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☆第二十八話 検査開始☆
しおりを挟む「びっくりした…これが、真希さんがさっき言っていた、ガード用ドロイドですか…?」
「そうです。これも 章之助博士が基礎開発をした、いわゆる 警備ドロイドの試作量産機です」
メカメカしい犬型ロボットは、大型のドーベルマンを思わせる大きさとシルエット。
歩き方も、ロボットと言われて頭に浮かぶ堅い感じではなく、完全に普通の犬のように滑らかだ。
装甲のおかげでシルエットは滑らかに見えるけれど、関節部が剥き出しなため、やはりロボットのプラモデルを連想させる。
「なんか…中に犬が入っててもおかしくないくらい、自然なな動きですけど…関節とかメカだから、不思議な感じですね…」
「まあ、見慣れないと それが普通ですね」
警備犬ドロイドは、角を曲がった時には章太郎たちの存在を探知していたらしく、真っ直ぐに歩み寄ってくる。
「…うぅ…」
無機質だけど有機的な動きをするメカドッグたちが、両眼を光らせ無言で近づいてくる様は、ちょっと怖い。
と感じているのは初見な章太郎だけのようで、ここに勤務している真希は当然とし、御伽噺少女たち三人も、慣れている様子だ。
「やあ、久しぶりだなあ」
「みんな、元気~?」
「よしよし…?」
三人が少し屈んで手を出すと、ロボ犬たちは匂いセンサーの鼻部分を差し出して、掌の匂いを嗅いでいる。
――わんっ!
口から嬉しそうな合成音の犬声を発すると、口を開いて舌を伸ばし、少女たちの掌を舐め始めた。
「うわっ、なんか、口開けて舌出してますけど…っ!」
驚く章太郎へ、真希は普通に説明をくれる。
「はい。警備用と言っても、基本は 人間にとってストレスにならない存在である事ですから。合成音でも喜怒哀楽を表現しますが、仕草や接し方でも、不審者ではない人間が安心できる事が 大切ですので」
「…なるほど…」
三人は、ロボット犬の頬舐めや前脚乗せが、楽しい様子。
「うふふ、くすぐったいですわ♪」
「よ~し、おすわり!」
とか美鶴が命令をすると、ちゃんとお座りをした。
「へえぇ…凄いなぁ…」
もう警備用とかではなく、ペットロボットして販売できるレベルに見える。
「ショータローも、手を出してあげるといい。この子たちは、初めて会ったショーターローを、優しい飼い主だと認識をして、喜ぶぞ」
と、ブーケが教えてくれた。
「そ、そうなの…それじゃあ…」
ロボット犬と触れ合うのは、初めてだ。
(…と言うか、現実主義者な俺が、御伽噺の女の子たちに、現代科学で教えられているとは…っ!)
少年的にはちょっと悔しいけれど、目の前のメカドッグたちにジ…と見つめられると、なんだかより可愛らしく見えてきたり。
「えっと…こう?」
知る限りの知識に習って、犬の顔よりも下から右掌を差し出したら、二匹というか二体の警備犬ドロイドが、フンフンと匂いセンサーで章太郎の認識を開始。
「さっきの受け付けみたいだな…」
数秒で匂いをメモリーすると、少年の掌をペロりと舐めた。
「うわっ…し、舌、濡れてる…?」
舐められた箇所が、スースーする。
「はい。この子たちの舌は、人工繊維製でして。唾液というか、消毒用のアルコールで、人間を清潔に保ったりもします」
「へぇ…」
開かれた口の中を見せて貰ったら、リアルな造形の銀色な牙がある。
「牙が生えてる…」
「それは、防犯用の迎撃手段です。牙の先端の後ろ側には 電極があって、不審者を確保する際に、噛み付いて電流を流し、行動不能にします」
スタンガンのような感じだろう。
ちなみに、与えられた地図を解析して、自分たちでパトロールを繰り返し、効率的なルートも構築してゆくらしい。
更にエネルギーは電気で、いわゆる犬小屋の床には微弱な電磁波を発する装置が設置してあり、犬ロボのお腹へ組み込まれている受信装置で電気を補充するらしい。
「その姿は、本物の犬がお腹を着けて休んでいる みたいなのだぞ!」
と、犬科の狼に食べられた経験のある赤ずきんが、頬を上気させて、萌え説明をしてくれたり。
「そうなんだ…」
その姿を想像すると、たしかに可愛い。
「なんか…もう完全に 一家に一台って感じじゃないですか」
子供受けも良さそうだし、販売したら爆売れな気がする。
「そうなのですが、市販するにはまだまだクリアすべき問題が多くてですね。特に価格帯となると、この子たち一体だけで八百万円くらいしますから」
「えっ――っ!」
手軽に触ったけれど、もし壊したりしたら弁償なんて出来ない。
章太郎は慌てて手を引いた。
「おー、よしよし?」
そんな少年と違って、ブーケたちは普通の犬と接するように、頭を撫でたりして、楽しんでいる。
「ほれ、お手!」
真希の命令に、ロボ犬も綺麗にお手とおかわりを決めたり。
「度胸の違い…なのかな…?」
女性は凄いなあとか、つくづく感じた。
「では、三人はその検査室へ」
「「「はい」」~い♪」
突き当たりの扉から更に廊下を曲がって進んで、扉に「第三実験管理室」と書かれた部屋の前。
「それではショータロー、少し待っててくれ」
「失礼いたします」
「いってきま~す♪」
「ああ」
三人が扉を潜ると、少年は真希に案内されて、隣の部屋へ。
「あの部屋は、色々な生物の実験や研究をしている部署でして。これから三人も、色々な検査機器で人工生体の検査をいたします」
「なるほど…」
真希が開けてくれた扉を潜ったら。
「…あっ、爺ちゃん!」
「おお、章太郎。よく来たな♪」
祖父であり天才科学者であり、三人の御伽噺少女たちを召還して人工素体を与えた人物が、お出迎え。
ついでに、異世界の扉を開いてしまって鬼に気付かれ、ブーケたち三人を召還した張本人というか、元凶でもある人物だ。
「元気か? 随分と大きくなったのぉ♪ この間まで ヨチヨチ歩きだったのにのぉ」
「いつの頃の話なのさ!」
祖父の懐かし話と少年の時間感覚のズレは、誰しも共通する不思議な現象だ。
室内は、三人が入った管理室に指示を送る部屋らしい。
管理室とは分厚いガラスの壁で仕切られていて、コチラの部屋にはマイクやコンソールなど、なんだかアニメの司令室っぽい作り。
窓の向こうは、入り口である右側が脱衣室として仕切られていて、今まさに、ブーケたちが脱衣をしている最中だった。
「うわわっ――っ!」
年頃だし常識人である章太郎は、三人の下着姿に驚いて、赤くなりつつ慌てて背中を向ける。
そんな少年に、真希は微笑まし気な笑みを見せた。
三人の検査用ローブへの着替えを、女性の研究員たちが手伝ったりしている。
「これから、三人の人工素体を検査するからの。まあ検査と言っても、いわゆる人間ドックと同じじゃがな」
「へ、へぇ~」
孫の恥ずかし紳士対応には特に触れず、博士はマイクのスイッチを入れて、三人へ話しかけた。
「どうじゃ三人とも、準備は整ったかな?」
『はい、ショーノスケ博士』
『着替えが終わりました』
『あ、章太郎くんだ~♪ どうしたの~?』
背中を向けている事が、不思議な様子。
「いや…すいません…」
着替えている最中の裸体を見たわけではないし、三人が変身をする際の裸身は見ているけれど、それでも罪悪感は感じてしまったり。
『? どうかされましたか?』
三人は、章太郎に見られる事を特に気にしていない様子だ。
章之助博士は、やはり孫の対応を気にする風でもなく、検査を開始。
「それでは三人とも。まずは輪切りじゃ」
『『『はい』』~い♪』
「えっ!?」
物騒な事を言っているが、つまりは輪切りで連写する、あのレントゲン写真である。
三人の魂を一時的に離脱とかさせて、素体を輪切りにするのか。
とか想像してしまった少年だ。
「なんだよ~…MRIじゃんか。びっくりした…っ!」
「我々のような研究者には、使い慣れた言葉ですが…関係者でもない限り、やはり驚きますよね」
と、真希は微笑んでいた。
~第二十八話 終わり~
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