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カルテ#24 魔獣の森_背後にご注意_
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2人と一匹は森の奥の中心部までやってきた。
ルキに緊張が走る。
「ここから先は狂暴な魔物が出てくると思う。
ワームやバジリスク、キメラ、ゴブリンの生息地帯にだから。
武器をすぐに構えられるように持っといて。
オイラもすぐ召喚ができるように魔法陣を携帯しておく」
ルキは私に精霊の祈りが込められた銃を渡した。
「普通の銃が効かない魔獣でもそれなら仕留められるよ。
今までのところは普通なら魔獣が出てこないところだったから、
正直ケロがいたのはびっくりしたんだ。ここから先は本当に
危ないところだって聞いてるから気を付けて」
「わかったよ」
ルキは真剣な表情で前を見る。
なんだか昨日よりも大人びて見えるのは気のせいだろうか。
いや、おそらく私の気のせいじゃないだろう。
彼は王宮を出てから急激に成長している。
周囲に気を配りながら陰鬱な森を進んでいく。
と言ってもケロが何かの気配を感じればすぐに反応するので
とても楽ができた。
それにケロは番犬と言う自分の立場をよくわかっているようで、
スライムや小さな獣(おそらくキメラ)が出たらすぐに
その牙で脅して追っ払ったり、噛みついて食べてくれたりした。
「ケロのおかげですごくスムーズ、全然怖い魔物が出てこない」
「だから言っただろう、いい番犬になるって」
「ワフッ」
「ここらでちょっと休憩しよう。ルキも疲れただろう」
「オイラ、も、疲れたぁ。
多分後3時間くらい歩けば森の奥の聖なる場所、
聖獣、精霊たちの生息地につけるよ。
今日中に行けるか、どうかってとこかなぁ」
へろへろとルキはその場に倒れた。
「大丈夫かい?」
「オイラずっと王宮暮らしでこんな歩いたことなかったから。
体力なくて足引っ張ってばっかだね、桜先生」
ルキが近くの木の幹にもたれかかりながら私に話しかける。
「君は若いんだからこれから体力をつけていけばいいんだ。
長い人生だ、焦ることはないよ。
いいじゃないか。初めての経験がたくさんできて。
意外と楽しいだろう」
「うん、オイラ、自由だ。どこにでも行けるんだ。
すごく楽しいよ」
へら~っと幸せそうに笑うこの少年に暗い影を感じた。
召喚士は王宮の中でも重要な役職で、とても偉い立場だと聞いていた。
だから、何不自由なく甘やかされて、
思い通りに生活していると思っていたんだが、
どうやらそうでもないらしい。
ルキは王宮を出てから見るもの全部目新しそうにしているし、
王宮以外での経験や知識が足りなすぎるように思う。
だがそんなもの人それぞれだから
自分と比べてしまうのもどうかと思うが。
「ルキ、やってみたこととかはあるかい?」
「今?うーん、もう一回川の主を釣りたい。
後、暑いからなぁ、前召喚した人間から聞いたアイスクリームが食べたい。
それから、うーん、また桜先生とドラゴンに乗って、夜のお城を見下ろしたいな」
「そうか。川の主にアイスクリームにドラゴンか。
こちらにある材料でアイスクリームは作れるかな?頑張ればできるかもしれない。
今度一緒に作ろうか?」
「本当!?だったらまだいっぱい食べたいものがあるぞ。パンケーキに
クレープにパフェにプリン!」
「多分作れると思う。こう見えて料理全般は得意なんだ。料理は医療にも通じるものがあるから」
「本当に何でもできるな、桜先生。オイラとは大違いだ」
「そんなことはないよ。ルキのように召喚の魔法も使えないし、剣も使えないただの一般人だ」
「なぁ、あっちの世界の話、もっと教えてよ」
私たちは気づかなかった。
私たちが話しているとき、ケロがキメラを追いかけて走っていったこと。
そして後ろから忍び寄る影に。
「…あっ」
「どうした、ルキ?」
「桜先生!後ろっ!」
私は背後から感じた気配に飛びのいた。
ルキに緊張が走る。
「ここから先は狂暴な魔物が出てくると思う。
ワームやバジリスク、キメラ、ゴブリンの生息地帯にだから。
武器をすぐに構えられるように持っといて。
オイラもすぐ召喚ができるように魔法陣を携帯しておく」
ルキは私に精霊の祈りが込められた銃を渡した。
「普通の銃が効かない魔獣でもそれなら仕留められるよ。
今までのところは普通なら魔獣が出てこないところだったから、
正直ケロがいたのはびっくりしたんだ。ここから先は本当に
危ないところだって聞いてるから気を付けて」
「わかったよ」
ルキは真剣な表情で前を見る。
なんだか昨日よりも大人びて見えるのは気のせいだろうか。
いや、おそらく私の気のせいじゃないだろう。
彼は王宮を出てから急激に成長している。
周囲に気を配りながら陰鬱な森を進んでいく。
と言ってもケロが何かの気配を感じればすぐに反応するので
とても楽ができた。
それにケロは番犬と言う自分の立場をよくわかっているようで、
スライムや小さな獣(おそらくキメラ)が出たらすぐに
その牙で脅して追っ払ったり、噛みついて食べてくれたりした。
「ケロのおかげですごくスムーズ、全然怖い魔物が出てこない」
「だから言っただろう、いい番犬になるって」
「ワフッ」
「ここらでちょっと休憩しよう。ルキも疲れただろう」
「オイラ、も、疲れたぁ。
多分後3時間くらい歩けば森の奥の聖なる場所、
聖獣、精霊たちの生息地につけるよ。
今日中に行けるか、どうかってとこかなぁ」
へろへろとルキはその場に倒れた。
「大丈夫かい?」
「オイラずっと王宮暮らしでこんな歩いたことなかったから。
体力なくて足引っ張ってばっかだね、桜先生」
ルキが近くの木の幹にもたれかかりながら私に話しかける。
「君は若いんだからこれから体力をつけていけばいいんだ。
長い人生だ、焦ることはないよ。
いいじゃないか。初めての経験がたくさんできて。
意外と楽しいだろう」
「うん、オイラ、自由だ。どこにでも行けるんだ。
すごく楽しいよ」
へら~っと幸せそうに笑うこの少年に暗い影を感じた。
召喚士は王宮の中でも重要な役職で、とても偉い立場だと聞いていた。
だから、何不自由なく甘やかされて、
思い通りに生活していると思っていたんだが、
どうやらそうでもないらしい。
ルキは王宮を出てから見るもの全部目新しそうにしているし、
王宮以外での経験や知識が足りなすぎるように思う。
だがそんなもの人それぞれだから
自分と比べてしまうのもどうかと思うが。
「ルキ、やってみたこととかはあるかい?」
「今?うーん、もう一回川の主を釣りたい。
後、暑いからなぁ、前召喚した人間から聞いたアイスクリームが食べたい。
それから、うーん、また桜先生とドラゴンに乗って、夜のお城を見下ろしたいな」
「そうか。川の主にアイスクリームにドラゴンか。
こちらにある材料でアイスクリームは作れるかな?頑張ればできるかもしれない。
今度一緒に作ろうか?」
「本当!?だったらまだいっぱい食べたいものがあるぞ。パンケーキに
クレープにパフェにプリン!」
「多分作れると思う。こう見えて料理全般は得意なんだ。料理は医療にも通じるものがあるから」
「本当に何でもできるな、桜先生。オイラとは大違いだ」
「そんなことはないよ。ルキのように召喚の魔法も使えないし、剣も使えないただの一般人だ」
「なぁ、あっちの世界の話、もっと教えてよ」
私たちは気づかなかった。
私たちが話しているとき、ケロがキメラを追いかけて走っていったこと。
そして後ろから忍び寄る影に。
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「桜先生!後ろっ!」
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