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家族との訣別 王立学園入学に添えて

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あの美しい夢から3年後。


ローズは15歳になっていた


いつものように井戸から水を汲み、邸宅の床掃除をしているローズのもとへ、お父様がやってきた。


「お前を明日からレイジミ王立学園に入学させることにした。今すぐ支度をして学園に行け」



お父様はそれだけ言うとローズの足元に一枚の手紙を放った。

ローズは膝をついて手紙を拾うと、上等な紙の質感がして、手紙を思わず取り落とした。


慌ててドレスの裾で手をふく。
そして慎重に壊れ物でも扱うようにその手紙を再び拾う。


手紙を裏返すと赤い色の封蝋がしてあり、世間知らずのローズも一度は見たことのあるような、国内随一の王立学園の印があった。


しかし、王立学園は王族とさらに、貴族の中でも一握りの地位の高いものしか通うことができず、入学試験も最難関のはずだ。


もちろんローズは入学試験など受けが覚えがなかった。


それどころかローズが幼いころからやってきたのは水汲み、掃除、家事、など使用人、もしくは奴隷が行うような仕事ばかり。


書斎で本を読んだりして、ある程度読み書きはできるが、それだけの学力では学園に入学したとしても、勉学についていくことなど到底できない。


ローズはお父様の考えていることがわからなくて、突然自分が王立学園に通うことも恐ろしくて、床にひざをついた姿勢のまま、お父様の足にすがった。


自分にはできない。お願いです。取りやめてください。


「汚らわしい!下女が!」


お父様はローズが縋り付いた足を振るうと、すさまじい形相でローズをにらみつけた。


お父様は鬼のような顔をしていた。



「…これで、やっと、お前の顔をやっと見なくて済むようになる。やっとだ。どれだけこの時を待ったことか…、






二度と俺の前に顔を見せるな」


ガラスが割れたような音がした。

それはローズの中だけで聞こえた音だ。




ローズは茫然としていた。

広いお屋敷の広間はいつの間にかがらんどうになっていた。


すでにお父様はいなかった。




カラン、カランっ。


バケツに立てかけていたモップが、何かの拍子に床に転がった。





あれ、自分は何をしていたっけ。

そうだ、掃除を、掃除をしなくちゃ。



立ち上がろうとしたローズの足元に。





パサリ。


手紙が落ちた。





いかなる時でも感情を荒げず。
誰に対しても親切に。

そして笑顔を絶やさぬように。



床に落ちた手紙を見て、



ローズは笑った。


ぱきり。


かさかさの唇が割れた音がした。






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