傾国の伯爵子息に転生しました-嵌められた悪女♂は毎日が貞操の危機-

ハヤイもち

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それぞれの思惑が動き出す

窮鼠猫をかむ

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頭から血がスーッと引いていく。

「は、いやにきまっとるやろ」

俺はレオンを下から睨みつけると言い放った。
レオンの顔が大きくゆがむ。
何でも自分の思い通りになると思っている馬鹿を黙らせるほど楽しいことはない。

「てめぇ、自分の立場わかってんのか?」

「そんなへたくそで股開くと思うてんのか。夢見すぎや」

俺はレオンを下から睨みつけると言い放った。
レオンの顔が大きくゆがむ。こめかみにぴきりと青筋が立った。
何でも自分の思い通りになると思っている馬鹿を黙らせるほど楽しいことはない。

「てめぇ、自分の立場わかってんのか?」

「そっちこそ、後ろに気ぃ付けたほうがええで。あんたみたいなやつは特に」

「は?」

レオンが後ろを振り向こうとした瞬間、レオンの股間に思いっきり噛みついた。
レオンが無様な悲鳴を上げる。
俺は足でレオンを蹴ると、悶絶しながらベッドから転がり落ちた。
ガシャンという音とともに、棚の薬品が落ちた。

「くそっ、てめっ、このままですむと…ぜってぇ、ゆるさねぇ…」

後ろでごちゃごちゃ喚いているレオンを一瞥すらせず、急いで服を着て、保健室を出た。

*******************************

「はぁ、はぁ、わっ、すんません」
「わりぃっ」

保健室の扉を乱暴に閉め、急いで立ち去ろうとしたとき、目の前から来た人物と思い切りぶつかった。
それは、まゆとだった。

「紫音?なんかあったんだな」
「まゆとこそ、だいじょうぶか?」

まゆとは右頬が腫れており、唇の端に血がにじんでいる。
慌てていたのか息を切らしていた。

「エリンに殴られた、詳しいことは…今は言えない」
「こっちもレオンが襲ってきよったから、返り討ちにしたった」
「え、レオンは…」
「今保健室の床と仲良うしとるころやろう」
「なにしてそうなったんだ?」
「とにかく、こっちこっち」

*******************************

まゆとを引っ張って、人目がなさそうな中庭まで行く。
噴水から出る水で顔を洗い、ハンカチで水滴を拭いた。

「なんやかんやで、こっちは無事敵を倒した。もう襲ってくることはないやろ」

保健室での出来事を話し終わると、まゆとは蒼白な顔で、少し内またになっている。

「おまっ、相変わらず、なんていうか…容赦ないな」
「自業自得や。ちょん切られへんかっただけでもありがたいやろ」
「まぁそうだけど。…あのなぁ、あんま敵作んないように気を付けろよ。俺がずっとついていられるわけじゃないんだから。何かあったら…」
「どないせーちゅうねん。大人しく掘られろっていうん?」
「そうは言ってねぇよ。俺はお前に何かあったら困るんだよ。ほんと、頼むから…」
「そうやろね。俺になんかあったら元の世界にいねなくなるかもしれへんからね」
「ちがう、俺はお前のこと」
「わかっとる。やけど俺は自分の身は自分で守れる。それよりまゆちゃんは何があったん?」
「俺は、…少し面倒なことになった」

まゆとは少しの沈黙の後、深いため息をついた。そして重たい口を開く。

「どうやらエリンは俺がジュリアに嫌がらせ行為をしてると思っているらしい。それからシャルル…お前を無理矢理襲った卑劣な奴だって言われて殴られた」

まゆとの言葉に俺は目を見開いた。

「なんで…」
「レオンがエリンになんか言ったらしい。あと他に目撃者がいるとか。…なぁ、俺、はは、どうしたんだろうな。わけわかんね。」

絶望した表情で俺を見るまゆと。強気な彼からは想像もできない弱弱しい姿だ。

「全く記憶がない。いや違う。わかる、時々自分じゃないときがある。考えたこともないおぞましいことを耳元でささやく奴がいるんだ。でもそれは俺じゃないって思ってたけど、俺なのか?」
「まゆと」

自分が選択した行動がボタンのかけ間違いのように、一つずつずれていく。
そしてそれは周りを巻き込み、より悪い結果となって現実がゆがんでいく。

「ちがう、お前は子どものころから変われへん。偉そうで馬鹿で、ほんでまっすぐな奴やろ。ほんまにごめん、まゆと、ごめん、巻き込んでごめん」

俺のせいでまゆとにつらい思いをさせた。
うつむくまゆとの隣に座り、背中をさする。

「だいじょうぶや。エリンには俺から話す」
「ちがう、俺が言いたいのはそうじゃない。俺は誰にどんな風に思われたってどうだっていい。ほかの人間なんて、それも異世界の人間のことなんてどうだっていい。…俺は怖いんだ。俺が俺でなくなることが」

まゆとは自分の手で顔を覆った。
今まで気づかなかったが目元にはうっすら隈ができていた。

「そいつの声は日に日に大きくなってる。きっとこのままじゃ乗っ取られる。俺はそれが怖くてたまらない。そいつは世界を憎んでいて、他人の不幸を望んでいて、自分も嫌っている。常に苦痛の中で生きている。だけど、一人だけそいつの心を救った奴がいるんだ。だから俺は、俺様はずっとずっとお前のことを考えている」

「…」

「愛しているんだ。答えてもらえなくても、逃げられても、嫌われても。ずっと守りたい、そばにいてほしい。それがどんなに苦しくて、幸せな感情かきっとお前にはわかりはしないだろう」

顔を上げて哀しそうに微笑むそれはまゆとではない。ノーマンだ。
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