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ただの話
見下ろして
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目を閉じると、夜空が僕の中に飛び込んできて、星が瞼の内側に張り付いて目が回る。チカチカうるさい光は、目を開ければ塵となって消えた。いつの間にか消えたビルの光は孤独を現しているように見えて、慌てて目を伏せた。
ベランダから見える大通りには飲み屋の呼び込みと残業帰りのサラリーマン、隣の部屋では毎度お馴染みの若カップルの痴話喧嘩。理由は多分浮気だろう。机の上で寂しそうにしているのは、最近世話を怠っている哀れな毬藻。殺風景な部屋には、つまらないお笑い芸人を映したテレビや、何でも無いようなガラステーブル。住処であるボロいアパートはところどころ錆び付いていて、階段なんて抜け落ちないかと毎度毎度ひやひやする。
折角の休みだと言うのに、起きたのは昼過ぎで。仕方が無いから近くにあるコンビニで、雑誌と小さな弁当を買って過ごした。車を持っているわけでもないし、電車は狭くて乗っていれない。親からの仕送りが唯一の今、無駄に使う訳にもいかずに殆ど家から出ないのが現実。
もう一度窓から下を覗き、露出の多いキャバクラ嬢の胸元に目を向ける。白くて柔らかそうで、いいなぁ。小太りで中年のサラリーマンがキャバクラ嬢に声を掛けた。馴れ馴れしく体に触り、酒臭い息を吹きかけて、他人の迷惑を気にしていない。呼び込みのバイトは見て見ぬ振りをして、街路樹のように同じ場所から動かないまま少しばかり声を張る。
夜中の2時を過ぎた辺りから、車道を走る車の量は明らかに減った。変わりに人通りが増え、オレンジ色に通りが照らされる。どこかで派手な物音と怒号が飛んだ。野次馬精神旺盛な人々が現場に集ろうと人波を動かす。先ほどの呼び込みはもう見えず、迷惑そうな酔っ払いとその光る頭部が際立ち、高い位置からそれを眺めているには眩しくて視線を外してしまった。
――――ああ、また今日が終わってしまった。
シングルサイズのベッドの上で仰向けに寝っ転がると、一昔前に流行ったのだろう、薄く模様の描かれた天井がある。タイル目に沿ってまた縁取られ、想像するのは安直なヨーロピアン文化。
……まあ、生きている実感もなく日常を過ごす僕だ。それぐらいが似合いというもの。
ベランダから見える大通りには飲み屋の呼び込みと残業帰りのサラリーマン、隣の部屋では毎度お馴染みの若カップルの痴話喧嘩。理由は多分浮気だろう。机の上で寂しそうにしているのは、最近世話を怠っている哀れな毬藻。殺風景な部屋には、つまらないお笑い芸人を映したテレビや、何でも無いようなガラステーブル。住処であるボロいアパートはところどころ錆び付いていて、階段なんて抜け落ちないかと毎度毎度ひやひやする。
折角の休みだと言うのに、起きたのは昼過ぎで。仕方が無いから近くにあるコンビニで、雑誌と小さな弁当を買って過ごした。車を持っているわけでもないし、電車は狭くて乗っていれない。親からの仕送りが唯一の今、無駄に使う訳にもいかずに殆ど家から出ないのが現実。
もう一度窓から下を覗き、露出の多いキャバクラ嬢の胸元に目を向ける。白くて柔らかそうで、いいなぁ。小太りで中年のサラリーマンがキャバクラ嬢に声を掛けた。馴れ馴れしく体に触り、酒臭い息を吹きかけて、他人の迷惑を気にしていない。呼び込みのバイトは見て見ぬ振りをして、街路樹のように同じ場所から動かないまま少しばかり声を張る。
夜中の2時を過ぎた辺りから、車道を走る車の量は明らかに減った。変わりに人通りが増え、オレンジ色に通りが照らされる。どこかで派手な物音と怒号が飛んだ。野次馬精神旺盛な人々が現場に集ろうと人波を動かす。先ほどの呼び込みはもう見えず、迷惑そうな酔っ払いとその光る頭部が際立ち、高い位置からそれを眺めているには眩しくて視線を外してしまった。
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