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カルテ#16 再び夢の中で彼と
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夢だ。
はっきり分かった。
マスオは相変わらずやけに気合の入ったコスプレだし、
夢でしか見たことのない場所。久しぶりの情景だ。
「やはり心配だ」
やはりマスオは私を膝にのせて話している。
いい加減オジサンを膝にのせて話すのもやめてほしい。
逆ならいくらでもいいんだが。
いや、マスオは膝に乗せるにはでかすぎるな。
確実に私の腰がやられる。
「桜、お前は一見おしとやかに見えるが
事実全くそんなことはない。はっちゃけすぎるんだ。
いい加減歳を考えてくれ」
「焦って私を消火器で殴って殺しそうになった君がそれを言うのかい?」
「その件に関しては我は何も言えまい。悪かった」
「一生引きずるよ」
「そうだろうな。お前は根に持つタイプだろう」
くくくっと二人であくどい笑みを浮かべる。
「それにしても最近やけにあの召喚士と仲がいいではないか」
「あの子か、あの子は本当に優しい子だ。
できればこんなところにいさせるよりも平和な世界で幸せになってほしい」
「ふむ。では我と桜の養子にするか?」
「それもいいかもしれないな。君が本当に魔王でこの世界を統一して
平和にしてくれるなら養子にしてもいいかもしれない」
でも、君にそんなことできるのかい?
にやりと挑発するとマスオが少し眉を寄せた。
「桜は我を侮っているな。どうして我の力を信じてくれなんだ」
「そりゃ見たことのないものは信じられないさ。人間の性だ、許してくれ」
「力を見せれば信じてくれるか?」
「いいかい、マスオ」
私はマスオの顔を両手で包んだ。
彼の金色の瞳と目を合わせる。
「力を持つものはそれをふさわしいタイミングで使わないといけないんだ。
そうでなければただの暴力だからね。
君が本当に力を持つものならほいほい見せびらかしてはいけないよ。
わかるね」
「では、どうしたらいいんだ」
マスオは困り切った顔で私を見る。
「君の力を必要としている人のために使うんだ。
その時はきっと訪れる。焦らなくてもいい。
それに力なんて使わなくても問題は解決できる。
私は君にいつだってそう伝えただろう」
ああ、もうすぐ終わりだ。
この穏やかでおかしなマスオとの時間が。
景色がぐにゃりと歪む。
そしてすべて黒くなる寸前マスオの声が聞こえた。
「だがお前は時に【鉄拳制裁】してただろう…!」
それはそれ、これはこれだ。
はっきり分かった。
マスオは相変わらずやけに気合の入ったコスプレだし、
夢でしか見たことのない場所。久しぶりの情景だ。
「やはり心配だ」
やはりマスオは私を膝にのせて話している。
いい加減オジサンを膝にのせて話すのもやめてほしい。
逆ならいくらでもいいんだが。
いや、マスオは膝に乗せるにはでかすぎるな。
確実に私の腰がやられる。
「桜、お前は一見おしとやかに見えるが
事実全くそんなことはない。はっちゃけすぎるんだ。
いい加減歳を考えてくれ」
「焦って私を消火器で殴って殺しそうになった君がそれを言うのかい?」
「その件に関しては我は何も言えまい。悪かった」
「一生引きずるよ」
「そうだろうな。お前は根に持つタイプだろう」
くくくっと二人であくどい笑みを浮かべる。
「それにしても最近やけにあの召喚士と仲がいいではないか」
「あの子か、あの子は本当に優しい子だ。
できればこんなところにいさせるよりも平和な世界で幸せになってほしい」
「ふむ。では我と桜の養子にするか?」
「それもいいかもしれないな。君が本当に魔王でこの世界を統一して
平和にしてくれるなら養子にしてもいいかもしれない」
でも、君にそんなことできるのかい?
にやりと挑発するとマスオが少し眉を寄せた。
「桜は我を侮っているな。どうして我の力を信じてくれなんだ」
「そりゃ見たことのないものは信じられないさ。人間の性だ、許してくれ」
「力を見せれば信じてくれるか?」
「いいかい、マスオ」
私はマスオの顔を両手で包んだ。
彼の金色の瞳と目を合わせる。
「力を持つものはそれをふさわしいタイミングで使わないといけないんだ。
そうでなければただの暴力だからね。
君が本当に力を持つものならほいほい見せびらかしてはいけないよ。
わかるね」
「では、どうしたらいいんだ」
マスオは困り切った顔で私を見る。
「君の力を必要としている人のために使うんだ。
その時はきっと訪れる。焦らなくてもいい。
それに力なんて使わなくても問題は解決できる。
私は君にいつだってそう伝えただろう」
ああ、もうすぐ終わりだ。
この穏やかでおかしなマスオとの時間が。
景色がぐにゃりと歪む。
そしてすべて黒くなる寸前マスオの声が聞こえた。
「だがお前は時に【鉄拳制裁】してただろう…!」
それはそれ、これはこれだ。
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