【BL】異世界転生したら、初めから職業が魔王の花嫁のおじさんの話

ハヤイもち

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カルテ#15 失言と騒動に巻き込まれる二人-ナンパされるおじさん-

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朝日が注ぐ道を二人で歩いていく。
清々しいほど晴れ渡った青い空の下。


「これからどこに行こう?桜先生」

「多分この国から早く出たほうがいいな。
すぐに追手がやってくるだろう」

両手に肉まんのような食べ物を抱え、
リスのようにむしゃむしゃと頬張りながら、ルキが話しかける。
私は忙しなく周りを警戒しながら歩いていく。

私たちは城から脱出した後、ドラゴンに別れを告げ
(ルキの魔力にも限界があるためそう長く召喚していられないそうだ)
民間人に変装した。

ルキは今までつけていた目隠しを取って素顔を露わにしている。





最初私はルキの素顔を見てびっくりした。

「君は中世的だと思っていたけど、まさか女の子だったのかい?」

「違うよ桜先生~。なんかわからないけどお城で働く前に恩人から
『お前はお城では必ず顔を隠していなさい』って言われた。
なんかオイラの顔変だからかな?」

「君が変な輩に目を付けられないようにするためだね。
変なんてことはない。綺麗だからだよ」

「桜先生は平気でそんなことを言うんだな、タラシだって言われない?」

「ハハハ、私はもうおじさんだからね。正直に若者を褒めるのは
おじさんの特権だよ」

ルキがちゃんと恩人の言いつけを守っていてよかった。
そうでなければ王宮でさらに面倒ごとに巻き込まれていただろう。




二人でたわいもない話をしながら、
朝市の活気ある街を進んでいく。

「君はもう開き直って女の子の恰好をしていたほうが
変装になるんじゃないか?」

「それを言うなら桜先生も『魔王の嫁』なんだよね。
だったらウェディングドレスでも着る?

そしたらおいらもスカート履いて女の子になってもいいよ」

「ごめん、さすがにそれは嫌だな」

「あ、あれおいしそう、ちょっと買ってくる」

「はいはい、行ってらっしゃい。
私はちょっと疲れたから近くで待ってるよ」


私が『よっこらしょ』と言ってそこらの石段に腰を下ろすと
近くにいたお嬢さんが話しかけてきた。


「おはようございます。
ここら辺ではお見掛けしない顔ですね。

どちらからいらっしゃったんですか?
それにお連れの子も、とてもかわいらしいですね」

「ああ、そうだね。西の方から来たんだ。
朝市がこんなにぎわっているなんて思わなかったよ。

あの子は親戚の子でね。
ちょっと変わっているけど優しい子なんだよ」

「そうなんですね。
わざわざ遠くからいらっしゃったんですか?

ここの朝市は新鮮なものばかりで
遠くから見に来る方もいるんですよ。

また来てくださいね。お待ちしております」

「ありがとう。暇があったらまた寄らせてもらうよ」

そう言いながら目の前の少女を用心深く観察する。

武器を持っている様子もないし、
嘘をついているそぶりもないが用心するに越したことはない。

そうこうしているうちにルキが大量の食べ物を持って帰ってきた。

「お待たせ、桜先生。桜先生の分も買ってきたよ」

とここでルキは私の隣にいたお嬢さんを見ると、
眉根を寄せて私を見た。

「なにこんな綺麗な女の子ナンパしてんの、おじさん」

「ナンパじゃないよ」

「フフッ、ナンパしていたのは私の方よ。
かっこいいおじさまがいたから声をかけさせてもらったの。
…ところであなたはなんていうお名前?」

「オッオイラはっ…」

お嬢さんに微笑まれたルキは耳まで真っ赤になる。

「君はもしかして本物の女の子に対しては奥手なのかい?」

そんな女の子みたいな見た目して、
と言うのは心の中にとどめた。

「うっ、うるさいな、
だって王宮で召喚士してた時は女の子と話す機会なんて今まで…あ」

「…あ」

「…え?」



その瞬間3人とも固まった。

『馬鹿ッ』と口に出さなかった私を褒めてほしい。


「王宮?召喚士?」

「いや、王宮の召喚士様に呼ばれてね、
色々道具を仕入れたり、材料を運んだり
していたんだよ、ね」

私はそう言ってルキを見る。
『話を合わせろ』と視線で訴える。

「そうなんだよ、オイラ達商人でさ。
レアな材料仕入れて王宮に卸してたんだよ。
ドラゴンの蹄とか琥珀の真珠とか、ね」

「えっ、そうなんですか?」

何とか切り抜けられたか、と思ってお嬢さんを見た。

その瞬間お嬢さんがいきなり立ち上がって、
ルキの手を両手で握った。


ぶわっとルキが真っ赤になる。
私もやはり気づかれたか、
といつでも逃げれるように準備する。

「あなたたち、レア素材を集める商人なんですよね。
お願いします!私に協力してもらえませんか?」

「「え」」

お嬢さんの言葉に今度は私たちが驚いた。
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