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第1話 金色の出会い
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――次はお天気です。今日は始業式や入学式の学校も多いのではないでしょうか。そんな晴れの日にぴったりのお天気が続きそうです。関東は春満開の――
「つばめー、そろそろ時間じゃないのー?」
流しっぱなしの朝のニュースを右から左にスルーしながら夢中で朝ご飯を頬張っていたが、視線を上げて時計を見てみるとそろそろ出発の時間だった。
――ということで史上最年少で新人王戦に優勝した山石三段はその後ぱったり姿を消してしまい――
「遅刻しそうなら近くまで送るわよー。」
「大丈夫ー、近道するから。」
普通の道を通ったら遅刻するかもしれないけど、近道すれば全然余裕。
――最近は、神童と呼ばれた少年少女がその後姿を消す事態が多くなってますよね。この間もピアノコンクールを総なめにしていた――
「行ってきまーす!」
玄関からお母さんに聞こえるように声を張り上げる。
「……あなたも……行ってきます。」
しばらくその音色を聞いていないが、よく手入れされている相棒に向かって小さく挨拶する。願掛けではないが、これが毎回の習慣になっている。
我が家の裏にはちょっとした森が広がっており、高校はその森の裏側に位置している。普通は森の縁に沿って半周して学校に向かうのだけれど、虫やぬかるみを気にしなければ森を突っ切ることもできる。これが近道だ。
今日も近道を使って学校に向かおうと勝手口に回ると、でっぷりとした三毛猫が塀の上に鎮座していた。
「初めましてね、猫さん。堂々としたお姿してるのね。私の名前は森野つばめ。今日から高校生なの。あなたは何ていうお名前?」
話しかけても大きなあくびをするだけで、全く意に介する様子もない。触ろうとするも、逃げるように近道の方に駆けていく。重量級な見た目の割には軽快なステップだった。
「意外に身軽なのね。名前がないなら付けてあげよう。うーん……大将。大将って呼ぶことにしよう。大将も近道するの?」
大将を追いかけて近道に入っていくと、道案内してくれるかのように時々こちらを振り返りながら学校への道をなぞって器用に走っていく。
「目的地が同じ方向なのかな?それとも高校までエスコートしてくれてるの?」
森の道は足元が悪く、人間でも歩くのには苦労するのに大将は器用にスイスイ進んでいく。
「おーい、待ってよー。」
急いで追いかけるもいつの間にか見失ってしまい、そのまま一人で森の出口に辿り着いた。丁度学校の通学路である桜並木に出ることができた。
「どこ行っちゃったのかなぁ?」
辺りを見渡してもどこにも大将の姿は見えない。私と同じようにピカピカの制服に袖を通して学校へ向かう生徒ばっかりだ。みんな初々しくて可愛らしいな、などと近所のおばさんのような感想を思い浮かべながら辺りを見回していると、一際目を引く男子がいるのを見つけた。
スラっとして身長が高いのに妙に丸まった姿勢で歩くのが印象的なその男の子の頭の上には、綺麗な金の髪の毛が乗っかっている。ウチの高校は校則が自由な学校ではあるけど、入学早々金髪にして来てる生徒は珍しいんじゃないかな?実際、この子以外はみんな黒髪で大人しく猫をかぶっていたし。桜のピンクと髪の金色が朝日に照らされてコントラストを鮮やかにしている。
「すごい……綺麗……」
「はぁ?」
心の声が漏れ出てしまった上に、いつの間にか近づいていた本人に聞かれてしまった。金髪君は不機嫌そうな目付きで一睨みして通り過ぎて行ってしまった。
……ヤンキーだ。本物の不良が同級生だなんて……幸いなことに今ので襲われることはなかったけど、これからは極力関わらないようにしよう。
急いで行って追いついてしまわないように、少し時間を置いてから遅刻ギリギリのペースでゆっくり登校した。
「つばめー、そろそろ時間じゃないのー?」
流しっぱなしの朝のニュースを右から左にスルーしながら夢中で朝ご飯を頬張っていたが、視線を上げて時計を見てみるとそろそろ出発の時間だった。
――ということで史上最年少で新人王戦に優勝した山石三段はその後ぱったり姿を消してしまい――
「遅刻しそうなら近くまで送るわよー。」
「大丈夫ー、近道するから。」
普通の道を通ったら遅刻するかもしれないけど、近道すれば全然余裕。
――最近は、神童と呼ばれた少年少女がその後姿を消す事態が多くなってますよね。この間もピアノコンクールを総なめにしていた――
「行ってきまーす!」
玄関からお母さんに聞こえるように声を張り上げる。
「……あなたも……行ってきます。」
しばらくその音色を聞いていないが、よく手入れされている相棒に向かって小さく挨拶する。願掛けではないが、これが毎回の習慣になっている。
我が家の裏にはちょっとした森が広がっており、高校はその森の裏側に位置している。普通は森の縁に沿って半周して学校に向かうのだけれど、虫やぬかるみを気にしなければ森を突っ切ることもできる。これが近道だ。
今日も近道を使って学校に向かおうと勝手口に回ると、でっぷりとした三毛猫が塀の上に鎮座していた。
「初めましてね、猫さん。堂々としたお姿してるのね。私の名前は森野つばめ。今日から高校生なの。あなたは何ていうお名前?」
話しかけても大きなあくびをするだけで、全く意に介する様子もない。触ろうとするも、逃げるように近道の方に駆けていく。重量級な見た目の割には軽快なステップだった。
「意外に身軽なのね。名前がないなら付けてあげよう。うーん……大将。大将って呼ぶことにしよう。大将も近道するの?」
大将を追いかけて近道に入っていくと、道案内してくれるかのように時々こちらを振り返りながら学校への道をなぞって器用に走っていく。
「目的地が同じ方向なのかな?それとも高校までエスコートしてくれてるの?」
森の道は足元が悪く、人間でも歩くのには苦労するのに大将は器用にスイスイ進んでいく。
「おーい、待ってよー。」
急いで追いかけるもいつの間にか見失ってしまい、そのまま一人で森の出口に辿り着いた。丁度学校の通学路である桜並木に出ることができた。
「どこ行っちゃったのかなぁ?」
辺りを見渡してもどこにも大将の姿は見えない。私と同じようにピカピカの制服に袖を通して学校へ向かう生徒ばっかりだ。みんな初々しくて可愛らしいな、などと近所のおばさんのような感想を思い浮かべながら辺りを見回していると、一際目を引く男子がいるのを見つけた。
スラっとして身長が高いのに妙に丸まった姿勢で歩くのが印象的なその男の子の頭の上には、綺麗な金の髪の毛が乗っかっている。ウチの高校は校則が自由な学校ではあるけど、入学早々金髪にして来てる生徒は珍しいんじゃないかな?実際、この子以外はみんな黒髪で大人しく猫をかぶっていたし。桜のピンクと髪の金色が朝日に照らされてコントラストを鮮やかにしている。
「すごい……綺麗……」
「はぁ?」
心の声が漏れ出てしまった上に、いつの間にか近づいていた本人に聞かれてしまった。金髪君は不機嫌そうな目付きで一睨みして通り過ぎて行ってしまった。
……ヤンキーだ。本物の不良が同級生だなんて……幸いなことに今ので襲われることはなかったけど、これからは極力関わらないようにしよう。
急いで行って追いついてしまわないように、少し時間を置いてから遅刻ギリギリのペースでゆっくり登校した。
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