御伽噺GIRLS!! ~赤ずきんちゃんが銃を撃ったり雪女が冷気で斬撃をしたり恩返しの鶴が魔法少女に変身をしたり~

八乃前陣(やのまえ じん)

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☆最終話 御伽噺GIRLSたちと☆

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 ――ぐうううぅぅぅぅぅ~~~…っ!
「あはは…」
「お恥ずかしぃ…」
 戦いが終わった安心感もあって、変身を解いたみんなのお腹も、一斉に鳴った。
「えぇと…」
 章太郎がメイド少女へ尋ねると、有栖は美しい礼で謝罪をくれる。
「もっ、申し訳御座いませんっ、主様…っ!」
 この浮遊大地で自生している植物からは、聖力補充用のドリンクを作るのが精一杯で、いわゆる食事に該当する食べ物を作れる様な果実や生物などは、無いらしい。
「いや、それは 有栖のせいじゃないから」
 取り敢えず、桃太郎の世界へ戻って、みんなで食事を作ろう。
 と思ったら、リスとウサギとタヌキの小美人たちから、提案が為された。
「不躾では御座いますが…」
「章太郎さんのっ、世界とか~っ、見たいな~ってっ♪ わくわく~っ♪」
「そこで~、みんなでご飯とか~、作りたいです~♪」
「俺たちの世界…?」
 自分たちが童話世界へ行く事は考えても、みんなを招くとか、考えた事も無かった章太郎だ。
「ほへ~♪ それは、某(それがし)たちも 行ってみたいな~♪」
「ぼ、僕も…」
 桃太郎たちも、興味があるらしい。
「えぇと…」
 章太郎の部屋のキッチンは有栖の管轄だし、御伽噺の少女たちの意見も聞きたい。
「はい、主様。申しつかりまして御座います♪」
「ボクたちも、みんなが来てくれると嬉しいな♪」
「ね~♪」
「そうだなー♪」
「はい~♪」
 特に月夜の喜びに、金太郎はドキドキしている感じだ。
 章太郎たちは、桃太郎たちや犬猿雉や鬼たち、金太郎とツキノワグマのツキノ、そして女王や小美人たちを、マンションへと招待する事と決まる。
「それでは~っ、参ります~っ♪」
 小美人たちの僅かな聖力を集めて、三体の小美人が転移術式を唱え、章太郎のマンション屋上へと転移した。

 一瞬の後、章太郎たち一行は、いわゆる現実世界へと転出。
「おぉ…っ! なんか 久しぶりに戻ってきた感じ…っ!」
「そうだな~♪」
「なんとも…懐かしく感じられます♪」
 桃太郎の童話世界で一晩を過ごしたけれど、出発をした時間から三時間ほどしか、経過していなかった。
 とはいえ、陽は傾いていて、東の空は赤く染まり始めてもいて、街には該当や温かい家々の明りも、ちらほら。
 安心をする章太郎たちに比して、桃太郎たち御伽噺組はみな、珍しそうにアチコチをキョロキョロとしていた。
「ぅわ~っ、なんて高い場所~っ♪」
「つ、土…岩…?」
「も、桃さんっ! 遙か向こうにっ、えらく高い柱が…っ!」
「「「キラキラ、綺麗~♪」」」
 童話世界からのお客様たちが、屋上からの景色を楽しんでいる間に、有栖と御伽噺の少女たちとツキノが、食事を作ってくれる事になった。

「お待たせを致しました♪」
 有栖たちが、屋上へと食事を運んでくれるので、章太郎たちは物置からテーブルなどを取り出して、セッティング完了。
 長いテーブルにタップリの食事が並べられると、みんなでご飯だ。
「「「「「「「「「「「「「「「「戴きま~す♪」」」」」」」」」」」」」」」」
 章太郎と御伽噺ガールズ以外にとっては、みんな初めて見るメニューばかりである。
「ぅお~っ、赤(せっ)ちゃんっ、この細長いのっ、蕎麦でもウドンでもないよ~っ♪」
「ぱすた…とか言うらしいですぜっ! ずずず…っ、んんっ! こいつぁ美味いですよっ♪」
 金太郎たちも、初めて知る美味確実な香りに、興奮していた。
「ツっ、ツキノ…っ、これ、なに…っ?」
「かつどん…と呼ばれる食事 との事でございます」
 犬猿雉も、それぞれに用意されたご飯を、美味しそうに食べている。
 小美人たちもカットフルーツを頬張っていて、章太郎が少し食事をして聖力が回復を始めると、隣に幼稚園児っぽいシルエットにまで聖力を消耗していた女王が立った。
「…はい、え?」
 流し込まれた意識で、女王が章太郎から少しだけ聖力を欲していると、伝わって来る。
「わかりました、どうぞ♪」
 女王は触れるだけで聖力を補充出来るので、失礼の無い様に手を差し出したら、女王はぴょんっとジャンプをして章太郎へと抱き付くと、脣と思われる場所を重ねて来た。
「ん…」
 吸引は、ほんのちょっとの聖力だけど、そこには章太郎の記憶や意志なども複製されて含まれて、女王へと吸われる。
「んん…んんっ!?」
「おお、これは…っ?」
 章太郎たちの目の前で、幼女姿の赤い発光体だった女王が、見る見るうちに成長。
 身長というか頭身もプロポーションも大人へ戻り、目鼻立ちや頭髪がスッキリとして、サラサラな艶めく長髪と白い美肌へ変色をして、見た目的には完全に人間の美女となった。
「おー、すっげぇ美人だなーっ♪」
「大人の女性です~♪」
「あわわ…っ!」
 驚き賞賛をする女性陣と違い、男性陣はみんな、赤くなって慌てて後ろを向いた。
 章太郎の記憶なども分けて貰った蜃鬼楼の女王は、八頭身美人で黒髪も滑らかで、大きくて優しくて深い眼差しと細い鼻筋と、柔らかくぽってりとした脣。
 そして身体は、爆乳に括れに巨尻に小さな足首と、男性を強く刺激するシルエットで、しかもヌードだった。
「…章太郎殿…」
「はいっ――えっ?」
 初めて聞いた女性の声に、思わず振り向いた章太郎は、目の前の美女の裸身に、また慌てて背中を向ける。
「?」
 男子たちが背中を向けている理由を、小美人たちに教えられ、女王は羽衣のような薄布を現出させて、裸身を隠してくれた。
「章太郎殿、桃太郎殿、金太郎殿…そして、皆様…この度は、本当に 有り難う御座いました…」
 美しい礼をくれる女王は、章太郎の意識を複製して分けて貰った事で、美女の姿と人間の言語を覚えた。
 との事。
「あ、頭を上げて下さい。むしろ、俺たちがご迷惑をお掛けしてしまって…本当に、すみませんでしたっ!」
 自分から全てを話して、女王だけでなく桃太郎たちみんなにも、頭を下げた章太郎だ。
「とにかく、爺ちゃんに連絡をして、すぐに次元の穴を塞いで貰いますのでっ!」
「はい…ふふ。あぁ、それと…大変に 厚かましいお願い…なのですが…」
 章太郎が嫌でなかったら、時々、聖力を分けて欲しいとの事。
「え…えぇと…」
 ブーケたちの意見も伺おうと振り向くと、みんな特別に、反対な様子は無い。
「それで、蜃鬼楼の世界も平和になるのだろう?」
「素晴らしい事ですわ♪」
「そ、それじゃあ、はい」
「まぁ…寛大なお心遣い…感謝いたします♪」
 とりあえず早急な問題はみんな解決したので、あらためて食事会が進んだ。

 賑やかな晩餐会も終わって、すっかり陽が暮れて、美味しいご飯で満腹になったみんなが、自分の童話世界へと帰る事になる。
「それじゃ~章ちゃん~♪ また遊ぼうね~♪」
 桃太郎と鬼たちと犬猿雉が、聖力満タンな小美人たちの転移術式で、帰って行った。
「つ、月夜さん…っ! あの…時々、だけど…あ、遊びに来ても…」
「ああ、いつでも遊ぼうぜ♪」
「う、うん…っ♪」
 金太郎は、月夜の笑顔に胴鎧よりも真っ赤になって、ツキノに支えられて帰って行く。
「それでは、失礼いたします♪」
「「「「「「ばいば~い♪」」」」」」
 女王という母が、元に戻っただけでなく、人間っぽく変化をしたからか、小美人たちも幼児化をしたように甘えている気がする。
「それじゃあ、また」
 今後は、次元の穴が空く前と同じように敵意の蜃鬼楼が発生をしても、消滅しないように個別ではなく複数体で対抗するし、万が一の際には桃太郎たちや章太郎たちへ連絡をくれると、決まった。
「「「「「「「………」」」」」」」
 童話世界のお客さんたちが帰ると、なんだかマンションも、シン…としてしまう。
 お供たちも、なんとなく寂しそうだったり。
「…さて、爺ちゃんに、連絡をしないとな!」
 章太郎は、意識して明るく告げた。
「…そうだな。次元の穴を塞いで貰ったら、蜃鬼楼も まあ、来ないだろう」
「ですね♪」
 平和が戻った事は、とても嬉しい。
 そして章太郎的には、御伽噺の少女たちが、童話世界へ戻ったり消失しなかった事が、何よりも嬉しかった。
「それで~、次は三年後~、だっけ~?」
「?」
 何の事かと思ったら、先の戦いに集中していて、章太郎が忘れていた事。
「高校? だかを卒業したら、オレたちみんな、ショータの子供を 産むんだろ?」
「ぇ…えっ?」
「翠深衣もです~♪」
「あ、有栖も…、皆様の育児が 落ち着かれた頃には…っ♪」
 章太郎の祖父でありマッドなサイエンティストである章之助は、人間である章太郎と、人造肉体であるブーケと雪と美鶴と、御伽噺世界からそのままやって来た月夜と翠深衣、それにロボからメカ生体へと進化をした有栖の間に生まれる子供という存在を、超楽しみにしているのだ。
「しかし なんだな…十八歳とは。こっちの世界は、婚姻の年齢が 高いのだな」
「オレ、元々は木の人形だけど、産むのかな~♪」
「翠深衣も、元お魚です~♪」
「え、えぇと…」
 まだ高校生な章太郎には、女性の妊娠に対する覚悟なんて、当然に無理。
「何にせよだ。ショータロー、これからも 宜しく頼むぞ♡」
 と、笑顔で告げるブーケ。
「どうぞ、末永くに…♡」
 雪は頬を染めて、恥ずかしそう。
「ずっと、一緒にいようね~♡」
 明るく告げながら、美鶴も頬が朱い。
「オレも、ヨロシクな♡」
 月夜は照れ隠しのウインク。
「お兄さま~♡」
 嬉しそうに無邪気に抱き付く翠深衣だ。
「これがらも、心身を尽くし お仕えをさせて戴きます♡」
 有栖は恥ずかしそうに愛顔を伏せながら、美しい礼をくれる。
 あらためて挨拶を貰った章太郎は。
(…もはや現実主義者だとか言えないな、俺)
 と思いながら。
(目の前で起きた不思議な現象を否定せずにそのまま受け入れるのも、現実主義だよな)
 とも考えて。
「が…頑張ります…」
 と、少女たちへ決意表明をするのが精一杯だった。

                        ~終わり~
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