17 / 28
カルテ#17 ルキの誤解と桜先生のカウンセリングのお時間
しおりを挟む
「起きた?桜先生」
目が覚めたら目の前に美少女が。
残念、ただのドジ召喚士のルキだった。
「私の寝顔はかわいかったかい?」
「いんや全然。桜先生、時々うなされていたよ。大丈夫?」
うなされていたのはきっとマスオの足が硬すぎるせいだ。
カッチカチの岩みたいな足に乗せられて、ずいぶん尻が痛い。
これなら床の方がまだ柔軟性があるくらいだ。
「夢の中でね…私の患者と会って話してたんだ。
彼の(膝)はとても硬くて、私は尻が痛い」
その瞬間ルキはこの世の地獄を見たような絶望的な表情をした。
「そ、そうなんだな、無理矢理?とかじゃないよね…?」
「ああ、夢の中ではいつも彼の上に乗せられている所から始まるから
もうあきらめているよ」
「…へ、へぇ…オイラ、オイラよくわかんないけど、
桜先生がそれでいいなら…いいと思うよ」
ルキは真っ青な顔でにへらっと笑いながら答えた。
「まぁ私としては彼のスキンシップはうれしいかな。
少々強引なところはあるが、なにせ患者だからね。仕方ない。
…さて目も覚めたし、お嬢さんのところへ行こうか」
「ああ、早く行こう、食事を用意してくれてるって言ってたし。
オイラお腹ペコペコだぁ」
「本当に彼女には悪いなぁ。いたせりつくせりだ。
だがその分彼女の依頼は危険なものなんだろうね。
ルキ、気を抜かないように。
ダメだったらちゃんと断るからね」
「…わかってるよ、桜先生」
女の子に弱いらしいルキは気弱な返事を返してきた。
※※※
昨日の朝市で出会った少女は私たちが疲労と寝不足で
いるのが分かると、自宅に招待してくれた。
最初は慌てて断ったが、ほかに当てもないのと、
すでにルキはお嬢さんに詰め寄られてポンコツ状態だったので
諦めて彼女のやっかいになることになった。
寝床の用意をされて、昨晩の大脱出で体力を使い切っていた私たちは
泥のように眠った。
そして目が覚めたのはその日の夕方近く。
下の階に降りていくと、とてもいい匂いが漂ってきた。
「あ、おはようございます。
今はもう夕方ですね、こんばんわ、おじさま」
「ああ、こんばんわ。本当に助かったよ。
すっかり元気になった、ありがとう」
「いえいえ、どうぞ食事はできていますので
遠慮なさらず座ってください」
「いや君にばかり世話をかけるわけにもいかない。
何か手伝うよ。遠慮なく言ってくれ。
これでも家事は得意なんだ、ほら、ルキも彼女を手伝おう」
「…うん」
ルキはやはり女性の前だとポンコツになる。
一言もしゃべらず、下を向いている。
「では、お皿を並べてください」
「任せて」
それにしても妙だと感じた。
この広い家に彼女一人しか見かけない。
更に食器や家具の数からを見ても、
4人家族らしい。
「他のご家族は今は仕事かな?」
私は何気なくお嬢さんに問いかける。
その瞬間、彼女の目が見開かれた。
「なんで…」
「驚かせたかい、すまないね。職業病みたいなものだ。
お父さんとお兄さんと弟さんかな?」
更に声を失って驚くお嬢さんを見て、
私はやってしまったと思った。
彼女は目を見開いて驚いた後、急にその目を潤ませた。
そして目からは大粒の涙がボロボロ流れた。
「あっ、すまない。どうしたんだい?大丈夫かい?」
慌てて彼女の背を撫でて、落ち着かせようとする。
「桜先生、ってアンナ、どうしたんだ…!?」
ルキが泣いているお嬢さんと私を交互に見つめる。
「何してんだよっ!なんで女の子泣かせてるんだ!
女の子泣かせる奴はクズだって教わったんだから!」
ルキが走ってお嬢さんに駆け寄ると、私からお嬢さんを遠ざける。
彼女を自分の背に隠すと、ルキは自分よりも背の高い私を睨みつけた。
「いや、ルキ誤解だ。私は何もしてない」
私は手を上げて降参の姿勢を取った。
「本当か?アンナ?あのおじさんに何もされてない?」
「…すいません、わたしが勝手に取り乱してしまったばっかりに。
桜さんには何もされていません。本当です」
「…君の涙の訳とご家族の不在には関係があるようだね。
聞かせてくれるかい?」
アンナを椅子に座らせると、私は彼女の対面に座り、
ルキは彼女の隣に座った。
さて、カウンセリングの開始だ。
目が覚めたら目の前に美少女が。
残念、ただのドジ召喚士のルキだった。
「私の寝顔はかわいかったかい?」
「いんや全然。桜先生、時々うなされていたよ。大丈夫?」
うなされていたのはきっとマスオの足が硬すぎるせいだ。
カッチカチの岩みたいな足に乗せられて、ずいぶん尻が痛い。
これなら床の方がまだ柔軟性があるくらいだ。
「夢の中でね…私の患者と会って話してたんだ。
彼の(膝)はとても硬くて、私は尻が痛い」
その瞬間ルキはこの世の地獄を見たような絶望的な表情をした。
「そ、そうなんだな、無理矢理?とかじゃないよね…?」
「ああ、夢の中ではいつも彼の上に乗せられている所から始まるから
もうあきらめているよ」
「…へ、へぇ…オイラ、オイラよくわかんないけど、
桜先生がそれでいいなら…いいと思うよ」
ルキは真っ青な顔でにへらっと笑いながら答えた。
「まぁ私としては彼のスキンシップはうれしいかな。
少々強引なところはあるが、なにせ患者だからね。仕方ない。
…さて目も覚めたし、お嬢さんのところへ行こうか」
「ああ、早く行こう、食事を用意してくれてるって言ってたし。
オイラお腹ペコペコだぁ」
「本当に彼女には悪いなぁ。いたせりつくせりだ。
だがその分彼女の依頼は危険なものなんだろうね。
ルキ、気を抜かないように。
ダメだったらちゃんと断るからね」
「…わかってるよ、桜先生」
女の子に弱いらしいルキは気弱な返事を返してきた。
※※※
昨日の朝市で出会った少女は私たちが疲労と寝不足で
いるのが分かると、自宅に招待してくれた。
最初は慌てて断ったが、ほかに当てもないのと、
すでにルキはお嬢さんに詰め寄られてポンコツ状態だったので
諦めて彼女のやっかいになることになった。
寝床の用意をされて、昨晩の大脱出で体力を使い切っていた私たちは
泥のように眠った。
そして目が覚めたのはその日の夕方近く。
下の階に降りていくと、とてもいい匂いが漂ってきた。
「あ、おはようございます。
今はもう夕方ですね、こんばんわ、おじさま」
「ああ、こんばんわ。本当に助かったよ。
すっかり元気になった、ありがとう」
「いえいえ、どうぞ食事はできていますので
遠慮なさらず座ってください」
「いや君にばかり世話をかけるわけにもいかない。
何か手伝うよ。遠慮なく言ってくれ。
これでも家事は得意なんだ、ほら、ルキも彼女を手伝おう」
「…うん」
ルキはやはり女性の前だとポンコツになる。
一言もしゃべらず、下を向いている。
「では、お皿を並べてください」
「任せて」
それにしても妙だと感じた。
この広い家に彼女一人しか見かけない。
更に食器や家具の数からを見ても、
4人家族らしい。
「他のご家族は今は仕事かな?」
私は何気なくお嬢さんに問いかける。
その瞬間、彼女の目が見開かれた。
「なんで…」
「驚かせたかい、すまないね。職業病みたいなものだ。
お父さんとお兄さんと弟さんかな?」
更に声を失って驚くお嬢さんを見て、
私はやってしまったと思った。
彼女は目を見開いて驚いた後、急にその目を潤ませた。
そして目からは大粒の涙がボロボロ流れた。
「あっ、すまない。どうしたんだい?大丈夫かい?」
慌てて彼女の背を撫でて、落ち着かせようとする。
「桜先生、ってアンナ、どうしたんだ…!?」
ルキが泣いているお嬢さんと私を交互に見つめる。
「何してんだよっ!なんで女の子泣かせてるんだ!
女の子泣かせる奴はクズだって教わったんだから!」
ルキが走ってお嬢さんに駆け寄ると、私からお嬢さんを遠ざける。
彼女を自分の背に隠すと、ルキは自分よりも背の高い私を睨みつけた。
「いや、ルキ誤解だ。私は何もしてない」
私は手を上げて降参の姿勢を取った。
「本当か?アンナ?あのおじさんに何もされてない?」
「…すいません、わたしが勝手に取り乱してしまったばっかりに。
桜さんには何もされていません。本当です」
「…君の涙の訳とご家族の不在には関係があるようだね。
聞かせてくれるかい?」
アンナを椅子に座らせると、私は彼女の対面に座り、
ルキは彼女の隣に座った。
さて、カウンセリングの開始だ。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)




いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる