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カルテ#10 召喚士の憂鬱
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私は衛兵が私たちの牢屋の見張りを抜けたのを確認して、
ルキに話しかけた。
「ルキ、君の召喚術について詳しく教えてもらってもいいかい?」
「ふふふっ、やっぱり気になるよな。
なんたっておいらは一流の召喚術師様だからな」
「そうだね。君の召喚術は脱出にあたって非常に重要なカギだ。
だから正直に君の能力について教えてくれ」
「なんでも呼び出せるぞ。精霊、無機物、人間、モンスター。
だけどそのためには魔法陣と材料が必要だ。
呼び出すときの呪文も個々で違うから、
呼び出す前に呪文を調べて、材料を用意して、
魔法陣を描かないといけない」
「今持っている持ち物ですぐに呼び出せるものはあるかい?」
「今?無茶言うなぁ。
覚えている呪文と魔法陣で今はある材料はオイラの魔力だけか。
幻惑の霧と眠りの精霊くらい…かな」
「ほぉ、それは一体どんなものだい?」
「ちょっと待って、今出すから」
そう言うとルキは、石のかけらで牢屋の床に魔法陣を描き始めた。
「うろ覚えだけど、こんなもんかな」
ぎゅっと音がして魔法陣が完成する。
「だいじょうぶかい?失敗しない?」
私は最初にこのお調子者の召喚士が王様の前で失敗して
ひどく叱責されているのを見ているのでとても不安だった。
「大丈夫大丈夫!このくらいの召喚なら失敗しても大したことない。
二人とも眠ってしまうぐらいだ」
にひひひと笑みを浮かべてルキは呪文を唱え始めた。
…二人そろって眠ってしまうのもまずいと思うんだが。
まぁ、いいか。時間を確認した。
(時計はすでに衛兵に持ってこさせていた)
まだ衛兵Aの勤務時間。
憂さ晴らしに他の牢屋の見回り兼彼の趣味をしているころだ。
「いでよ。眠りの精霊よ」
ぶわっと緑色の光で目がくらんだ。
と思ったら、目の前には小さな緑色の妖精?おそらく精霊がいた。
「久しぶりだな~」
「~~~~~~♪」
ルキが緑の精霊に上機嫌で話しかけると、緑の精霊がそれに答えて
人間には理解できないような言葉で話している。
「~~~~~♪」
「そうなんだよ。ひどいんだぞ、あの騎士団長」
「~~~~~~♪」
「そうじゃないって、お前まで何言ってんだよぉ」
「~~~~~~~♪」
「ああ、この人?紹介していなかったな、サクラって言うんだ。
お前は見たことある?あっちの世界の花の名前らしいんだけど」
「~~~~~~♪」
「でもちょっと口うるさ…いや、そんなことない、いい人だ、ははは」
何やら緑の妖精とルキは親し気に話している。
久しく心休まるものを見ていなかったので、
そのやり取りに少し癒されながら私はルキに話しかけた。
「彼女が眠りの精霊かい?」
「そうそう、オイラは精霊呼び出すのが得意だから。その中でもこいつとは
ずっと昔馴染みでなぁ。よく眠れない夜に呼び出して歌を歌ってもらうんんだ。
そうするとすぐに眠れて助かるんだ」
「~~~~~~♪」
「今は大丈夫だよ、ありがとう」
ルキの頬にぴったりと寄り添う彼女は本当にルキが好きらしい。
「君は眠れない夜などないと思っていたよ」
私は少し意地悪な口調でからかった。
「そんなことない…オイラだって色々考えて、眠れないことはあるさ。
なんたって一流召喚士だから」
「そうかい、そうかい、悪かったよ、でもそろそろ衛兵が来る時間だからね。
精霊さんを元に戻して魔法陣を消さないと」
「うん…」
「~~~~~~♪」
ルキが少し寂しそうに精霊を返す呪文を唱えた。
彼女の体は緑の光に包まれる。
その寸前で彼女はサラッとルキの頭を撫でて
消えていった。
「今日もよろしく頼むぜ?
…なんだ召喚士様はいつもより元気がないなぁ、珍しい」
衛兵Aがやってきて、ルキを見て不思議そうにした。
「彼はちょっと睡眠不足らしいよ。寝かせてあげてくれ」
「はぁ~こんな牢屋で一日中ぐうたらして寝不足なんて何やってんだよ。
こっちはなぁ毎日仕事で忙しいってのに」
「う、うるさいな。オイラだって普段なら仕事をしてるんだからな」
「はいはい、二人ともお疲れ様。今日の講義を始めようか」
ルキに話しかけた。
「ルキ、君の召喚術について詳しく教えてもらってもいいかい?」
「ふふふっ、やっぱり気になるよな。
なんたっておいらは一流の召喚術師様だからな」
「そうだね。君の召喚術は脱出にあたって非常に重要なカギだ。
だから正直に君の能力について教えてくれ」
「なんでも呼び出せるぞ。精霊、無機物、人間、モンスター。
だけどそのためには魔法陣と材料が必要だ。
呼び出すときの呪文も個々で違うから、
呼び出す前に呪文を調べて、材料を用意して、
魔法陣を描かないといけない」
「今持っている持ち物ですぐに呼び出せるものはあるかい?」
「今?無茶言うなぁ。
覚えている呪文と魔法陣で今はある材料はオイラの魔力だけか。
幻惑の霧と眠りの精霊くらい…かな」
「ほぉ、それは一体どんなものだい?」
「ちょっと待って、今出すから」
そう言うとルキは、石のかけらで牢屋の床に魔法陣を描き始めた。
「うろ覚えだけど、こんなもんかな」
ぎゅっと音がして魔法陣が完成する。
「だいじょうぶかい?失敗しない?」
私は最初にこのお調子者の召喚士が王様の前で失敗して
ひどく叱責されているのを見ているのでとても不安だった。
「大丈夫大丈夫!このくらいの召喚なら失敗しても大したことない。
二人とも眠ってしまうぐらいだ」
にひひひと笑みを浮かべてルキは呪文を唱え始めた。
…二人そろって眠ってしまうのもまずいと思うんだが。
まぁ、いいか。時間を確認した。
(時計はすでに衛兵に持ってこさせていた)
まだ衛兵Aの勤務時間。
憂さ晴らしに他の牢屋の見回り兼彼の趣味をしているころだ。
「いでよ。眠りの精霊よ」
ぶわっと緑色の光で目がくらんだ。
と思ったら、目の前には小さな緑色の妖精?おそらく精霊がいた。
「久しぶりだな~」
「~~~~~~♪」
ルキが緑の精霊に上機嫌で話しかけると、緑の精霊がそれに答えて
人間には理解できないような言葉で話している。
「~~~~~♪」
「そうなんだよ。ひどいんだぞ、あの騎士団長」
「~~~~~~♪」
「そうじゃないって、お前まで何言ってんだよぉ」
「~~~~~~~♪」
「ああ、この人?紹介していなかったな、サクラって言うんだ。
お前は見たことある?あっちの世界の花の名前らしいんだけど」
「~~~~~~♪」
「でもちょっと口うるさ…いや、そんなことない、いい人だ、ははは」
何やら緑の妖精とルキは親し気に話している。
久しく心休まるものを見ていなかったので、
そのやり取りに少し癒されながら私はルキに話しかけた。
「彼女が眠りの精霊かい?」
「そうそう、オイラは精霊呼び出すのが得意だから。その中でもこいつとは
ずっと昔馴染みでなぁ。よく眠れない夜に呼び出して歌を歌ってもらうんんだ。
そうするとすぐに眠れて助かるんだ」
「~~~~~~♪」
「今は大丈夫だよ、ありがとう」
ルキの頬にぴったりと寄り添う彼女は本当にルキが好きらしい。
「君は眠れない夜などないと思っていたよ」
私は少し意地悪な口調でからかった。
「そんなことない…オイラだって色々考えて、眠れないことはあるさ。
なんたって一流召喚士だから」
「そうかい、そうかい、悪かったよ、でもそろそろ衛兵が来る時間だからね。
精霊さんを元に戻して魔法陣を消さないと」
「うん…」
「~~~~~~♪」
ルキが少し寂しそうに精霊を返す呪文を唱えた。
彼女の体は緑の光に包まれる。
その寸前で彼女はサラッとルキの頭を撫でて
消えていった。
「今日もよろしく頼むぜ?
…なんだ召喚士様はいつもより元気がないなぁ、珍しい」
衛兵Aがやってきて、ルキを見て不思議そうにした。
「彼はちょっと睡眠不足らしいよ。寝かせてあげてくれ」
「はぁ~こんな牢屋で一日中ぐうたらして寝不足なんて何やってんだよ。
こっちはなぁ毎日仕事で忙しいってのに」
「う、うるさいな。オイラだって普段なら仕事をしてるんだからな」
「はいはい、二人ともお疲れ様。今日の講義を始めようか」
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