2 / 19
裏の顔を暴露するー人間をペット扱いする医者
しおりを挟むガチャン。
唐突に目が覚める。
浅い睡眠しかしてこなかった自分が、死んだように眠って目覚めるのは久方ぶりだろう。
しかし今はどれだけすっきり目覚めたとしても、気持ちのいい目覚めとは言えなかった。
動けないのだ。
性格には足のつま先から首まで動かすことができない。
手ももちろん動かない。
どれだけ力を籠めようとも石のように固く動かない。
おそらく背中に柔らかな布の触感がするためベッドに寝かされている。
しかし、そこから起き上がることができない。
「くそっ、どうなってんだ…!」
目を開けて視線を動かすとそこはよくあるベッドルームの一室のようだ。
10畳ほどの部屋に白い壁。小さめの窓には鉄格子がはめられている。
座りごごちのよさそうなソファーがある。
おそらくバスルームとトイレにつながる扉があり、もう一つの出口と思われる扉まで視線を動かした時。
ゆっくりとその扉が開いた。
「おはよう、おめざめかい、ハニー」
軽口をたたきながらリンクが入ってきた。
手にはモーニングプレートをもっている。着崩したワイシャツでもファッション雑誌の表紙を飾れるようだ。
「お前、どういうことだ、これは」
「どういうことっていうのは?」
ベッド近くの小さな丸椅子に座ったリンクはこちらの様子を見下げながら楽し気に聞く。
「報酬は支払ったはずだ。今回はその後始末と簡易な手続きだけだと聞いていた、なぜ俺を拘束する?まさか組に引き渡すのか」
マサはそこで言葉を区切る。
また失敗した。そう思った。
逃げ延びたと思ったはずが、このリンクという男は組とも何かしら取引を行い、きっと自分を組に引き渡すのだろう。
その先は、見るもおぞましい最期だ。
「はははッ、本当に、本当に、ぶはっ、ははは!」
リンクはマサを見るとこらえきれないというように大声で笑いだした。
確かに自分は無様だろうな、マサは思うと押し黙った。どうしたら、どうしたらいいか。どうしたら交渉を行えるだろうか。
「だいじょうぶ、僕は君を誰かに譲ったり、あげたりするつもりはないよ」
リンクは安心させるようにマサの頭をなでる。ワックスで固めた硬い男の髪を触って何が楽しいのだろう。
「飼い主はいったん生き物を飼ったら、それに責任を持つものだろう?」
リンクは撫でながらも、その手を下にずらしていく。頬を撫で、そこから首筋に沿って、くすぐるように。さらに鎖骨の溝を楽しむように撫でていく。
「お前、何言っているんだ?」
彼の言いたいことが分からなかった。またわからないふりをしたかった。
「僕はずっとペットを探していたんだ。いろんな国でお目当てのペットを探し回ったよ」
「君は本当にかわいいな。天使のようだ。正直で素直でおりこうさんだ」
「日本ではいい買い物をした。ずっと探してた苦労が報われたよ、組長さんには感謝しないと」
「さて、じゃあ躾を始めないと」
その後ご飯にしようね、ニッコリとほほ笑んだリンクの手には暖かな湯気を上げていたモーニングプレートはなかった。代わりに黒々と光る医療器具のようなものが握られていた。
11
お気に入りに追加
683
あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。




【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる