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最終章 ほな、さいなら
力を取り戻したヒーロー、反撃を開始する(日向視点)
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時はさかのぼり。
ー前日。
「できました。先輩」
ラクからの連絡を受けたのは、
それから一か月後だった。
俺はラクのラボへと向かう。
「先輩、なかなか面白いことになってましたよ」
にやにやと笑うラクがスクリーンに映し出したのものは
俺の体のレントゲン写真のようだ。
「なんだよ気持ち悪いな」
「いえ、信さんもなかなかえげつないことしますね」
「だから何だよ、説明しろよ」
「結論から述べますと、先輩は今、半分怪人になっています」
「は?」
俺は理解できなかった。
何で、俺が怪人に?ヒーローになれないこと以外、
体はどこにも異常がない。以前と全く変わらない。
あの気味の悪い怪人に変化したなど、到底信じられない。
「いいですか、先輩は半分怪人になってるんですよ。
だからスーツに拒絶反応が起きてしまったんです」
しかし、ラクの表情は真剣で、冗談や嘘をついているようには
見えない。
つまり、俺が半分怪人になったというのは真実だと告げていた。
「それは信がやったのか?なんのために?」
「間違いなく信さんの仕業でしょう。
実験のためなのか、それとも別の目的があるのかわかりません。
ただ、ヒーローとしての先輩を殺したかったんじゃないですか?
ですのでもちろん、スーツを着ることはできません」
「スーツはできたって…お前、言ったじゃないか」
「話は最後まで聞いてください。
先輩は、今までの人間用のスーツはもう着れません。
ですので、半怪人用の先輩だけのためのスーツを作りました。
まさか怪人用のスーツを作ることになるなんて思ってもみなかった。
素晴らしいです、とても充実した一か月でした」
「じゃあ、俺はもう一度戦えるんだな」
「ええ、ですが、これは上に報告したらまずいと思いますよ。
なんたって世界で一着だけの怪人用スーツですから。
バレれば僕まで組織を追放されるかもしれない。
だから、先輩は無所属のヒーローとしてこれを着て
戦ってください」
「わかった。ありがとう」
ラクから黒いリストバンドを渡される。
それは俺の手首にはめると、よく馴染んだ。
「ところで信さんをおびき出す方法は考えましたか?
一か月も猶予があったんです。いくら先輩でも
策の一つや二つ、思いついたでしょ?」
「それについて俺はずっと考えてたんだが、
お前の今日の話を聞いて、これしかないと思った」
「へぇ?お聞かせ願いましょうか」
「ああ、」
※※※
「よぉ、久しぶりだな、信」
俺は怪人の屍から立ち上がる。
豆鉄砲を食らったような顔のまま立ち尽くしていた信は
はっと我に返り、端末の方へと向かう。
「させねぇよ」
俺は目の前のガラスを一撃で粉々に吹き飛ばすと、
そのまま何かやろうとしていた信に蹴りを入れた。
「…かはっ!」
ダンっ!と派手な音を立てて信の体が壁に激突し、
そのまま崩れ落ちる。
衝撃で立つことすらできない信の胸倉をつかみ、
片手で持ち上げた。
「何か俺に言うことあるんじゃねーの?なぁ信」
「しばらく見ないうちに、悪人面になったなぁ、日向」
何とかこちらに笑顔を向けるが、その目には恐怖の色が見える。
信に恐怖を向けられたのは初めてだった。
ぞくぞくとした感覚が背筋を駆け上がる。
俺は思わず口角を上げてしまった。
「そうかよ。それは間違いなくお前のせいだな。
とりあえず……」
俺は信の首に手をかける。
ぎりぎりと力を込めると、信が俺の手を必死で外そうともがく。
しかし、抵抗虚しく力尽きて、ぐったりと気絶した。
…ジジジジ。
首にかけた通信機がつながり、ラクの声が聞こえた。
『先輩、信さん確保しましたか?』
「ああ、ちょうど今終わった」
俺はそう返すと信の体を肩に担ぎ上げた。
『では、脱出してください』
「窓がない、どうやって」
その間にもどたどたと部屋に人が近づく足音がする。
『転送装置がありますよね。怪人を転送する用の』
「あるな。でもこれは怪人用なんじゃないのか?」
『少しプログラムを書き換えます。
先輩、ノートパソコンとケーブル渡してるでしょ』
「ああ、あるな」
『それを転送装置につないでください』
「どこに?」
『ああ!もう、こんなことなら僕も行けばよかった
とにかく端末のカメラ起動して!早く』
「おう」
『ああ、カメラ引いて、そこ、そこです。
その穴にケーブル挿して、パソコンとつないで』
「こうか?」
『僕が遠隔操作するので、ちょっと待って下さ…』
ドンッ!ガタンッ!
「侵入者だ!」
「主任が襲われている!」
「早く始末しろ」
ドアがぶち破られ、どたどたと宇宙人たちが
部屋の中に入ってくる。
「来たみたいだな」
『では書き換えが終わったら合図しますので、
それまで持ちこたえてください』
「ハッ、誰に口きいてんだよ」
俺はそう言って不敵に笑うと、
襲い掛かる宇宙人を一体殴り飛ばした。
戦闘開始だ。
ー前日。
「できました。先輩」
ラクからの連絡を受けたのは、
それから一か月後だった。
俺はラクのラボへと向かう。
「先輩、なかなか面白いことになってましたよ」
にやにやと笑うラクがスクリーンに映し出したのものは
俺の体のレントゲン写真のようだ。
「なんだよ気持ち悪いな」
「いえ、信さんもなかなかえげつないことしますね」
「だから何だよ、説明しろよ」
「結論から述べますと、先輩は今、半分怪人になっています」
「は?」
俺は理解できなかった。
何で、俺が怪人に?ヒーローになれないこと以外、
体はどこにも異常がない。以前と全く変わらない。
あの気味の悪い怪人に変化したなど、到底信じられない。
「いいですか、先輩は半分怪人になってるんですよ。
だからスーツに拒絶反応が起きてしまったんです」
しかし、ラクの表情は真剣で、冗談や嘘をついているようには
見えない。
つまり、俺が半分怪人になったというのは真実だと告げていた。
「それは信がやったのか?なんのために?」
「間違いなく信さんの仕業でしょう。
実験のためなのか、それとも別の目的があるのかわかりません。
ただ、ヒーローとしての先輩を殺したかったんじゃないですか?
ですのでもちろん、スーツを着ることはできません」
「スーツはできたって…お前、言ったじゃないか」
「話は最後まで聞いてください。
先輩は、今までの人間用のスーツはもう着れません。
ですので、半怪人用の先輩だけのためのスーツを作りました。
まさか怪人用のスーツを作ることになるなんて思ってもみなかった。
素晴らしいです、とても充実した一か月でした」
「じゃあ、俺はもう一度戦えるんだな」
「ええ、ですが、これは上に報告したらまずいと思いますよ。
なんたって世界で一着だけの怪人用スーツですから。
バレれば僕まで組織を追放されるかもしれない。
だから、先輩は無所属のヒーローとしてこれを着て
戦ってください」
「わかった。ありがとう」
ラクから黒いリストバンドを渡される。
それは俺の手首にはめると、よく馴染んだ。
「ところで信さんをおびき出す方法は考えましたか?
一か月も猶予があったんです。いくら先輩でも
策の一つや二つ、思いついたでしょ?」
「それについて俺はずっと考えてたんだが、
お前の今日の話を聞いて、これしかないと思った」
「へぇ?お聞かせ願いましょうか」
「ああ、」
※※※
「よぉ、久しぶりだな、信」
俺は怪人の屍から立ち上がる。
豆鉄砲を食らったような顔のまま立ち尽くしていた信は
はっと我に返り、端末の方へと向かう。
「させねぇよ」
俺は目の前のガラスを一撃で粉々に吹き飛ばすと、
そのまま何かやろうとしていた信に蹴りを入れた。
「…かはっ!」
ダンっ!と派手な音を立てて信の体が壁に激突し、
そのまま崩れ落ちる。
衝撃で立つことすらできない信の胸倉をつかみ、
片手で持ち上げた。
「何か俺に言うことあるんじゃねーの?なぁ信」
「しばらく見ないうちに、悪人面になったなぁ、日向」
何とかこちらに笑顔を向けるが、その目には恐怖の色が見える。
信に恐怖を向けられたのは初めてだった。
ぞくぞくとした感覚が背筋を駆け上がる。
俺は思わず口角を上げてしまった。
「そうかよ。それは間違いなくお前のせいだな。
とりあえず……」
俺は信の首に手をかける。
ぎりぎりと力を込めると、信が俺の手を必死で外そうともがく。
しかし、抵抗虚しく力尽きて、ぐったりと気絶した。
…ジジジジ。
首にかけた通信機がつながり、ラクの声が聞こえた。
『先輩、信さん確保しましたか?』
「ああ、ちょうど今終わった」
俺はそう返すと信の体を肩に担ぎ上げた。
『では、脱出してください』
「窓がない、どうやって」
その間にもどたどたと部屋に人が近づく足音がする。
『転送装置がありますよね。怪人を転送する用の』
「あるな。でもこれは怪人用なんじゃないのか?」
『少しプログラムを書き換えます。
先輩、ノートパソコンとケーブル渡してるでしょ』
「ああ、あるな」
『それを転送装置につないでください』
「どこに?」
『ああ!もう、こんなことなら僕も行けばよかった
とにかく端末のカメラ起動して!早く』
「おう」
『ああ、カメラ引いて、そこ、そこです。
その穴にケーブル挿して、パソコンとつないで』
「こうか?」
『僕が遠隔操作するので、ちょっと待って下さ…』
ドンッ!ガタンッ!
「侵入者だ!」
「主任が襲われている!」
「早く始末しろ」
ドアがぶち破られ、どたどたと宇宙人たちが
部屋の中に入ってくる。
「来たみたいだな」
『では書き換えが終わったら合図しますので、
それまで持ちこたえてください』
「ハッ、誰に口きいてんだよ」
俺はそう言って不敵に笑うと、
襲い掛かる宇宙人を一体殴り飛ばした。
戦闘開始だ。
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