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事実と憶測のすりあわせのお時間です。 8

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「はい。武術をかじっている人間の方が理屈として判りやすいかもしれません。武の道をたどろうとするものはまずひとつの教えを受けます。それが、『何者であれ、得物があろうと無かろうと、相手と対峙した瞬間から己の弱い心と対話していると心得よ』というものです」
まるで私の心を読んだかのようにピンポイントで、ラムセスさんは説明してくれたんだけど、……武術をかじっていたほうが判りやすい??
どこにかかる言葉だろう??
ん"~。判りそうでわからないけど、ダイレクトに納得できそうで、やっぱりモヤモヤしちゃうんだよな~、と思っていれば、両隣の子供たちはどうしてもお話したくなるらしくて、私の手を自分の口に持っていって封じている。
かわっ!!
え!?あれ!?ほんとにかわいい!!
初期よりは落ち着いたと思っていたけど、アルゴスくんとマルケスくんの全ての行動がかわいい!!
あ"~。ダメよ。楓。落ち着け。
今はそんな暇はないの!!
ん~。対峙とは向かい合うとかそんなニュアンスで、それがなんであれ、向かい合った時に自分の弱い心と対話してる??
これは、武術とは力を誇示するものではないってことと、常に自分の弱い心に問いかけなさいってことを先に教わるってことかな??
あ"~。なんだ、このモヤモヤは!!
あとちょっとが出てこない!!神様、仏様!!教……ん??禅問答に似てる??
そっか!!禅問答だ!!
自分の心と対話することを主とした禅問答と、力を奮うに当たり享受する教え、知恵と武力、全然違うから思っても見なかった。
は~。スッキリした~。
「その教えがあったからこそ、私はイール様とイース様に対峙した時に恐れではなく平常心で行けたのだと思います。その上でお二人に『怖くないのか??』と聞かれて本心より『はい。怖くありません』と答えました」
「「「おお~」」」
すごいな~。平常心の勝利だ。
私は多分、こうやって話を聞いたあとだったとしたら、大きな体躯の飛竜と出会ったら間違いなく逃げるし、シュリさんと同じようにガクブルで「無理」と言ったと思う。
それが例え、かわいらしい子供たちからのお願いだとしても、だ。
それほどに一度芽生えた恐怖心というのは簡単には消えてくれないものなのだ。
や~。ほんとに、こういう鍛練はお願いしたら、ラムセスさんはつけてくれるかな??
「その事より、お二方は決めつけられた思いをそのまま跳ね返しているだけなのでは??と思い、実験に付き合って頂きました。その結果があの騒音と騒動の顛末です」
あ!!だから、アルゴスくんとマルケスくんは「こっからだ」って言ったんだ!!
ラムセスさんの実験と私の話が合致するから!!
確かに、示し合わせた訳じゃないのに、ここまで一致するなんて、興奮するよね!?
うっわ~!!ラムセスさん、すごい!!
同じことを思ったのだろう方々が彼の事を称賛の眼差しで見詰めているけど、でも……、そのとなりに着席しているシュリさんへはどうも皆様、生暖かいというか、励ましのなにか、というか、あ!!あれだ。残念な子供へ向けるエールのそれだ!!
や、うん。ほんとに、シュリさんへはクッキーだけでなく、プチケーキも渡しておこう。
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