここまでフランス料理のコースが続いていたからきっと驚いたでしょ。そう思って山石君の方に目を向けると、山石君は給仕してくれた人に釘付けになっていた。
「……母さん!こんなところで何やってるの!?……いや、ほんとに何やってるのだよ!」
「つばめちゃんが楽しそうなこと計画してるみたいだから来ちゃった。」
「来ちゃった、じゃないから!友達と一緒に母親のコスプレ姿見せられるこっちの身になってよ……」
看護師さんたち同様、お母さんもデートの相談をしたらノリノリで店員さん役を買って出てくれた。その上、メイド服まで自前で用意してくれて、こうしてメインの給仕係をやってくれているのだ。
「お母さん、メイド服も似合いますね。まだまだお若い。」
「そうかなぁ。今度お父さんにも見せてあげようかしら。」
ロングスカートの裾をはためかせながら、お母さんはご機嫌そうに服を見回していた。本当にまだまだ若々しくて似合ってる。
「……地獄だ。こんな辱め、なんていう名前の地獄なんだ。早くあっちいってよ。食欲がなくなるよ。」
「もぅ、もうちょっとつばめちゃんと話させてよね。そのカレー、シェフのスペシャルだからね。しっかり味わいなさいよ。」
「もういいから。」
こうして見ると、普段は大人びてる山石君でもちょっと反抗期な感じがあって年相応の可愛らしい反応をしている。お母さんが渋々引き下がって姿が見えなくなると、山石君は深呼吸して表情を整えた。
「ふぅ……見苦しいものを見せてしまったね。いい年してはしゃいじゃって、もぅ……それにしても、メインがカレーって珍しいね。」
「お母さんも楽んでて何よりじゃない。なぜカレーかって言うとね、山石君は入院が長いから家庭の味みたいなのが恋しいんじゃないかって思って。お母さんに山石家の家庭の味を聞いたら、カレーが一番よく食べてたって。それに……カレーなら……かなって。まあとにかく食べてみてよ!」
余計なことを口走ってしまう前に山石君の口にカレーを放り込んでもらおう。山石君は後半いまいち聞き取れなかったみたいで不思議そうな顔をしていたけど、勧められるままにカレーを口に放り込んだ。
「おいしい!たしかに、これは家のカレーの味がする。あぁ、懐かしいなぁ。昔、カレーに日にお代わりしすぎてお米を二合完食したことがあるんだけど、その時とおんなじ味だ。これならいくらでも食べられるよ。おいしいなぁ。これが体が求めてた味なんだーって感じ。もう細胞レベルでこの味を喜んでるよ。久々に食べたからかな?これまで食べた中でも一番おいしいような気がする。」
食べてる途中も何度かおいしい、おいしいと呟きながらがつがつと食べ続け、あっという間に一皿完食してしまった。ここまで食べっぷりが良いと見ているだけで嬉しくなってくる。でも、こんなに絶賛されると嬉しいを通り越して恥ずかしいが勝ってしまう。
「実は……それ、お母さんに作り方教わって、私が作ったの。黙っててごめんね……正直な感想が聞きたいなーって思って。でも、そんなに喜んでもらえてこっちも嬉しいよ。」
「うぇ!?これ森野さんが作ってくれたの?てっきり母さんが作ったものかと思った……僕、なんかめっちゃ言ってたよね?うわぁぁぁ!っていうか森野さんのカレーならもっとゆっくり味わえばよかったぁ!」
大げさに頭を抱える山石君の耳は真っ赤に染まっていた。対するこちらもきっと恥ずかしさで真っ赤になってるはず。自分の作った料理がこんなに褒めてもらえることはもう二度とないかもってくらい褒めてもらえたのは素直に嬉しかった。けど、ちょっと褒めすぎかな。
そうして、顔を真っ赤にした二人が照れながらデザートをかき込んで、デートのランチタイムはちょっと気まずいような気恥ずかしい空気の中、終了したのだった。
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