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カルテ#7 事後処理
しおりを挟む「そんなことができるなんて、…お前まさか向こうの世界では『詐欺師』だったのか?」
「そうじゃないけど。まぁ似たようなものか。
精神科医と言って心の病気を直す医者だったんだ」
「へぇ。お医者さんだったんだなぁ。すごいなぁ。
確かに桜が先生だったら気難しい人も心開いちゃうだろうな」
「…」
私は押し黙った。
彼は『マスオ』は私に心を…開いてくれていたんだろうか。
できればそうだと願いたい。
「私は専門は精神の医者だけど、一通りの医療技術なら持っている。
治療道具箱もなぜか持っていて、取り上げられなかったから。
だからルキ、君の傷も治せるはずだ。先ほど着替えをしている君の体を見てしまったけど
肛門付近から血が…」
ぶわりと顔が真っ赤になったルキは、油の差していないネジ巻人形のようにギギギという動作で
ゆっくりとこちらを向いた。
そして妙に裏返ったような声でしゃべり始める。
「オ、オイラ、ひどいいぼ痔で、出すと必ず切れちゃうんだよ。あーあああ、恥ずかしいなぁー、
薬はあるから気にしないで、だいじょうぶだいじょうぶ、よくあることだから、ハハハ」
今更なぜそこまで隠すのだろうと思ったが、『当たり前か』と納得する。
確かにルキは中世的だがれっきとした男性であるし(男性…だよね)、
彼が目の敵にしているらしい騎士団長に『そういうこと』をされたなら
男としてひどくプライドを傷つけられたのだろう。
何も考えず元気そうに振る舞ってはいるが、実のところは結構傷ついているのかもしれない。
だとしたら、無理矢理踏み込むのは野暮なことだ。
「まぁ一応薬は渡すから部屋の隅で塗っておいで。私は耳をふさいで外を見ているから。
そういう傷は後で化膿したりして悪化する場合もあるから、何かあったら言うんだよ」
「…ありがと。」
薬を手渡すと、おとなしく部屋の隅に向かう召喚士。
自分の子どもほどの年齢の召喚士を見ると、
どうしても放っておけず出しゃばってしまう。
これが夢だとしても現実だとしてもこの世界から一秒でも早く脱出し、
元の現実に戻ることが目的なのだから、
ここの世界の人間と仲良しごっこをする気はない。
元々そこまで人と関わるのが好きではないのだ。
人に無関心な私が精神科医というのもなかなかの皮肉ではあるが。
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