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それぞれの思惑が動き出す
パンドラは開かれる
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保健室に誰もいないことを確認すると、ぼふっと目の前のベッドに飛び込んだ。
「う゛ー、だるっ、気持ちわるぅ」
清潔なベッドの匂いを嗅ぎながらうーうー唸る。
本当は早く傷の手当(下の方)とか服を着替えたりしなければいけないのに。
全く動く気になれない。
昼過ぎの暖かな日差しがベッドに差し込み、まどろみの中に引き込まれる。
いいやん、少しくらい休んだって…。
意識が溶かされ、簡単に眠りの世界に堕ちていく。
******************
「まゆちゃん」
夕日が差し込む教室で、10歳くらいの少年がこちらに背を向けている。
どうやら彼は黒板に日直の名前を書いているようだ。
「まーゆちゃん」
名前を呼んでも、振り向かないし返事もしない。
まるでこちらの声など聞こえないようだ。
「なんでまゆちゃん、聞こえてへんの?」
「なぁ、まゆちゃん…」
少年に後ろから近づき、肩を手でたたこうとした。
「誰?」
振り向いた少年の顔はなかった。
「…っ!」
「だれ?」
「まゆちゃんって誰?」
「そんなやついない」
のっぺらぼうが答える。
彼が黒板に書いていた名前はなぜか読むことができない。
「なんで、まゆちゃんは俺の幼なじみで…」
「いないよ、そんな子」
「なんで…」
「なんでって…
いらないだろ、そんな奴。なぁ、紫音?」
そこには親友が立っていた。
「一つずつ、消していくんだ。
お前の大事なものを。
そしたら、最後に何が残るだろうな?」
にっこりと笑う親友は相変わらず人の好さそうな顔をしていた。
******************
肌がすーすーする。
そして腹辺りが重たい。
「おい、どけや」
「おっ、起きたか?」
「病人の腹に乗るとか行儀がなっとらんなぁ、レオン様」
「お前も仮に王子に向かってその口の利き方、お貴族様が聞いてあきれる」
「黙れ、いいからのけや」
「本当に変わったな、お前」
かなりきつめに言ってるはずなのに、レオンは意に介さず、気味の悪い笑顔を浮かべている。
「ええかげんにせぇよ、まゆ、…ノーマンはどこや?」
途端にレオンは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「ノーマン、…あいつ邪魔なんだよな。いっつもお前にべったりで勝手にしゃしゃりでてきて。
本当に目障りだよな。騎士気取りかよ。ま、残念ながら本人には全然伝わってねぇみたいだけど」
「あ?」
「ノーマンならさっき、あの間抜け…いやエリンに呼ばれてどっか行った。…なんだろうな、エリンの奴普段は何されても怒んねぇ奴だけど、すっげー激怒してたなぁ、何されんだろうなぁ?」
にやにや意地の悪い笑顔を浮かべるレオンに嫌な予感がする。
「何たくらんどるんや?」
「そんな生意気な態度でいいのかよ、全部知ってんだぜ、俺は」
「何が目的や?」
レオンは相変わらず俺の腹の上に乗ったまま、顔を近づける。
キスされるくらいの距離まで近づき、そして耳元で呟いた。
「お前、ノーマンにやられただろ。すっげぇザーメンくせぇ」
「う゛ー、だるっ、気持ちわるぅ」
清潔なベッドの匂いを嗅ぎながらうーうー唸る。
本当は早く傷の手当(下の方)とか服を着替えたりしなければいけないのに。
全く動く気になれない。
昼過ぎの暖かな日差しがベッドに差し込み、まどろみの中に引き込まれる。
いいやん、少しくらい休んだって…。
意識が溶かされ、簡単に眠りの世界に堕ちていく。
******************
「まゆちゃん」
夕日が差し込む教室で、10歳くらいの少年がこちらに背を向けている。
どうやら彼は黒板に日直の名前を書いているようだ。
「まーゆちゃん」
名前を呼んでも、振り向かないし返事もしない。
まるでこちらの声など聞こえないようだ。
「なんでまゆちゃん、聞こえてへんの?」
「なぁ、まゆちゃん…」
少年に後ろから近づき、肩を手でたたこうとした。
「誰?」
振り向いた少年の顔はなかった。
「…っ!」
「だれ?」
「まゆちゃんって誰?」
「そんなやついない」
のっぺらぼうが答える。
彼が黒板に書いていた名前はなぜか読むことができない。
「なんで、まゆちゃんは俺の幼なじみで…」
「いないよ、そんな子」
「なんで…」
「なんでって…
いらないだろ、そんな奴。なぁ、紫音?」
そこには親友が立っていた。
「一つずつ、消していくんだ。
お前の大事なものを。
そしたら、最後に何が残るだろうな?」
にっこりと笑う親友は相変わらず人の好さそうな顔をしていた。
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肌がすーすーする。
そして腹辺りが重たい。
「おい、どけや」
「おっ、起きたか?」
「病人の腹に乗るとか行儀がなっとらんなぁ、レオン様」
「お前も仮に王子に向かってその口の利き方、お貴族様が聞いてあきれる」
「黙れ、いいからのけや」
「本当に変わったな、お前」
かなりきつめに言ってるはずなのに、レオンは意に介さず、気味の悪い笑顔を浮かべている。
「ええかげんにせぇよ、まゆ、…ノーマンはどこや?」
途端にレオンは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「ノーマン、…あいつ邪魔なんだよな。いっつもお前にべったりで勝手にしゃしゃりでてきて。
本当に目障りだよな。騎士気取りかよ。ま、残念ながら本人には全然伝わってねぇみたいだけど」
「あ?」
「ノーマンならさっき、あの間抜け…いやエリンに呼ばれてどっか行った。…なんだろうな、エリンの奴普段は何されても怒んねぇ奴だけど、すっげー激怒してたなぁ、何されんだろうなぁ?」
にやにや意地の悪い笑顔を浮かべるレオンに嫌な予感がする。
「何たくらんどるんや?」
「そんな生意気な態度でいいのかよ、全部知ってんだぜ、俺は」
「何が目的や?」
レオンは相変わらず俺の腹の上に乗ったまま、顔を近づける。
キスされるくらいの距離まで近づき、そして耳元で呟いた。
「お前、ノーマンにやられただろ。すっげぇザーメンくせぇ」
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