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1章
妖との遭遇!戦闘開始
しおりを挟む久しぶりにシャバに出た気分だ。
男だらけの兵舎での長い集団生活、毎日のきつい訓練。
それらから離れて、のんびりと都を歩くのはそれだけで気持ちがいい。
それに今は堅苦しい軍服も脱ぎ、民間人に紛れるような服装をしていた。
襟シャツの上に着物を着ている俺は元の凡庸な顔立ちと相まって、
軍人には見えないだろう。
しかし、腰には刀を差し、小型のピストルも一丁胸ポケットに忍ばせている。
深呼吸をして、広い青空の下でぐっと伸びをすると、
解放された喜びから自然と笑顔になった。
「あまり、羽目を外しすぎないで」
「は、はいっ、申し訳ありません」
ぴしゃりと案外冷たい声で指摘され、
途端に俺はがちがちに姿勢を正した。
この人形のような冷たい雰囲気のの美青年は如月中尉。
しかし、今は彼も俺と同じようにうすい青の着物を羽織り、
はんなりとした様子で俺の隣を歩いている。
軍服を脱いでしまえば如月中尉も又軍人らには見えなかった。
「これから向かう場所はわかっていますか?」
「
はい、地図は覚えています。
実は昔この近くに遊びに行ったことがあるんですよ。
母がですね、結核になった時に療養所がこの近くにあって、
みんなに黙って一人で行ったんです。
」
「そうなんですね。お母様が、それで今は」
「ああ、母は俺が12の時に亡くなりました」
「申しわけありません。ぶしつけなことを聞いてしまいました」
「いや、そんなんじゃないですよ。もう昔のことですよ」
俺がからからと笑ったのと逆に、
如月中尉は黙り込んでしまった。
しまった、俺はまた考えなしに余計なことをしゃべってしまった。
気を付けないと。それにこれから敵地に行くんだし。
「ところで、妖は見たことがありますか?」
「
うーん、見たことがないと言えばうそになりますが、
なにせ小さい頃だったので、
ガキのたわごとだと言われると、何とも言えないのです
」
「ちなみにどんなものを見たんですか?」
「
まだ、本当に物心つく前のときです。
家の隅になにか小さな赤いものがあったんです。
よく見てみたらゆらゆら動いて、人の形になりました。
それが振り返ってこっちを見たと思ったら、
なんと一つ目だったんですよ
」
「それで?」
「
それだけですよ。おかっぱ頭の一つ目は俺が驚いたのを見ると
きゃははって笑って、俺をすり抜けて走っていったんです。
今考えると座敷童みたいですね。
」
「それは微笑ましい思い出ですね」
「
俺はあんな・・・、妖を使って何かできるなんて思えないんです。
本当に東の連中はあんな事件を起こしたのでしょうか?
それになんであんなひどいことを…
」
「佐倉軍曹は軍人らしくないのですね」
「えっ、あっ、うーむ」
「
バカにしたわけではありませんよ。
あなたはとてもやさしい人だと思ったのです。
その優しさは素晴らしいものですが、
それがあなたの足かせにならなければいいと思っただけです
」
如月中尉はそこで口を紡ぎ、そこからは険しい山道となった。
俺は如月中尉の意味深な言葉にちょっと引っ掛かりを覚えたが、
特に深く考えずもくもくと山道を登っていった。
「ここ、ですか?」
俺は山奥の林の中にぽつんと佇んだ古びたお堂を指さして
中尉に尋ねた。
「ええ、案内人とはこのお堂で落ち合う約束になっています」
「なんたってこんな山奥で?」
「とても人嫌いなんです。面倒ですが」
「
まぁ、そういうことなら仕方がないですね。
しかし、そろそろ日も落ちてきましたよ。
まだその、案内人は姿を現さないようですか?
」
「わかりません。何か不測の事態があったか、あるいは・・・」
そこまで言って中尉が口をつぐんだ。
「なにっ・・・!」
「しっ、あれを見なさい」
中尉が指したほうには、草葉の陰からこちらを見つめる
二つの赤い目があった。
怪しく光るそれは、二つ、四つ、八つと増えていく。
「危ないっ!」
「なっ!」
俺は何か考える前に体が動いていた。
その時、中尉に向かって巨大な毛むくじゃらの足が
凄まじい速さで伸びてきたのが見えた。
俺は中尉に向かってきた巨大な毛むくじゃらの足から
中尉を守るために庇っていた。
「っ!」
巨大な足の先端の尖った鋭い爪があり、
それが、俺の背中を切り裂いた。
だが、中尉はすぐに俺をひっつかんで放り投げたので、
爪は背中の生地をぱっくり裂き、皮膚をひっかいた程度ですんだ。
中尉が素早く抜いた刀で巨大な足を切り裂いた。
ぶしゃーっと真っ青な血しぶきが上がり、
その巨大な妖のようなものは
森の奥へと引っ込んでいった。
「これは、まずいですね。
一旦お堂に入りましょう!早く!」
中尉に促されながら、お堂の中に入った。
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