普段は敵わない大嫌いな先生が怪我して弱っているから、お持ち帰りして拘束して逆らえないように徹底調教する不良生徒の話

ハヤイもち

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獲物を罠にかけるー弱った人間は親切にされると騙しやすい

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「山田」

明日の準備をするため教室に一人残っていた山田のもとを訪れた。
外はもう真っ暗だ。
生徒はもちろん教師もほとんど帰ってしまったはずだ。

時刻は21時過ぎを示していた。

「おぉ!清野、どうした。もう帰宅時間はとっくに過ぎてんぞ」

痛みがひどいのだろう。それを顔にださずに脂汗をにじませながら答える。その様子は健気を通り越して、滑稽だ。

「ちょい、忘れ物。それよりあんた大丈夫か。その腕」

そういうと山田の目が大きく見開かれる。三白眼気味の目がまん丸になっていつもよりも童顔に見える。

「お前がそんなことを言うなんて、…けがもしてみるもんだな」

しみじみといい話風に終わらせられそうだったので慌てた。

「そ、だからさ。俺あんたの家に行って手伝おうか。ご飯くらいなら作れるけど」
「いや普通にダメだ。親御さんが心配するから帰りなさい」

ぴしゃりといわれて、ぐっと唇を噛みしめた。
いやまだだ。まだ引き下がるわけにはいかない。

「今日親夜勤でいねぇし。いや、…なんつうかよ。あんた怪我してめっちゃ焦ったっていうか…。この際だからいうけど話聞いてもらいたかったっていうか。…進路のこととか」

きめぇ。きめぇ!俺は何を言っているんだ。
恥ずかしいし、自分がきめぇし、今すぐ帰りてぇ。
だが意外と言葉がすらすらと出てきたことに驚いた。
ああ、もうこれで断られたら明日どんな顔して会えばいいんだ?
山田はしばらくうーんと腕組みして考えていた。

「な、いいだろ。マジで心配だったんだよ。今日だけ、今日だけ。マジ頼むよ」

自分でもきめぇと思うが、上目遣いでできるだけかわいく頼んでみる。
山田はうーんとさらに悩んでいたが、俺が引かないところを見て押し負けてしまったようだ。

「そうか。まぁお前がそこまで言うなら親御さんには俺からも連絡するから」
「いや親にはもう言ってあるから余計なことすんな!?」
「お、おう。大丈夫なのか」

俺の剣幕に押されたのか、山田がおとなしくうなずいた。

「ほら、帰んぞ」

山田のバックを持って立ち上がると、慌てたように山田が言う。

「まだ明日の授業の準備が終わってないんだが…」
「あんた怪我してんだろ!ばかか、こういう時は早く帰って寝ろ」

怪我していないほうの腕を引っ張り立たせると肩に防寒着を羽織らせ、簡単に帰宅の準備をさせた。
されるがままの山田は何を思っているのか不思議そうに俺を見ながら、時折ふふっと笑みを浮かべていた。

「ありがとう」

ズキリ。
胸の下あたりが痛んだ気がした。
俺は山田にこれからトラウマになるようなことをするつもりだ。それは俺にとってすげー大事なことだ。

借りは返す。これは俺の信念だ。

だから、これは正しいことだ。

俺のプライドと山田に言いなりの学校生活を改善するために必要なことだ。
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