毒島さんの毒頭(ぶすじまさんの どくあたま)

☆エピローグ 微笑みの天使☆

「ほえぇ～…麗さん、凄い…」
　主婦たちが散り散りに帰って行って、格闘少女が均実へと、恥ずかしそうに寄り添ってくる。
「均実さん…お怪我は　ありませんか？」
　心配を隠さない困り顔も愛らしく輝いていて、均実は思わず見惚れ、ハっと我に返る。
「…っは、はぃっ！　全くピンピンしてますですっ、はいっ！」
「まぁ…それは何よりですわ…?」
　安堵をする麗の上気した頬や、潤む真っ直ぐな眼差し差しは、まるで恋をする乙女の眩しさを感じさせた。
「……ぁ、あの…」
　見つめる麗の大きく漆黒な瞳に吸い寄せられるように、均実の視線も意識も奪われたまま、ジっと見つめ合うのが恥ずかしい。
「……う、麗さん…」
「はい…?」
　均実は恥ずかしさと緊張感に耐えられず、頭が空っぽなままなのに名前を呼んで、しかし丁字路をある車が通って。
『石焼ぁ～きぃ芋ぉ～♪』
「ハっ…！」
　意識が戻った感じな均実だった。
「ぅ麗さんはっそのっ、やっ焼き芋っ、ぉお好きですかっ？」
「…はい」
　なんとか誤魔化した均実の問いに、麗は少し残念そう。
「わ、私もっ、お芋大好きなのでっ、買いましょうねっ！　あ、見て下さい。あのお芋さん、紅金時を使ってるみたいですよ！」
「…そのようですわね♪」
　二人で、焼き芋屋さんの車を追いかける。
（…なんか、私…麗さんに会ってから、ちょっとヘンかも…！）
　笑顔な麗の隣で一緒に駆ける均実は、まだドキドキが収まってはいなかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～終わり～