傾国の伯爵子息に転生しました-嵌められた悪女♂は毎日が貞操の危機-

ハヤイもち

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悪役子息に転生したんだけど

目が覚めたらおっちゃんがおった。どうやら本人執事言うとんのやけど

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「目が覚めましたか!?」
「誰?なんやここ…」

目が覚めた時一番最初に映ったのは心配そうにこちらを見る
でかい顔のおじちゃん。知らん人や。
何やら漫画で出てくる執事みたいなえらいけったいな格好をしている。

「おっちゃん誰や?新しい養護の先生か?」
「なんとわたくしのことを忘れてしまったのですか?お坊ちゃん。
わたくしはあなたが生まれた時からお仕えしている執事でございます」
「そ、そうなん?そうなんやねぇ…」

やばい。
なんか親友のぴかっと光る本見て気ぃ失ったと思ったら、
頭のおかしなコスプレおっちゃんが目の前にいるっていうカオスな状況に
なってしまった。
もちろん俺は日本の一般家庭出身の平平凡凡な男子高校生。
生まれた時から付き人なんているはずない。

しかも、お坊ちゃんって。
この歳でお坊ちゃんはないやろ。
もう18やで。

もしかして俺、誘拐されたのかもしれん。
男子高校生誘拐するおかしな奴がこの世にいることにびっくりだが、
このおっちゃんはえらく気合の入ったコスプレしているし、
設定も凝っているようだし、相当頭がイカているのかも。

とりあえず誘拐されたとしたら、このおっちゃんを刺激せんように
慎重にならんと。逆上して刺されたら大変だ。
せっかく無事に大学が決まってこれからキャンパスライフが始まるのだから。

「おっちゃん、じゃなかった、執事の人、俺大丈夫みたいや。
どこも悪うないで。だからなんでベッドに寝かされてんのか教えてくれん?」
「坊ちゃん、いつものようにトーマスとお呼びください。
やはり記憶があやふやになってしまっているのですね。
ですのでご無理なさらずお休みになってください」

執事、もといトーマスはそういって俺に優しくシーツをかけて
立ち去ろうとするので、慌てて呼び止めた。

「いや、気になって寝てられんわ。
話聞いたらすぐに寝るから、ちょっとだけ先っちょだけ」
「お坊ちゃん、御父上やお母上に見られたらお叱りを受けるのは
わたしなのですが…」
「ほんま頼んますわぁ。この通り!」
「お、お顔を上げてください。使用人に対して、
そんなこと軽々しくするものではありません。
わかりました。簡単に説明しますので」

しぶしぶといった感じでトーマスは俺のベッドの隣の椅子に腰かけ、
話し始めた。

「まずお坊ちゃんは由緒正しき伯爵家の生まれで…」
「なんでそこからっ!?簡単に言うたやん!」

まさかご丁寧に自分の出自から話されるとは思ってなくて、
思わずツッコミを入れてしまう。あかん、話がすすまん。
わかっているのに、ボケを無視できない血が騒いでしまう。

「すいません、やはり長くなりそうなので後日にしましょうか?」
「いやいや、ええってええって。
そこで切られたほうが気になって眠れませんわ」
「わかりました、では続きを…」

それから俺は睡魔と戦いながらトーマスの話を聞いていた。

それは俺の生まれた時の感動から、初めて言葉を話した時、
さらに初めてドラゴンの子どもと触れ合って
火を噴かれて大泣きしたときなど
明らかにいらんやん、どんだけ俺のこと好きやねん、
と思うようなことをつらつらと並べられ、何度ツッコミを我慢して、
何度瞼が落ちそうになったかわからない。

とりあえず簡潔にまとめると以下の通りだった。
・この世界はめっちゃファンタジー。ドラゴンとか妖精がいて、魔法が使える。
・そんで俺は伯爵家の長男で結構偉い人。
・今は貴族の学園に通っているらしい。(なんやねん貴族の学園って)
・ある日魔法に失敗して顔面に自分の魔法を受けてそのまま気絶した。(俺ドジっ子なん?)
・それから2週間くらい目を覚まさなかった。

「本当にこのまま目を覚まさなかったらどうしようかとっ!」

顔をぐちゃぐちゃにして泣いているこの人が俺を誘拐して連れてきたとは
何となく思えなくなっていた。

それに話の途中でアルバムや写真を見せてもらったところ、
『明らかに自分やん』と思う人物の生まれた時から成長していくまでの
過程が収められていて、いよいよこれがただのトーマスの妄想だとは
言えなくなってきた。

「トーマスさん、ありがとう。俺このまま寝るから
あんたも休んでな。えらい迷惑かけたわ、堪忍な」
「お優しい言葉。やはりお坊ちゃんはお坊ちゃんです。
ゆっくりお休みください」

トーマスは涙ぐみながら部屋から出ていった。

「はぁ~意味わからん。どないしよ」

一人になった部屋で俺は考える。

「何か私物持ってきてへんかな。スマホとかないんかな」

俺はベッドから起きると、部屋をガサゴソ探索し始めた。
どうやらここは俺の部屋らしい。

「お、あったあった」

なんとベッドの下に自分の通学カバンが見つかって、テンションが上がる。

「えーっとスマホスマホ」

スマホを見つけて電源を入れた。

「うそやん」

スマホが圏外を指しているのを見て、がっくりと肩を落とした。

「いや待てよ。なんかこんな時知り合いが…」

―――確かオカルト板なら圏外でも繋がることがある
と言っていた気がする。

まず自分は霊感ないし、掲示板とか見ないし、スレ立てもしたことない。
けれどそれしか今は頼れるものがないなら…。


「やるしかないか」
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